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根管治療

根管治療後は発熱する?発熱が起きた時の対処法を解説

根管治療後は発熱する?発熱が起きた時の対処法を解説

歯の根の中の管を治療する根管治療は、歯髄が炎症や感染を起こした場合に行います。

歯髄が傷むと、歯がひどく痛んだり歯肉が腫れたりすることがほとんどです。

このようにすでに炎症がひどくなっている状態で行う根管治療では、痛みや発熱が出ることも少なくありません。

今回は、根管治療で起こる発熱や痛みの原因や対処法を中心に、根管治療を受ける際・受けた後の注意点などについても解説します。

なぜ発熱や痛みが起こるのかを知れば、根管治療への不安が少しでも払拭できるのではないでしょうか。

根管治療後に発熱は起きる?

体温計を持つ女性

根管治療を要するのは、ズキズキとした歯痛や噛むと痛い・歯が浮いたような感覚がある・冷たいものや熱いものがしみるなどの症状が見られた場合です。

この時点ですでに歯髄の炎症や感染が起こり、発熱していることもあります。ただ、このような発熱は治療を行うなかで感染や炎症が治癒するに伴って治まります。

しかし根管治療後に発熱する例も見られるのです。治癒したはずなのになぜ発熱するのでしょうか。

それは根管治療の難しさに原因の1つがあります。

根管治療では、炎症や感染のある歯髄内の神経を歯根の中から取り除き根管内をきれいに掃除し消毒します。すべてがきれいに掃除できれば、細菌が入り込まないように歯に被せ物をつけて終了です。

ただ根管内は、大変複雑で直接目で見ることもできないため、くまなく掃除することは大変困難です。このような治療の難しさが発熱につながることも少なくありません。

根管治療後の発熱の原因

根管治療 ファイル

根管治療を受けた後に発熱する原因としては、以下の3つが考えられます。

  • 炎症
  • 感染症
  • アレルギー反応

それぞれ詳しく解説します。

炎症

根管治療により根管内の掃除・消毒は完了したようでも、ときにまだ細菌が残っていることがあります。

すると、蓋をされた根管内で再び細菌が増殖し炎症を起こしてしまうのです。そして炎症がひどくなると発熱や痛みが起こってしまいます。

感染症

歯を痛める女性

感染症の主な原因は口腔内常在菌が歯牙を感染経路として起こすことです。根管が感染する経路・原因として考えられるのは、以下のとおりです。

  • 治療により一時的に細菌が体内に入ったため
  • 歯の被せものの隙間からの感染
  • 根管の充填が不完全だった
  • 根管充填から被せものまでに期間が開いたため
  • 根管治療済みの歯の隣がむし歯になったため
  • 歯根が割れた・欠けたため
  • 根管治療の限界

根管治療は歯の根に対する治療です。そのため、歯の根の細菌を除去する際に一時的に細菌が体内に侵入することも少なくありません。

体内に入ってきた細菌に対する免疫反応により、発熱や軽度の腫れ・痛みが生じる場合もありますが、通常は1週間程度で自然に治ります。

しかし、ズキズキとしたひどい痛みや発熱を伴った症状は、別の原因を考えなければなりません。

治療時の根管消毒や細菌除去が不十分だったり、被せものが不適合であったりした場合には根管内が再び細菌に感染するかもしれません。

ただいくら適切な根管治療を行っても、再感染の可能性がゼロにはならないのです。これは根管の構造上避けられません。

現在の医学では、適切に治療した場合の成功率は90%を超えてはいるもののわずかながら根管の再感染を招いてしまうことも事実です。

また、これらの症状が根管治療後すぐに起こるとは限りません。根管治療によって歯髄神経を取っていると自覚症状が少なくなり、感染がひどくなってからの発熱で気付く場合もあります。

アレルギー反応

根管治療では、治療後の歯の強度を保つために歯のなかに土台を入れます。その土台は金属由来である場合がほとんどです。そのため、金属アレルギーによって発熱する場合があります。

医療機関によってはメタルフリーの根管治療を行っているところもあります。もし金属アレルギーをお持ちなら、必ず医師に相談してください。

また、根管治療時の消毒剤に含まれるホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドへのアレルギー症例も報告されています。

根管治療後の発熱の対処法

体温計と薬

根管治療後の発熱の多くが細菌感染によるものです。家でできる対応だけで治癒することはありません。

できるだけ速やかに歯科医院を受診して治療を行わなければなりません。

家でできる対処法

すぐに医療機関へ行けない場合に家でできる主な対処法は次のとおりです。

  • 口内をできるだけ清潔に保つ
  • 安静を保つ
  • 痛みがあれば冷やす
  • 入浴を控える
  • 十分な睡眠と栄養を摂る
  • 解熱剤・鎮痛剤を使用する

家で行なえる対処は一般的なむし歯による炎症・発熱に対するものと変わりません。口内を清潔に保つためには、ぬるま湯や塩水・うがい薬でのうがいがおすすめです。

痛みのある箇所を冷やす場合は、冷やしたタオルや保冷剤をタオルに巻いたものを使用してください。

入浴は体が暖まり血管が広がることで、発熱や痛みがひどくなる場合があるため避けてください。

発熱や痛みがひどいときには、市販の解熱剤や鎮痛剤を使ってもよいでしょう。ただしこれは医療機関を受診するまでの応急措置でしかありません。

放置しておけば、どんどんと炎症が広がり、歯の周囲にまで感染が広がる危険があります。少しでも早く医療機関を受診してください。

医師への相談

歯科医院の診察

前述したように根管治療は、歯髄神経の取り残しや消毒が不完全だったなどの理由でむし歯が再発する可能性があります。

発熱の状態や痛み・腫れが治まらないときは、できるだけ早く医師の診断を受けてください。

ただ、発熱や痛みは症状が進むといったん治まることがあります。これは感染・炎症が進行して歯髄神経が死んだために起こる症状で、治ったわけではありません。

放置していると根の先から顎の骨まで感染が広がり、副鼻腔炎や骨髄炎などの病気になる可能性もあります。ひどい発熱や痛みが治まった場合も念のために医師への相談をおすすめします。

薬物療法

発熱や痛みへの療法は、抗生剤や鎮痛剤などの処方です。

抗生剤により細菌を殺菌して鎮痛剤で発熱や痛みを抑え、ある程度症状が和らげば再根管治療を開始します。

再根管治療では前回の根管治療で詰めた充填剤を取り除くことから始めます。

その後充填剤と歯の汚れをきれいに除去してから薬を注入して細菌を殺菌、炎症を鎮めるという流れの治療です。

根管治療後の発熱の予防法

歯科器具

根管治療を行った歯は、大変ダメージを受けている状態です。そのため治療後しばらくは硬い食べ物や被せものが取れる危険のある粘着性のある食べ物は避けてください。

根管治療の後に発熱しないために大切なのは、歯科医師の注意事項を守り、処方された薬をきちんと飲み切ることです。

根管治療により体内に入ってしまった細菌を殺菌するための抗生剤は、自分の判断でやめてしまうと効果が減少するので、指示されたとおりの服薬が重要です。

また、根管治療期間は1回の治療に30〜60分程度かかり治療期間は1〜2ヵ月程度、歯の形によっては数ヵ月かかるとされています。そのため途中でやめてしまう方も少なくありません。

根管治療を途中でやめると、再び細菌感染が広がり症状が悪化する可能性もあります。そのようなことにならないためにも根管治療は最後までしっかりと受けてください。

根管治療の腫れや痛み

歯科治療

根管治療中には、痛みや腫れが続くことがあります。

治療を受けているのになぜ痛みがあるのか、患者さんは大変不安になるかもしれません。

しかし根管治療は重度のむし歯に対する治療で、治療を始めてすぐに痛みや腫れが治まるとは限りません。

また歯髄神経を触る治療のなかで新たな痛みを感じる場合もあります。

根管治療前

根管治療を要するのは、むし歯が相当進んだ状態です。

歯の根の中の神経や血管が炎症や感染を起こしているため、冷たいものや熱いものがしみる・噛むと違和感があるといった症状のほかにズキズキとしたひどい痛みや歯肉の腫れが見られます。

これらの症状が見られるときには、次のような疾患が考えられています。

  • 急性歯髄炎
  • 慢性歯髄炎
  • 急性根尖性歯周炎
  • 慢性根尖性歯周炎

これらの疾患を治療するために根管の炎症・感染を抑える根管治療が行われるのです。

根管治療中

歯科治療

根管治療は次のような流れで行われます。

  • 細菌に汚染された歯髄を露出させる
  • 汚染された歯髄の除去
  • 根管内の洗浄と消毒
  • 充填剤を詰めて土台と被せものを取り付ける

歯髄を露出する際には麻酔を行い、治療中は抗生剤や鎮痛剤が処方されます。

汚染された歯髄の除去や消毒は根管内がきれいになるまで何度も行われますが、この過程で神経が刺激されるため痛みが起きる場合があるのです。

また歯の痛みが強いときに神経を除去すると麻酔が効きにくくなるために痛みが出ることもあります。

歯の神経を除去しているのに痛みを感じるのは、歯の根の周囲にある痛みを感じる部分や神経の一部が残っている可能性があるからです。

痛みがひどい場合は、我慢せずに医師に相談してください。場合によっては治療のたびに麻酔をしたり、鎮痛剤の処方をしてもらえたりもします。

根管治療後

毎回の治療後に歯に物が当たったり、噛んだりしたときに痛むこともあります。これは、歯の歯周組織などが炎症を起こしているからかもしれません。

歯の根の周りには歯根膜という薄いクッションがありますが、歯の根の炎症がこの部分にまで広がっていると、物を噛んだときに痛みを感じます。そのような場合は噛み合わせの調整をして改善をうながします。

噛む刺激がなくなれば痛みも軽減されるはずです。痛みをできるだけ避けるために、根管治療中の歯は安静にして硬いものを噛まないように注意してください。

治療後には腫れが見られることもあります。これは歯の中の細菌を治療によって除去し溜まっていた膿を出した際に、それが歯の外に出たことによる腫れです。この場合の対処法は抗生剤と鎮痛剤です。

歯の根の中の細菌を除去し消毒が終わると、根管内に再び細菌が入り込まないように薬剤を充填します。

充填液は隙間なく入れなければならないため圧力をかけて詰めます。その圧力が刺激になり痛みにつながる可能性も少なくありません。

この痛みは通常は数日から1週間程度で治まるので、処方された薬をきちんと飲んで様子を見てください。

根管治療を何度か繰り返している患者さんの場合は、根管内で感染や炎症を起こしていたり、歯が破折したりしていることがあります。

痛みや腫れが長期間続くときには放置せずに歯科医院を受診してください。

根管治療後の注意点

歯科治療

根管治療を受けた歯やその周囲は大変デリケートな状態となっています。

むし歯の再発を防止するため・歯の不調を出さないためにも注意をするとよい点について解説します。

薬の使用についての注意点

根管治療後に処方される抗生剤はすべて飲み切ってください。

途中でやめると薬剤耐性菌が生まれる可能性があり、抗生剤が効かなくなるかもしれません。

むし歯をきちんと治し予後の不調を避けるためには、医師に指示されたとおりに飲み切ることが重要です。

食生活の注意点

食事

根管治療の期間も含め、治療後は硬いものを食べるのは控えてください。

治療した歯が刺激されることで痛みが出る場合があります。

被せものが取れるリスクがあるため、ガムやキャラメルなどの粘着性の食べ物も避けたほうがよいでしょう。

日常生活での注意点

治療した歯に刺激を与えるような行為は避けましょう。食いしばりの癖がある方は特に注意してください。

また、歯が気になっても手で触ったり、歯ブラシで強く磨いたりすると痛みが生じることもあります。

歯はできるだけ安静な状態を保ってください。

発熱が続く場合の注意点

根管治療後は、歯に刺激が与えられたことや細菌が一時的に体内に入ったことで発熱する場合があります。

発熱には痛みや腫れを伴うことも少なくありません。

まずは発熱に対する一般的な対処法をしたうえで、医師から抗生剤や鎮痛剤が処方されている場合は、きちんと服薬してください。

もし痛みや腫れがひどい場合は医療機関の受診を検討してください。

まとめ

歯科治療の説明

根管治療では、その前後の発熱は珍しい症状ではありません。

歯の根の炎症による発熱や痛み・腫れは、感染の原因である細菌を完全に除去・消毒しなければ治まらないものです。

しかし根管は、湾曲や枝分かれがあるために除去が不完全な場合もあります。

見落としによる未治療の根管の存在も考えられるので、1度の根管治療で完治するとは限りません。

また根管治療を途中でやめたり、治療から治療の間が長期間開いたりすると、細菌への再感染というリスクが高まります。

根管治療は根気よく治療を受けることと医師との綿密なコミュニケーションによって、より治癒を確かなものとできます。

患者さんにとっては予想外の発熱や痛み・腫れが出た場合は、遠慮なく医師へ相談しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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