根管治療後に必要となる土台作りは、被せ物を安定させるために欠かせない重要な工程です。しかし、自費診療になることもあるため、費用や治療内容が気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、根管治療の土台にかかる費用について以下の点を中心にご紹介します。
- 根管治療後の土台の役割
- 根管治療の土台作りの流れ
- 根管治療の土台にかかる費用
根管治療の土台にかかる費用について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
根管治療の土台作りとは
根管治療の土台作りとは、神経を取り除いた後の歯の内部に、被せ物(クラウン)を支えるための土台を築く工程を指します。根管治療後の歯は大きく欠損し、強度が低下するため、そのままでは割れや欠けのリスクが高まります。
土台作りは歯の強度を補強し、クラウンの安定した装着を可能にする重要な役割を果たします。
具体的には、根管内を清掃・充填した後、土台を設置するスペースを形成し、金属製や樹脂製の土台を装着します。
その後、土台の形を整えクラウンを製作・装着します。土台が適切に作られていないと、補綴物の脱落や歯根破折の原因となるため、精確な支台築造が根管治療の成功に不可欠です。
これにより歯の機能と見た目を回復し、長期的な安定を図ります。
根管治療後の土台の役割
根管治療後の土台の役割は、以下が挙げられます。
被せ物(クラウン)を支える
根管治療後の土台の役割は、被せ物(クラウン)を安定して支えることにあります。
むし歯が歯の神経まで進行すると、歯の大部分を削らなければならないことが多いとされ、そのままの状態では被せ物をしっかり支えることができません。少量の歯質だけではクラウンの重さや咬合力に耐えられず、歯が割れたり被せ物が外れたりするリスクが高まります。
そこで、土台を築くことで歯の強度を補強し、クラウンがしっかり固定される土台を作ります。土台は歯の内部に設置され、クラウンの支えとなることで、見た目や噛み合わせの回復を可能にします。
この土台が安定していなければ、被せ物の寿命が短くなり、再治療の原因にもなるため、根管治療後の補綴治療には欠かせない重要な工程です。
歯を補強する
根管治療を行った歯は、むし歯によって大きく削られ、内部の神経も取り除かれているため、大変もろくなっています。この状態のままでは噛む力に耐えられず、歯が割れたり欠けたりするリスクが高くなります。そこで重要なのが”土台作り”です。
土台とは、歯の内部に補強材を挿入し、被せ物(クラウン)を安定して装着できる状態に整える処置のことです。土台を築くことで、歯全体の強度が向上し、外部からの力に対する耐久性が高まります。
また、クラウンの脱落を防ぎ、根管内への細菌侵入も防ぐなど、再感染予防にも大きく貢献します。歯質が少ない状態でも、適切な土台を立てることで、被せ物がしっかりと固定され、治療後の歯の寿命を延ばすことができるようになります。
根管治療後の歯にとって、土台は欠かせない重要な支えなのです。
土台作りの流れ
次に、土台作りの流れをご紹介します。
直接法の場合
直接法による土台作りとは、レジンコアやファイバーコアと呼ばれる材料を用いて、歯のなかに直接土台を築く方法です。この方法の大きな特徴は、治療が基本的に1回、30分程度で完了する点にあります。
治療は4つのステップで進められます。まず、根管治療後に装着された仮蓋(仮封材)を取り除きます。
次に、根管内の余分な充填材を除去し、土台を立てやすいように形を整えます。
続いて、レジンなどの材料を直接流し込んで、補強用の土台を形成します。
最後は、クラウンがしっかり適合するように、土台の形状や高さを調整して仕上げます。
直接法は短時間で済むうえに、歯の状態や治療内容に応じた柔軟な対応が可能とされ、根管治療後の補強としてさまざまな症例で採用されています。
間接法の場合
間接法は、まず根管の仮蓋を外し、余分な根管充填材を除去して形を整えた後、土台を作るための型取りを行います。この工程には約30分かかります。
次に型取りしたデータをもとに技工所で土台を製作するため、完成までにおよそ1週間かかります。完成した土台は再受診時に歯に装着され、その後土台の形や高さを調整して仕上げます。この装着の所要時間は約15分です。
間接法は治療回数が2回必要となり、直接法に比べると通院回数や期間が増えることが特徴です。しかし、型取りをして精密に作るため、患者さんの口腔内の状況に合わせたより適合性の高い土台が期待できます。
歯の状態や強度の必要性に応じて、歯科医師とよく相談し、それぞれに合う方法を選ぶことが重要です。
根管治療の土台の種類
根管治療の土台の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。以下で解説します。
メタルコア
メタルコアは、パラジウム合金などの金属で作られた土台で、かつて多く使われていたといわれる素材です。
保険適用で費用が抑えられながら、強度や耐久性があるのが大きなメリットです。特に歯質がほとんど残っていない場合には有効とされていますが、金属が硬すぎるため、歯にヒビや破折が生じるリスクが高くなります。
また、年月が経つと金属イオンが溶け出し、歯や歯茎に黒ずみ(メタルタトゥー)が発生することもあります。
さらに、歯を多く削る必要があり、再根管治療時には金属の除去が困難になる点もデメリットで、金属アレルギーがある方には使用できません。
これらの理由から、メタルコアは強度は高いものの、現代ではファイバーコアなどほかの素材に比べて使用頻度が減ってきています。しかし、歯の状態によっては依然として選択肢となることもあります。
レジンコア
レジンコアは歯科用プラスチックで作られた土台で、保険適用で治療が可能なため費用を抑えられるのが特徴です。
金属を使わないため金属アレルギーの心配がなく、歯茎が黒ずむリスクもありません。メタルコアに比べると歯を削る量が少なく、歯根破折のリスクも低めですが、強度や耐久性はファイバーコアほど高くありません。そのため、強い咬合力がかかる場合は注意が必要です。
また、レジンコアは口腔内で直接製作するため、施術者の技術や歯の状況に左右されやすいというデメリットもあります。近年ではファイバーコアの普及により使用される機会が減っていますが、保険内での治療を希望する場合には十分な選択肢となります。
治療前に歯科医師と相談し、歯の状態に合った土台を選ぶことが重要です。
ファイバーコア
ファイバーコアは、プラスチックのなかにグラスファイバーが織り込まれた素材で、自然な歯に近い硬さと弾力性を持つ土台です。この特性により、噛む力がかかっても力を均等に分散し、歯のヒビ割れや破折リスクを減らすことができます。金属を使わないため、金属アレルギーの心配がなく、歯茎が黒ずむこともありません。
また、白く透明感があるため、セラミックの被せ物との相性もよく、高い審美性が期待できます。歯を削る量を抑えられ、再治療時の土台除去も容易といわれています。
保険適用外のため費用は高めですが、長期的に歯を守りたい方にはおすすめの選択肢です。術者の技術によって仕上がりが左右される点には注意が必要ですが、耐久性と審美性が魅力の土台として広く推奨されています。
根管治療の土台の費用
根管治療の土台の費用については、以下のとおりです。
保険治療
根管治療の土台作りは、保険適用の治療であれば費用を抑えて受けられるのが大きなメリットです。
保険治療の場合、治療費の自己負担は原則3割以内となっており、費用負担が軽減されます。
例えば、メタルコアやレジンコアは保険が適用されるため、ともに500円〜1,000円前後が目安です。
大臼歯や前歯・小臼歯によっても料金は異なりますが、どの歯科医院で治療を受けても基本的に同じ料金体系となっています。
ただし、保険適用の土台作りは、必要最低限の治療に限定されるため、審美性や耐久性の高い材料の使用は難しく、強度や変色の問題、耐用年数が短いこともあります。より高度な治療を望む場合は、自費診療の選択が必要となります。
自費治療
根管治療後に選ばれる自費治療の土台は、見た目や耐久性、快適性を重視したい方に推奨されています。
代表的なファイバーコアは1本あたり1万円〜3万円程度で、使用する素材や製作方法(間接法・直接法)によっては6万円程度になることもあります。また、ゴールドコアは金相場により価格が変動します。
自費治療の大きな魅力は、保険治療のような制限がなく、患者さんの口腔内の状態に合った素材や製法を選べる点です。
精密な型取りが可能なため適合性が高く、汚れがつきにくく、長期間の使用にも耐える耐久性を持っています。金属アレルギーのリスクが少ない素材を選べることや、違和感が少なく噛み心地が自然な点もメリットです。
ただし費用は高額になるため、機能性・審美性・予算のバランスを考慮し、自身に合った治療法を選ぶことが大切です。
根管治療の土台作り中の注意点
根管治療の土台作り中はどのようなことに気をつけるとよいのでしょうか。以下で解説します。
硬いものや粘着性のある食べ物は避ける
根管治療後に土台を作る期間中は、歯が大変繊細な状態にあります。
治療済みの歯は神経が取り除かれ、内部が空洞になっているため、硬いものを噛むと歯が割れたり欠けたりするリスクがあります。特にナッツ類やフランスパン、イカ、硬いせんべいなどは避けるべきです。
また、治療中の歯は仮蓋や仮歯で一時的に保護されていますが、粘着質のある食べ物はこれらを剥がす原因になります。キャラメルやガム、お餅などの粘着力が強い食品は、仮蓋が外れて細菌が侵入するリスクを高めるため注意が必要です。
前歯に仮歯を装着している場合は、硬いものをかみ切る動作自体も避けた方がよいでしょう。
土台作りが終わるまでは、刺激を避けた食生活を意識することが、治療の成功と歯の長持ちにつながります。
丁寧に歯磨きを行う
根管治療を受けた歯は神経が除去されているため、痛みを感じにくくなっていますが、それでもむし歯や感染のリスクがなくなるわけではありません。
特に土台作りの期間中は、歯の内部が繊細で外部からの刺激や細菌の侵入に弱い状態です。このため、口腔内を清潔に保つことが大変重要です。
日々の歯磨きは、朝晩に加え、可能であれば食後にも行いましょう。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを活用して、歯と歯の間や仮蓋の周囲に残る汚れを丁寧に取り除くことが再感染予防につながります。仮蓋や仮歯の周囲は特に汚れがたまりやすく、ケアを怠ると炎症や治療のやり直しになることもあります。
治療が進んでいるからと油断せず、毎日の丁寧なセルフケアを習慣にすることが、治療の成功と長期的な口腔健康の維持に欠かせません。
最後まで治療を受ける
根管治療は一度で完了するものではなく、複数回の通院が必要となる治療です。
特に土台作りは治療の途中段階に過ぎず、最終的にはクラウン(被せ物)を装着して初めて治療が完結します。このため、途中で通院をやめてしまうことはとても危険です。
治療中は仮の蓋で歯を保護していますが、時間が経つと蓋の隙間から細菌が侵入し、せっかくきれいにした根管内が再び感染してしまう恐れがあります。
数週間の放置でも、再治療や抜歯が必要になるケースは少なくありません。治療の中断は、時間や費用だけでなく、歯そのものの保存にも影響を及ぼします。
土台作りが終わったからといって安心せず、被せ物を装着するまでしっかり通院を続けることが、歯を守るために大切なポイントです。
まとめ
ここまで、根管治療の土台にかかる費用についてお伝えしてきました。 要点をまとめると以下のとおりです。
- 根管治療後の歯は弱くなっているため、土台を入れることで歯の強度を補い、クラウンを安定して支える役割を果たす。再感染や破折の予防にもつながる大切な工程である
- 根管治療後の土台作りには、即日で完了する直接法と、型取りを行って精密に製作する間接法がある。歯の状態に応じてそれぞれに合う方法を選ぶことが重要
- 根管治療の土台費用は、保険治療なら数百円程度と抑えられるが、使用できる材料に制限がある。自費治療では1万〜6万円程度で、素材や方法を自由に選べるのが特徴
根管治療後の土台作りは、被せ物を安定させるために欠かせない重要な工程です。
費用や治療法には保険と自費で大きな違いがあるため、歯の状態や希望に応じて適切な選択をすることが大切です。
不明な点があれば、歯科医師とよく相談して納得のいく治療を受けましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。