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20代で歯の神経を抜いても大丈夫?歯の神経を抜くリスクや抜かずに治す方法について解説!

20代で歯の神経を抜いても大丈夫?歯の神経を抜くリスクや抜かずに治す方法について解説!

歯は再生することのない器官なので、削ったり、抜いたりしたら人工的な材料で補う必要があります。そこで気になるのが歯の神経を抜いた場合のリスクです。むし歯治療では歯の神経を抜くことがありますが、それによってどのようなデメリットを被るのか。また、20代でむし歯を重症化させてしまった場合、歯の神経を抜いてしまっても問題はないのかなど、歯髄(しずい)に関する疑問は尽きないことでしょう。ここではそんな歯の神経を抜くリスクや抜かずに治す方法について詳しく解説をします。

歯の神経について

歯の神経について はじめに、歯の神経の基本事項を確認しておきましょう。そもそも歯の神経とは何なのか。歯の神経が担う役割などを知ることで、病気で抜かなければならなくなる理由や歯髄を残すことの意義なども理解しやすくなります。

歯の神経とは

歯の神経とは、歯の中心部分に存在している組織です。実際は、神経だけでなく血管リンパ管なども含まれており、それらを総称して歯髄と呼んでいます。さらに細かく説明すると、歯髄の大半はコラーゲン線維からなり、象牙芽細胞(ぞうげがさいぼう)、歯髄細胞、未分化間葉細胞、マクロファージ、リンパ球なども存在しています。つまり、歯髄というのは単なる歯の神経ではなく、歯の恒常性を維持するために、さまざまな役割を果たしている組織といえるのです。

歯の神経の役割

歯の神経の役割としては、主に次の3つが挙げられます。

役割:刺激の受容と中枢への伝達
歯髄は、歯髄腔や根管内だけに存在しているのではありません。その一部は、象牙細管(ぞうげさいかん)に入り込んでおり、外からの刺激を受け取る受容器としての役割を果たしています。象牙質知覚過敏症や象牙質のむし歯(C2)で冷たいものや甘いものがしみるのはそのためです。歯髄はその後、外からの刺激を中枢神経へと伝達して、歯に異常があることを知らせます。そうしたメカニズムがあるからこそ、私たちは歯の異常に敏感になれるのです。

役割2:細菌への抵抗(免疫機能)
上でも述べたように、歯髄には血管やリンパ管も付随していることから、細菌が侵入した際には免疫細胞をスムーズに供給することが可能です。もちろん、歯髄そのものが細菌に感染してしまった場合は、それを完全に治すことは難しいのですが、その前の段階で感染を予防したり、病変の広がりを抑えたりする役割は期待できるでしょう。

役割3:修復象牙質の形成
私たちの歯は再生されないことで有名ですが、実は歯の内部では限定的な再生が起こります。例えば、歯に対して慢性的な衝撃が加わっていたり、細菌による攻撃を受けていたりする場合は、歯髄に分布している象牙芽細胞が活動を始めて、修復象牙質を形成します。修復象牙質は本物の象牙質よりは少し脆い構造となっているものの、内側から歯を補強するには十分な役割を果たしてくれることでしょう。

歯の神経を抜く理由

このように、歯の神経である歯髄はとても重要な役割を担っているのですが、物理的に抜き取らなければならなくなることがあります。それは次に挙げるような理由からです。

理由1:歯髄炎による痛みを取り除くため
歯髄炎では、ズキズキと脈打つように痛みが生じます。とくに眠る前など、副交感神経が優位になる時に症状が強まることから、日常生活に支障をきたすことも珍しくないのです。人によっては、その他の病気で生じる痛みよりも耐え難く、すぐにでも改善したいと思うことでしょう。 そんな歯髄炎による痛みは、歯の神経を抜くことによって完全に取り除けます。刺激の受容器である歯の神経そのものがなくなるため、感染源が残っていたとしても、むし歯に伴う歯痛は消失することになります。もちろん、進行したむし歯では、それ以外にも不快症状が生じる原因があるので、すべての痛みから完全に開放されるわけではありませんが、誰もが苦手とするズキズキとした歯痛は取り除けます。

理由2:感染の拡大を防げる
むし歯で感染が生じるのは、歯髄だけではなく、エナメル質や象牙質もその範囲に含まれます。そのため歯髄だけを抜き取ったのではむし歯を完治させることは難しいですが、感染が拡大する速度を急速に弱めることは十分可能です。歯髄は血管や神経といったやわらかい組織で構成されていることから、感染が広がるのが早く、あっという間に根尖部まで汚染されてしまいます。早期に抜髄を行うことで、根管内への感染の範囲や重症度も抑えることが可能となります。

理由3:歯を保存できる可能性が高まる
感染性の歯髄炎を放置した状態で、むし歯を完治させることは不可能です。むし歯を治すことができなければ、最終的には歯を抜かざるを得ません。ですから抜髄は、進行したむし歯で歯を保存するために行わなければならない第一歩ともいえるのでしょう。歯の神経を抜くことによって伴うデメリットやリスクは確実に存在していますが、それを補って余りあるほどのメリットが得られるのが抜髄なのです。その点も正しく理解した上で、抜髄と向き合うことが大切です。

20代で歯の神経を抜くケース

20代で歯の神経を抜くケース ここまでは、歯の神経の役割や抜髄をしなければならない理由について解説してきましたが、20代でその処置が必要になることがあるのかどうかも知りたいことかと思います。抜髄というと、何となく中高年が受ける処置というイメージが強いものの、次に挙げるようなケースでは20代でも歯の神経を抜かなければならなくなりますので、十分にご注意ください。

むし歯が歯の神経まで達している場合

むし歯が歯の神経まで達しているC3のケースでは、原則として歯の神経を抜く処置が必要となります。歯の神経が細菌に感染しているため、根部歯髄も含めてすべて取り除かなければ、むし歯を完治させられません。むし歯がC2の段階で、細菌感染が象牙質にとどまっていたとしても、歯を切削する過程で露髄がやむを得ない場合も抜髄が必要となりやすいです。そうしたケースでは、後段で説明する「歯髄温存療法(しずいおんぞんりょうほう)」という、歯の神経を残す選択肢も提示される場合があります。

重度の知覚過敏

象牙質知覚過敏症は、冷たいものがキーンとしみる病気で、軽度から中等度であれば比較的容易に改善できます。象牙質知覚過敏症は、細菌感染を伴わないことから、むし歯とは根本的に異なる病気であり、基本的には歯の神経を抜く必要はありません。外からの刺激を受けやすくなっているため、歯の表面に薬剤を塗ったり、レジンなどの材料でコーティングしたりすることで症状の改善が見込めます。それでも症状が改善されない重度の象牙質知覚過敏症では、歯の神経を抜く場合もあります。

歯に亀裂が入った時

歯の表面に深い亀裂が入ると、象牙質が部分的に露出します。ケースによっては、歯髄までむき出しになることもあるでしょう。そうした症状が見られる場合は、歯の神経を抜いた上で根管治療を行い、詰め物などを装着する必要があります。

20代で歯の神経を抜くリスク

20代で歯の神経を抜くリスク 歯の神経は、エナメル質と同じように再生することがない組織です。本来は80歳くらいまで使い続けなければならないのですが、それを20代で失うとなると、伴うリスクも大きくなりそうなものです。具体的には、次に挙げる4つのリスクを20代で背負うことになります。

歯が脆くなる

歯髄は、内側から歯の健康を支えている組織です。歯というと、もうすでに死んでいるような印象を持っているかもしれませんが、歯髄によって酸素や栄養素などが絶えず供給されていることを忘れてはいけません。その点は骨や内臓、皮膚などと変わりがないのです。仮にそうした組織で血液の供給がなくなったらどうなるでしょうか? 組織自体が脆くなることはもちろん、ほとんどの器官は機能不全を起こします。歯に関してはそこまで深刻な症状を伴わないものの、歯質が脆くなることに間違いはありません。実際、歯髄を抜いた失活歯(しっかつし)は、歯髄が生きている生活歯(せいかつし)よりも歯根の破折が起こりやすくなるのです。

歯が変色することがある

外傷などで歯髄が死んだ状態を放置していると、歯が黒ずむことがあります。これは死んだ神経や血管が腐って、その一部が象牙質の中に染み込んでいくからです。歯をぶつけてからしばらくして、前歯が黒ずんでくるという現象は、そうしたメカニズムによって起こっているのです。 歯の神経を抜くことでも稀にではありますがそのような変色が起こる場合もあります。ただし、適切な方法で根管内を清掃し、根管充填までやり遂げれば、色素が象牙質に染み込んで歯が黒ずむことはまずないでしょう。根管充填後の土台と被せ物を金属で作った場合は、その色が黒く透けて見えるようになることがあります。

むし歯に気づきにくくなる

繰り返しになりますが、歯髄は外部や内部の刺激を感知する受容器であるため、それを抜き取ってしまうとむし歯の再発にも気づきにくくなります。そのため失活歯では、むし歯の再発に気づいた頃には重症化していることも珍しくないのです。

歯の根の先に膿が溜まりやすくなる

歯髄は、細菌と戦く役割も担っていることから、抜髄することで細菌による攻撃を受けやすくなります。もちろん、根管治療が成功して、その後も正しいケアを継続していれば、むし歯の再発リスクを低く抑えられるのですが、一度、再感染が起こってしまうと、細菌が繁殖して歯の根の先に膿がたまりやすくなります。いわゆる根尖性歯周炎のリスクが高まるのです。

歯の神経を抜く治療方法

歯の神経を抜く治療方法 ここからは、歯の神経を抜く方法について解説します。20代で歯の神経を抜く必要が出てきた人は、どのような手順で治療が行われるのか正しく理解しておきましょう。

根管治療とは

歯の神経を抜く抜髄は、根管治療の一環として行われます。細菌に侵された歯髄を抜き取り、根管内を清掃して、再感染を防ぐために歯科材料を充填します。この一連の処置は、神経にまで達したむし歯で必ず必要となる治療です。歯の神経だけ抜いて終わりということはありませんので、その点はご注意ください。

根管治療の流れ

根管治療は、次の流れで進行します。 STEP1:感染歯質の除去 むし歯菌に感染している歯質をドリルで削ります。 STEP2:抜髄 クレンザーなどの器具を使って、歯髄を絡めとるように抜きます。 STEP3:根管処置 リーマーやファイルを使って、根管内に残った歯髄や細菌の死骸、汚染された根管壁などを除去します。適宜、消毒薬を使って無菌化をはかります。 STEP4:根管充填 根管内の病巣を一掃したら、ガッタパーチャなどの充填剤を詰めて根管治療は完了です。

歯の神経を抜かずに治す方法

歯の神経を抜かずに治す方法 歯髄は、歯の健康を維持する上で重要な役割を担っていることから、できれば抜きたくないという人が多いことでしょう。歯科医師も患者さんの健康を考えて、可能な限り歯の神経を抜かずに済む方法を模索するものです。具体的には、歯の神経の状態を診て、覆髄(ふくずい)と呼ばれる歯髄温存療法を適応できるかどうか検討します。

直接覆髄

直接覆髄は、歯髄温存療法の一種で、文字通り直接的に歯髄を薬剤で覆います。歯科治療の過程で偶発的に歯髄が露出した場合に適応されることが多く、歯髄に細菌感染が起こっていないことが前提条件となります。露出した歯髄に水酸化カルシウムなどの薬剤を設置して、細菌による汚染を防ぎます。治療の経過を見て、歯髄の保存が可能と判断できた場合は、コンポジットレジン修復や詰め物の治療へと移行します。

間接覆髄

間接覆髄も歯髄温存療法の一種で、感染の恐れがある歯髄を間接的に覆髄します。つまり、歯髄はまだ露出しておらず、一層でも健全な象牙質が残っているケースに間接覆髄が適応されるのです。そういう意味で間接覆髄は、直接覆髄よりも難易度が低い処置法といえるでしょう。とはいえ間接覆髄が失敗する可能性も十分にあります。間接覆髄で歯の神経を残せないと判断した場合は、抜髄を含む根管治療を行わなければなりません。

まとめ

まとめ このように、歯髄は歯の異常を感知する受容体としての役割や免疫機能、象牙質を修復する機能などを担っています。どれも歯の健康を維持する上で欠かすことのできない役割であることから、抜髄によって失うのはとても大きなデメリットといえるでしょう。実際、歯の神経を抜いた後は、歯が脆くなる、歯が変色することがある、むし歯に気づきにくくなる、歯の根の先に膿が溜まりやすくなる、といったリスクを伴うため十分な注意が必要です。

とくに20代で歯の神経を抜いてしまうと、その後の長い人生でそのリスクを背負うことになるのは、大きなデメリットといわざるを得ませんが、ケースによっては歯髄を保存する方法を選択できる場合もありますので、まずは歯科医院を受診して、適切な検査を受けることをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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