治療を行ったにも関わらず再び根管に問題が生じた場合、再治療を行うことになります。再根管治療を行わなければならなくなる状態には、相応のプロセスがあります。3度目の治療を行うような事態を招かないため、成功率を高めることも重要です。
再根管治療が必要なケース・成功率・歯科医院の選び方・治療後に気をつけるべきことなどを解説します。
根管治療の再治療(再根管治療)が必要なケースや成功率
- 再根管治療について教えてください。
- 再根管治療とは、以前施術を行った部位に再び治療を施すことです。
根管治療を行っても、治癒するとは限りません。さまざまな要因がありますが、根管治療を行っても25%程度は治癒に至らないといわれています。もちろん、そのまま放置しておくと患部の状態はどんどん悪化していきます。
問題が起きている部位から痛みが発生していないと、悪化そのものに気が付かないケースすらあります。そのような状況になった場合に行うのが、再根管治療です。
- 再根管治療が必要になるのはどのようなケースですか?
- 再根管治療が必要なのは、過去の治療が不十分で不具合が出ているケースです。以下のような症状が出ているときは、再根管治療の検討が必要になります。
- 数ヵ月にわたる違和感があり正常に噛めない
- 痛みや腫れの再発
- 無痛だが歯茎から膿が出ている
再根管治療が必要になる原因は、以下のとおりです。
- 根管の汚れの取り残しがある
- 根管充填が不十分
- 見落としによる未治療の部位がある
- 根管充填から被せ物を入れるまでの細菌感染
- 被せ物の隙間からの細菌感染
- 歯根の破損
根管治療を行う部位は極めて狭いうえ、湾曲・枝分かれがしていることが多いです。そのため、根管治療は歯科医師の経験や技術力が求められます。
歯科医師の経験や技術力が不足していたり、根管治療を行うための検査が不十分だったりするとこのようなトラブルが起こることがあります。
- 根管治療の再治療の成功率について教えてください。
- 再根管治療の成功率は、歯の根元である根尖の病変があるかどうかで大きく変わります。根尖病変がない場合には、成功率は9割を超えますが、根尖病変が認められる場合には6割程度にとどまります。
ただし、根管治療の成功率そのものは根尖病変の有無によって変わるでしょう。最初の根管治療の成功率は、根尖病変がない場合だと9割超です。一方、根尖病変が認められる場合の成功率は8割程度にとどまります。
そもそも再根管治療が必要になるような状態に陥るのは、治療が失敗しやすい根尖病変があるケースであるともいえます。再根管治療の成功率が高くないといわれるのは、根尖病変が認められるような根治が難しいケースが多く含まれていることが関係しているのです。
- 一度目の根管治療に比べて成功率は下がりますか?
- 最初の根管治療の成功率と比較した場合でも、下がるかどうかは根尖病変が認められるかどうかで変わります。根尖病変がない場合は、いずれも成功率は9割超で変わりません。
根尖病変があると成功率は一度目が8割程度、再治療は6割程度と低下します。最初の根管治療が不適切で症状を悪化させた結果、根尖病変が生じた場合も成功率は低下すると判断できます。いずれにしても病状が進行して根尖病変があるケースでは、根管治療の成功率が下がると考えるのが適切です。
- 再根管治療が失敗する原因を教えてください。
- 再根管治療が失敗する原因の多くは、細菌が除去しきれていないことです。細菌が除去しきれない原因のひとつとして、治療中に根管に細菌が入ってしまうことが挙げられます。
これについてはラバーダム防湿を行い、唾液などが根管に入らないようにすることで防止が可能です。もうひとつの原因は、根管内にバイオフィルムが形成されていることです。バイオフィルムとは細菌によって作られた膜で、サイズが大きいため白血球による捕食が難しくなります。
バイオフィルムは除去が極めて難しく、形成されていると再根治治療が失敗しやすいのです。根尖病変が生じているケースはバイオフィルムが形成されていることが多く、これが根管治療の治療成績を下げている原因といえます。
根管治療の再治療(再根管治療)の成功率を上げるためのポイント
- 再根管治療の成功率を上げるためのポイントを教えてください。
- 患者さん側のポイントからいうと、根管治療後の異常は放置しないことです。再根管治療の開始が遅れてバイオフィルムが形成されてしまうと、成功率が下がってしまうからです。
ほかにも、治療を担当する歯科医師が、根管治療の経験が豊富かどうかもポイントとなってくるでしょう。先述したように、根管治療はほかの治療よりも難しく、歯科医師の経験や技術力によって治療の成功率が左右されることもあります。
- 歯科医院によって成功率は変わりますか?
- 繰り返しますが、再根管治療をしなければならなくなる原因の1つに歯科医師の経験や技術力不足が挙げられます。根管治療の成功率を上げるためには精密な検査も必要です。
立体的にお口の中を確認できるCTスキャンなどを使うことにより、正確な検査・診断が可能になります。これらの条件が揃っている歯科医院なら、根管治療の成功率は高くなるでしょう。
- 再根管治療を受ける歯科医院の選び方を教えてください。
- 技量の高い医療機関を選ぶことが再根管治療を成功させるためのポイントですが、専門的な知識がなければ簡単ではありません。重要なポイントとしては、根管治療専用のマイクロスコープ導入の有無が挙げられます。
根管治療を行う部位は極めて狭いうえ、湾曲・枝分かれがあるなど観察が難しいのです。マイクロスコープ導入は、こうした問題を解決して細菌の除去を完璧に行える可能性が高まるでしょう。
根管治療で再治療にならないための注意点
- 根管治療で再治療が必要な状態にならないための注意点を教えてください。
- まず、いつまでもむし歯を放置しないことです。根管治療はむし歯の状態が悪化し、根尖病変が起きると成功率が低下します。逆に根尖病変がない状態だと成功率は9割を超えています。
歯の状態が悪化する前に根管治療を行えば、再治療が必要になる可能性は低くなるのです。医療機関の選び方も、重要になってきます。根管治療の成功率は、歯科医師の技量や設備などに左右されます。治療経験の豊富な歯科医師がいる歯科医院を選ぶことも、再治療が必要な状態を招かないためには重要といえるでしょう。
- 再根管治療後は定期的なメンテナンスが必要ですか?
- まず、再根管治療の成功率は100%ではありません。根尖病変がある場合には、成功率が大きく低下します。また根管治療を行った後は歯髄が除去されており、悪化しても痛みを感じにくいという問題点があります。
再根管治療に失敗して状態が悪くなっても、早期に気付きにくい状態となっているのです。定期的なメンテナンスを行うことで、再根管治療の失敗による状態の悪化を早期に発見することが可能になります。再根管治療後の定期的なメンテナンスは必要で、医療機関側もメンテナンスの重要性についてアナウンスしています。
編集部まとめ
再根管治療はむし歯が悪化し、根尖病変が起きていると成功率が低くなります。最初の根管治療を行った医療機関でメンテナンスを行い、状態の悪化を早期発見することが重要です。
いかに状態の悪化を早く発見するか、治療経験の豊富な高い医療機関で診療を受けるかが重要となります。再根管治療の成功率を高めることにつながるからです。
参考文献