根管治療を受けている方の多くは、複数回にわたって実施される治療の途中に仮蓋を使用することがほとんどです。仮蓋は、根管治療の途中で細菌や食べ物などが根管に入らないようにする役割がありますが、ボロボロになったり、取れたりすることもあります。根管治療でよくあるトラブルのひとつとされており、もしものときに備えておくことが大切です。そこでこの記事では、根管治療の仮蓋に関して、取れたときの対処法や注意事項をわかりやすく解説します。
根管治療とは
- 根管治療はどのような治療ですか?
- 根管治療とは、歯の根っこ部分にある細菌感染した歯の神経を取り除き、根管内を洗浄および殺菌したうえで、再感染を防ぐために根管内部に充填剤を充填するという歯科治療です。
根管治療は、歯の神経である歯髄を抜去する抜髄、根管に溜まった膿を除去する感染根管治療、治療後に再発した際に再び同じ治療を繰り返す再根管治療、そして従来の根管治療では対処できない場合に用いられる外科的歯内療法の4つの治療法があります。一般的に根管治療といえば、抜髄、感染根管治療、そして再根管治療のいずれかが該当すると考えてよいでしょう。根管治療はとても難しい治療として知られていて、治療後に再感染を繰り返してしまい、何度もやり直しになってしまうというケースもあります。
また、根管治療は、使用できる診療機器などが制限される保険診療よりも、歯科医院が自由に治療内容を選択できる自費診療の方が成功率が高いと言われていて、自費診療での治療を提供している歯科医院も多く存在します。
- むし歯でボロボロの歯も根管治療を受ければ治りますか?
- むし歯でボロボロの歯でも、根管治療を受ければ治る可能性があります。むし歯でボロボロになる場合は、中程度のむし歯であるC3、または重度のむし歯となるC4に該当するため、ほとんどの場合は根管治療が必要になるでしょう。そして、保険診療の場合だと、銀歯やコンポジットレジンによって充填または被せ物をすることになります。一方、自費診療の場合は、保険診療と比較して高精度な根管治療の後に、オールセラミッククラウンなどによる被せ物で対処することも可能です。むし歯でボロボロになった歯であっても、治療の選択肢はあることを知っておきましょう。
- 根管治療の仮蓋とはなんですか?
- 根管治療の仮蓋とは、複数回にわたる根管治療を行っている期間中に、穴が開いている状態の歯を保護するための被せ物のことです。仮蓋の主な役割は、治療中の歯の根管に細菌や食べ物などが入らないように保護することのほか、見た目の改善、食事をしやすくする、さらには噛み合わせを維持することです。一般的な仮蓋の素材は、樹脂やプラスチックで、軽さと柔軟性を持ち合わせています。一方で、あくまでも一時的な蓋でしかないため、人によってはボロボロと崩れたり、取れてしまったりすることがあります。仮蓋が破損、または外れてしまうと、根管内に細菌などが入り込みやすく、洗浄や殺菌の治療が無駄に終わってしまうかもしれません。仮蓋は根管治療の成功に影響を与える大切な存在といえるでしょう。
- 根管治療の具体的な流れを教えてください
- 通常の根管治療は、以下のような流れをたどります。
- レントゲンやCTを使ったお口の検査
- 治療に関するカウンセリング
- 麻酔
- 歯を削る
- 歯髄を取り除く
- 根管の洗浄と殺菌
- 根管の形成
- 薬剤の充填
- 仮蓋の装着
- 充填材を入れてレントゲン撮影
- 土台形成
- 被せ物の装着
根管治療は上記の流れを2回〜4回かけて実施するのが一般的です。むし歯が重度の場合や、根管の形状が複雑な場合などは、さらに長い期間を要するかもしれません。
根管治療の仮蓋に関するトラブル
- 根管治療の仮蓋がボロボロと取れることはありますか?
- 根管治療の仮蓋はボロボロと取れてしまうことがあります。理由は、あくまでも仮の蓋の役割であることから、簡単に取り除けるストッピングや水硬性セメントなどの材質を使っているためです。特に、仮蓋が完全に硬化していない治療直後や、硬い食べ物を噛んだとき、さらには粘着性がある食べ物を食べているときなどは、破損や外れる可能性が高くなるでしょう。一方、仮蓋は歯にダメージを与えないために、あえてやわらかい素材を用いていることから、ボロボロと取れることもあると知っておきましょう。
- 根管治療の仮蓋が取れるとどのようなリスクがありますか?
- 根管治療の仮蓋が取れると、根管部分で再び細菌感染が起きるリスクがあります。仮蓋は治療途中の穴が開いている状態の歯に蓋をすることで、細菌などの侵入を防いでいますが、仮蓋が取れてしまうと細菌などが容易に侵入してしまいます。この結果、根管で細菌感染のリスクが生じるわけです。一方、仮蓋が取れたからといって、すぐに細菌に感染するとは限りません。なぜなら、仮蓋する前段階で薬剤を注入しているためです。仮蓋が取れたとしても、歯の内部に注入してある薬剤によって細菌の侵入は防げるでしょう。ただし、感染リスクが高まることには違いないため、仮蓋が取れた場合は放置せずに速やかに医師に相談してください。
- 根管治療の仮蓋が取れた場合は歯磨きをして大丈夫ですか?
- 根管治療の仮蓋が取れた場合でも歯磨きしても大丈夫です。ただし、歯磨きするときは力を入れないこと、なるべくやわらかい歯ブラシを使うこと、そして必要以上に治療部を刺激しないように注意しましょう。また、歯間ブラシやデンタルフロスなどを使用する際は、いつも以上に丁寧に使うようにしてください。
- 根管治療の仮蓋が取れたらすぐ歯科医院に行くべきですか?
- 根管治療の仮蓋が取れたらすぐに歯科医院を受診してください。この際は、根管治療を受けている歯科医院に診てもらうことが大切です。根管治療に通っている歯科医院であれば、患者さんの治療段階や処置の履歴なども残っているため、適切な対処が受けられます。仮蓋が取れたからといって、どの歯科医院を受診してもよいわけではありません。根管治療を受けている歯科医院に相談しましょう。
根管治療における注意点
- 根管治療中の注意点をおしえてください
- 根管治療は複数回にわたる治療のため、治療が完了するまでの数週間から数ヶ月におよぶ注意が求められます。特に、硬いものが含まれる食事、粘着性がある食べ物、飲酒や喫煙、そしてオーラルケアに注意が必要です。根管治療は、治療途中で仮蓋をして過ごす期間も含まれます。この期間中は、食事をはじめとするさまざまな刺激による仮蓋の破損や欠落に注意しましょう。また、治療中の歯が再び細菌に感染しないようにするためにも、むし歯や歯周病などを防ぐオーラルケアを心がけてください。
- 根管治療中に注意するべき生活習慣はありますか?
- 根管治療中は、食事、運動、オーラルケアなどの生活習慣に注意して過ごすとよいでしょう。食事では、仮蓋の破損や細菌の増加を招きやすい硬い食べ物や甘いものをなるべく控えることが大切です。また、特に痛みがあるときは血行が促進される運動や入浴を控えた方がよいでしょう。そして、歯磨きや歯間ブラシ、さらにはタフトブラシなどを使ったオーラルケアを徹底し、口腔内における細菌の増加を防ぐように注意してください。
編集部まとめ
根管治療の仮蓋はその特性上、ボロボロと落ちたり、外れたりすることがあります。
仮蓋になんらかの異常が生じた際には、自分で判断せず、通院中の歯科医院に電話などで問い合わせてみて、指示をあおぎ、必要であれば早めに受診するようにしましょう。 また、歯にくっつきやすい食べ物、ガムやキャラメルなどは仮蓋が外れる原因になりやすいため、特に根管治療中は避けるようにしましょう。 根管治療は数週間から数ヶ月の時間を要するため、特に治療期間中は仮蓋の破損を防ぐことや、細菌の繁殖を防ぐオーラルケアを心がけるようにしてください。
参考文献