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根管治療で使用するファイルとは?ファイルが折れたときの対処法を解説

根管治療で使用するファイルとは?ファイルが折れたときの対処法を解説

根管治療で使用するファイルとは、どのような器具かご存知ですか?

根管治療は歯を守るために不可欠ですが、根管治療中にファイルが折れてしまった話を聞いて不安に感じる患者さんも少なくありません。

ファイルが折れて根管内に残った場合は、どのような対処法があるかを、患者さん自身でも理解しておきましょう。

本記事では、根管治療の際に知っておくべき以下のポイントを解説します。

  • 根管治療で使うファイルの役割
  • ファイルの種類と特徴
  • ファイルが折れた際の対処法

ファイルが折れたと聞いても焦らずに、正しい情報をもとに適切に対処するための参考になれば幸いです。

根管治療のファイルとは?

根管治療 ファイル

根管治療の必須器具であるファイルとは、歯の根っこがとおっている根管を治療するための器具です。

歯のなかには神経(歯髄)がとおる根管があり、この根管内に細菌が侵入すると、歯が根元から溶けてしまいます。

歯の寿命を伸ばすために、歯の根っこを治療するのが根管治療ですが、そのためには根管内に挿入できる極めて細い器具が必要です。

一般的な根管治療では、直径0.5mm前後のファイルが使用され、ファイルを根管に差し込んで内部をかき出します。

根管治療におけるファイルの役割は、主に以下の2つです。

  • 歯根の先端までしっかり貫通させる
  • 薬剤を入れやすいように根管を拡大する

根管治療では、根管に侵入した細菌をしっかりと除去し、隙間なく薬剤を詰めることが重要です。

薬剤は根管内を殺菌するだけでなく、再び細菌が侵入する隙間ができないように、しっかりと封印する役目もあるためです。

根管治療の成功率を高めるには、一度根管をきれいに貫通して、必要に応じて拡大しなければいけません。

そのために使用されるのがファイルで、金属製の細い針を根管内に差し込むことで、根管を拡大していきます。

ファイルにはさまざまな太さと長さがあり、治療のために必要な限りの拡大で済むように、使い分けていくのが基本です。

なお、ファイルと似た器具にリーマーと呼ばれるものがあります。

根管に挿入する器具のうち、内部をかき出すように動かすものをファイルといい、ネジのように回しながら差し込んでいくものをリーマーといいます。

ファイルもリーマーも極めて細い金属製の針であるため、根管治療中に根管のなかで折れてしまう事故が少なくありません。

根管に差し込んだファイルがなかで折れると、その除去は困難であり、どのような対応をするかは患者さんと歯科医師でよく相談することが大切です。

根管治療のファイルの種類

根管治療 ファイル

根管治療に用いられるファイルにはさまざまな太さがあり、治療の工程に応じて使い分けるものです。

細いものでは0.06mmのものもあり、治療する根管の太さや形状によって使い分けます。

太さ以外にも、ファイルはその材料によって以下の2種類に大別されます。

  • ステンレスファイル
  • ニッケルチタンファイル

ステンレスファイルは古くから使用されているファイルで、ニッケルチタンファイルは新しく登場して急速に普及しているファイルです。それぞれの特徴を解説します。

ステンレスファイル

ステンレスファイルの特徴は、硬い金属であるため折れにくく、極めて細いファイルであることです。

極細のステンレスファイルをはじめに奥まで貫通させ、その後に根管を慎重に拡大していく用途などに用いられます。

まず、ファイルを入れる道を作ることで、その後の治療もスムーズにできるようになります。

ステンレスは硬い材料ですが、ファイル自体が極細であるため、無理な力が加わると破折することは少なくありません。

ニッケルチタンファイル

ニッケルチタンファイルの特徴は、柔軟性のある金属であるため、湾曲した根管にも追従できることです。

歯の根管はまっすぐではなく、複雑に入り組んでいることがほとんどです。

湾曲した根管に無理にファイルを差し込むと、無理な力がかかって折れてしまうことが少なくありません。

ニッケルチタンファイルは柔軟に曲がることで、湾曲した根管内をきれいに治療できます。

ニッケルチタンファイルによって、根管の拡大にかかる時間や回数が大きく短縮され、患者さんの負担軽減にもつながります。

ニッケルチタンファイルの登場によって、根管治療は大きく進化したといってよいでしょう。

ただし、やわらかいニッケルチタンファイルに無理な力がかかった場合には、ステンレスファイルよりも折れやすいのがデメリットです。

根管治療のファイルの選び方

歯科器具

根管治療で用いられるファイルは複数の種類があり、歯科医院によって導入している器具が異なります

歯科医師はどのような基準で使用するファイルを選んでいるのでしょうか?主なポイントは、以下の2点です。

  • ファイルの特徴で選ぶ
  • 価格で選ぶ

それぞれの内容を解説します。

ファイルの特徴で選ぶ

ステンレスファイルとニッケルチタンファイルは、単純にどちらの方が優れているというものではなく、用途に応じて使い分けるものです。

ただ、ステンレスファイルしかなかった時代には難しかった治療も、ニッケルチタンファイルの登場で成功率が高まったという点はあります。

特に複雑に入り組んだ根管を治療するには、柔軟性の高いニッケルチタンファイルが適しているでしょう。

先に細いファイルを貫通させて、徐々に根管を拡げていく治療では、ステンレスファイルが適していることもあります。

精度の高い根管治療には、歯科医師の高い技術力と、専用の器具を使い分けることが重要です。

根管治療を受ける際には、どのようなファイルを使用するのか歯科医師に尋ねるのもよいでしょう。

価格で選ぶ

歯科治療 価格

ファイルなどの治療器具は高価であり、すべての歯科医院が高度な器具を導入できるわけではありません。

一般的にニッケルチタンファイルはステンレスファイルに比べて高価で、価格の問題からステンレスファイルを選んでいる歯科医院もあります。

どちらの材料でも経年劣化によって折れやすくなるため、ファイルは消耗品として定期的に交換します。

しかし、経済的な理由から、耐用回数ギリギリまで使っている歯科医院も少なくありません。

ステンレスファイルであってもニッケルチタンファイルであっても、劣化がみられたら即交換することが重要です。

これには手間と費用がかかりますが、安全性を優先しているかどうか判断するバロメーターになります。

根管治療を受ける歯科医院を選ぶ際には、ファイルの交換ルールを明記しているクリニックを選ぶ方が無難でしょう。

根管治療のファイルを使うときの注意点

歯科治療を受ける患者さん

ファイルは根管治療に不可欠な器具ですが、使用に際してはいくつかの注意点があります。

根管治療は歯を大きく削って神経を露出させ、感染した神経を除去する治療です。

神経除去を伴う治療には少なからずリスクがあるため、患者さん自身でも根管治療やファイル使用のリスクについて理解しておきましょう。

ファイルによる根管治療で知っておきたいリスクは、主に以下の3点です。

  • ファイルが折れることがある
  • 使用頻度が高い場合は定期的な交換が必要である
  • 腐食する可能性がある

それぞれの内容を解説します。

ファイルが折れることがある

根管治療における大きなリスクの一つが、根管内でのファイルの破折です。

全根管治療症例のうちファイル破折が起こる確率は1~6%と報告されており、治療中にファイルが折れてしまうことは少なくありません。

極めて小さなファイル片が根管内に刺さったまま折れると、肉眼ではほとんど見えません。

歯科医師がファイルの破折に気が付かないまま充填剤を詰めてしまい、治療終了後に別の歯科医院で折れたファイルが発見されることもあります。

ファイルの破折は、ステンレスファイルでもニッケルチタンファイルでも起こりうるため、根管治療の際には患者さん自身でも理解しておくことが大切です。

使用頻度が高い場合は定期的な交換が必要である

根管治療 ファイル

ニッケルチタンファイルもステンレスファイルも丈夫な金属でできていますが、使用によって劣化して破折のリスクが高まります。

このため、各メーカーはファイルの使用回数を設定しており、定期的な交換が必須です。

使用頻度や使用状況によっては、メーカーの設定回数よりも前に劣化がみられることがあり、劣化の兆候がある場合にはファイルを交換するべきです。

ファイルの使用回数を間違えないように、セーフティメモディスクという器具をファイルに装着して、開封からの使用回数を記録する工夫をしている歯科医院もあります。

耐久性の低い極細のファイルは1回使い捨てのものもありますが、新品でも折れるリスクはゼロではありません。

細く湾曲した根管にファイルを差し込むと、金属にかかる負担が大きいため、まっすぐな根管よりも劣化は早くなります。

このような使用状況を考慮して、適切にファイルを交換している歯科医院を選ぶようにしましょう。

腐食する可能性がある

根管治療で用いるファイルは金属製であり、使用を重ねるたびに腐食する可能性があります。

特にステンレスファイルは唾液で腐食しやすく、根管治療に破折する原因となります。

ニッケルチタンファイルは耐食性が強いといわれていますが、治療後に消毒するための次亜塩素酸ナトリウム溶液に長時間浸漬すると腐食しやすいので注意が必要です。

ファイルが腐食すると破折しやすくなるだけでなく、刃が破損したり溝が深くなったりして使用感が変わるため、腐食したファイルは速やかに交換しなければいけません。

ファイルの腐食は患者さんが管理できるものではありませんが、このような注意点を守って適切にファイルを管理している歯科医院を選ぶポイントになります。

根管治療のファイルが折れたときの対処法

お口のレントゲン

根管治療を受けるうえで、ファイル破折のリスクはどうしてもゼロにはできません。

歯のなかでファイルが折れてしまったと聞くと不安になりますが、適切な対処をすれば大きな問題とはならないことがほとんどです。

ファイルが折れた際の対処法は、主に以下の3つです。

  • マイクロスコープを使用して除去する
  • 経過観察をする
  • 外科的な治療をする

それぞれの内容を解説します。

マイクロスコープを使用して除去する

根管治療中にファイルが折れてしまった場合、もしくは以前の根管治療中に折れたファイルが発見された場合は、まず第一にファイル片の除去を試みます。

従来は根管内で折れたファイルの除去は難しいといわれてきましたが、マイクロスコープやマイクロファイルシステムなど、高度な治療機器の登場によってファイル除去は可能となっています。

マイクロスコープは歯科治療専用の顕微鏡で、肉眼では見えない微細な根管内部を直接確認できます。

これによって何度もレントゲンを撮らなくても、根管内のファイル片を視認しながら治療できるようになりました。

マイクロファイルシステムとは、直径0.1mm程の極細なファイルで、根管内の異物を取り除くための器具です。

このほかにも、超音波振動装置でファイルを揺らして、弛ませる方法もあります。

マイクロスコープでファイル片の位置を確認しながら、超音波振動装置で刺さったファイルを弛ませ、マイクロファイルシステムを隙間に差し込んで抜き取るのが基本的な治療方法です。

経過観察をする

歯科医院の検診

根管内に残ったファイル片を除去するために、歯を大きく削らないといけないと判断された場合は、あえて除去せずに経過観察となる場合も少なくありません。

根管治療に使われるファイルは、使用前に厳重に滅菌されており、歯のなかに残ったとしても特に問題を起こさないことがほとんどです。

除去のために歯を削るリスクを取る必要がない場合は、そのまま充填剤を詰めて封印してしまう方がよいでしょう。

歯のなかに異物が残るのが不安だと感じる患者さんも少なくありませんが、根管治療後に詰める充填剤もゴム材料の人工物です。

現代の歯科治療では、歯のなかに人工物を詰めて補強することが広く行われており、それだけで問題が起こることは稀です。

外科的な治療をする

歯科医院の治療

歯のなかに残ったファイル片から感染が生じていて、歯の表面からのアプローチでは除去が難しい場合は、外科的な治療が必要です。

根管内に残ったファイル片が汚染されていた場合は、ファイル片の周囲から感染が広がります。

ファイル片によって根管が詰まってしまい、その先を治療できないため、ファイル片の先で感染が広がっていくことも少なくありません。

この場合は、歯の表面からではアプローチできないため、外科手術で歯肉を切開して歯の根元を切り取ります。

歯の根っこと歯槽骨がつながる部分を根尖といい、根尖の周囲で感染と炎症が広がることを根尖性歯周炎といいます。

根尖性歯周炎を放置すると、歯の根元を溶かされて抜けてしまいますが、ファイルが残っていると根尖の治療ができません。

このため、歯の根元の歯肉を切開して、感染した根尖部を切り取る治療を歯根尖切除術といいます。

まとめ

歯ブラシを持つ男性

根管治療で使用するファイルの種類や、破折した場合の対処法を解説しました。

根管治療は歯の寿命を伸ばすために不可欠な治療で、根管治療をしなければむし歯によって歯が抜けてしまうでしょう。

しかし、根管治療自体にもファイル破折のリスクがあり、患者さんが事前に理解しておくことが重要です。

ファイルが折れてしまっても、適切に対処すれば問題とならないことがほとんどで、根管治療を受けないリスクとは比べ物になりません。

しかし、一番のリスク回避は根管治療が必要な程むし歯を放置しないことですので、まずは定期的に歯科健診を受けてむし歯は早期に治療しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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