根管治療時にリーマーが根管を突き抜けてしまうケースはまれにあり、歯の複雑な構造と治療の難しさが原因で起こり得る事態です。本記事では、リーマーの突き抜けが起こる理由や、それによって生じる症状、治療方法について詳しく解説しています。また、セカンドオピニオンの重要性についても触れていますので、安心して行える治療の選択肢を増やしていきましょう。
根管治療の概要
- 根管治療とはどのような場合に行われる治療ですか?
- むし歯や外傷によって歯髄が感染したり、組織が死んでしまったりした場合、歯髄を取り除くために根管治療を行います。歯の中には歯髄と呼ばれる神経や血管を含む組織があり、むし歯の原因菌が歯髄まで入り込むと、歯の痛みや顔の腫れといった症状が現れます。この状態を放っておくと、歯の内部や骨が溶けてしまいかねません。そこで根管治療では、歯の内部に入った細菌や細菌におかされた神経組織などを取り除き、根管内を清掃し、最終的には歯の内部の充填を行っていきます。
- 根管治療の仕組みについて教えてください
- 根管治療は以下のような手順で行われます。
・麻酔と歯髄の露出
・感染した歯髄の除去
・洗浄と消毒
・根管洗浄材で密封
・土台の作製と被せ物の装着
まずは痛みを感じないように歯に麻酔をし、歯に穴をあけるよう歯髄を露出させます。この時に、むし歯になっている歯質を削り、きれいに取り除いておくのがポイントです。 次に、リーマーやファイルと呼ばれる治療器具を使用し、細菌に感染した歯髄を取り除いていきます。 その後、一般的には薬剤を使用して根管内の洗浄・消毒を行い、根管内に消毒薬を入れた状態で仮のふたをします。そのまま1週間ほど置いておくのですが、根管内を完全にきれいにするために、1週間おきに消毒薬を交換します。 消毒液を入れた状態で仮のふたをするかどうかや、治療の間隔は歯科医院や歯の状態によって異なりますので、心配な方は事前に担当医に確認すると良いでしょう。 消毒が終わり根管内がきれいになったら、最後に根管充填材剤を根管内に入れ、再び細菌が入らないよう密封します。その後、根管内に土台を作って、被せ物を装着し終えたら完了です。
- むし歯の根管治療は何回受ける必要がありますか?
- 状態によって変わりますが、治療回数は前歯の場合で5〜6回、奥歯の場合は7〜8回程度かかることもあるようです。根管は人によって本数や形態が異なり、根の先が分岐していることもあるなど、複雑な構造になっています。そのため、根管治療には精密さが求められ、時間をかけて複数回にわたって行うことがあります。また、根管治療する歯が複数ある場合、治療する歯の本数に応じて治療回数も増える可能性があるでしょう。治療回数は根管治療の専門性によっても異なりますので、事前に治療の流れを確認しておくと安心です。
根管治療に用いるリーマーについて
- 根管治療に用いるリーマーとはなんですか?
- リーマーはむし歯が歯の神経まで到達している場合に、歯の神経が存在する根管内を機械的に拡大するための治療器具です。リーマーは根管内で作業しやすいように、針のように細い形状をしています。根管治療に用いられる治療器具はリーマーの他にKファイルとHファイルがあり、3種類を総称して「ファイル」と呼ぶことが多いです。
- リーマーはどのような場面で使用されるのか教えてください
- 根管治療では麻酔を実施した後に、むし歯になっている部分を削り、歯の神経を露出させます。その際に、リーマーを使って歯の神経を取り除いていきます。歯の神経を取り除くと神経が入っていた部分が空洞になるため、その根管をリーマーを使用して更に拡大させるのです。
- なぜ根管治療時にリーマーが突き抜けてしまうことがあるのですか?
- 歯の厚みはレントゲン写真や視診だけでは把握できないことが多いです。また、歯の生える方向や歯の種類によっても歯の厚みは異なります。根管は曲がりくねっていたり、合流したり、枝分かれしたりと複雑な構造です。根管治療は非常に細かい作業を必要とされる難易度の高い治療であるため、治療中に誤った方向にリーマーを進めてしまい、リーマーが根管を突き抜けてしまう事態も起きかねません。リーマーによる突き抜けのように、何らかの理由で根管の壁に穴が空いている状態を「パーフォレーション」といいます。
- リーマーが折れて残ってしまうケースもあるのでしょうか?
- リーマーなどのファイルはまれに根管の中で折れてしまうことがあります。ファイルで一番細いものは先端の直径が0.06mmで、力がかかるとすぐに折れてしまう細さです。根管治療中に根管の中で折れてしまうことを「ファイル破折」や「リーマー破折」といい、特に根管が細く、湾曲している場合に起こりやすいとされています。
また、折れた破片が残ったままの状態で、根管を封鎖せざるを得ないケースも少なくありません。この場合、折れた破片が原因で、その先の根管内の治療ができずに根管に汚染物質が残り、化膿や痛みを引き起こす危険性がある場合があります。
根管治療に用いるリーマーが突き抜けてしまった時の症状
- リーマーが突き抜けてしまった時の症状について教えてください。
- リーマーの突き抜けにより生じた穴から歯の根の外に細菌が侵入すると、歯の根に病気ができてしまった時と同様の症状が現れます。具体的な症状は以下の通りです。
・叩くと響くような痛み
・根の辺りを押すと生じる痛み
・脈に合わせたズキズキと感じる痛み
・持続的な痛み
また、穴が歯周ポケットと繋がってしまった場合、歯周病と同じような症状がみられます。具体的には次のような症状です。
・歯茎から血や膿が出る
・歯茎が腫れる
これらの症状が見られた場合は、早期に治療する必要があります。
- リーマーが突き抜けてしまった時の治療はどうすればいいですか?
- 以前は歯茎よりも下部分の歯に穴が空いてしまった場合は抜歯を行うのが一般的でした。最近では、MTAという特殊なセメントを用いて穴を塞ぎ、根管の形を復元することで歯を残せるようになっています。他にも歯の部分矯正や歯茎の処置などの治療を行うこともあります。ただし、穴が大き過ぎて修復が困難な場合や、修復できたとしてもその後すぐに歯が壊れてしまう可能性が高い場合は、抜歯を勧められることもあるでしょう。
- セカンドオピニオンの受診も選択肢に入れた方がよいでしょうか?
- 現在の治療方法に対し悩みや不安がある場合は、治療を進めず他の治療方法がないかを別の歯科医師に相談することが大切です。セカンドオピニオンを受けることで、今まで提示されなかった治療方法を知り、新たな選択肢がうまれる可能性があります。セカンドオピニオンを希望する場合は、今までの治療経過や病状の情報を正確に伝えるために、現在の主治医に診療情報提供書を作成してもらいましょう。
また、セカンドオピニオンは「診療」ではなく「相談」にあたり、歯科の健康保険の項目にセカンドオピニオンは存在しません。そのため、費用は保険適応外となることが多いです。セカンドオピニオンを希望する場合、対象の歯科医院でどのくらいの費用になるかを事前に確認しておきましょう。
編集部まとめ
根管治療でのリーマーの突き抜けは、歯の複雑な構造と治療の難しさから起こり得ます。突き抜けてしまった場合はMTAを用いて穴を防ぐなど、歯をできるだけ残す治療法が行われますが、場合によっては抜歯も検討しなければなりません。治療方法に不安や悩みを感じたら、セカンドオピニオンも受診し、ご自身が納得の行く形で治療を進めましょう。
参考文献