根管治療の費用相場は保険適用内で約1万円〜3万円、自由診療では5万円以上が一般的です。保険診療は基本的な治療を受けられる一方、自由診療では新しい技術や材料を使用した高度な治療が受けられます。
本記事では根管治療の費用相場について以下の点を中心にご紹介します。
- 根管治療の費用相場
- 再治療にかかる費用
- 根管治療の費用を抑えるために
根管治療の費用相場について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
根管治療とは?
根管治療は、深いむし歯や外傷によって歯の神経が損傷を受け、炎症や感染を起こした際に行われる治療です。
歯の根には神経と血管が通っており、これが根管と呼ばれる管の中に存在します。むし歯が進行すると細菌が根管内に侵入し、歯髄(神経と血管の組織)を感染させます。
この状態では歯が痛み、根の周囲の組織にも炎症が広がる可能性があるため、根管治療で、感染した歯髄を取り除き、根管内を清掃し充填することで歯の健康を取り戻します。この治療は歯科医院で行われ、歯科医師の手技と器具を使用して行います。
根管治療の費用相場
根管治療はどのくらいの費用相場なのでしょうか?保険診療と自由診察の費用別に解説します。
保険診療
保険診療の根管治療の費用は一般的に2,000円〜5,000円程度ですが、場合によっては5,000円程度になることもあります。
保険診療では、治療の工程に応じて保険点数が算出され、初・再診料やレントゲン撮影料、処置料、投薬料などが加算されます。一般の健康保険では支払いの際に3割負担となりますが、70歳以上の方は所得割合により1割から2割まで減免されます。
自由診療
自由診療の根管治療では、費用相場が約7万円〜15万円になります。治療箇所によって設定金額が変動します。
例えば前歯の場合は約7万円で済むことがありますが、奥歯の場合は精密さや正確性が求められるため、治療費が高額になる傾向があります。
したがって、自費診療では全額自己負担となりますが、保険診療では使用できない高度な器具や機材、薬剤を用いられ治療精度が向上します。
再治療にかかる費用
再治療にかかる費用は、保険診療と自由診療で異なります。保険診療では、1本あたり2,000円〜5,000円程度が一般的です。
一方、自由診療では前歯の場合は7万円〜9万円程度、奥歯の場合は10万円〜15万円程度の費用がかかることがあります。
治療には使用する道具や薬剤だけでなく、治療時間や回数、被せ物の種類によっても費用が異なります。したがって、再治療の際には、治療内容や費用について歯科医と相談し、適切な選択を行うことが重要です。
保険診療による根管治療のメリットとデメリット
保険診療による根管治療には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか? 以下で詳しく解説します。
保険診療のメリット
保険診療の根管治療には、いくつかのメリットがあります。主なメリットは、以下の通りです。
- どこの歯科医院でも費用が変わらない: 保険治療の費用は国によって統一されています。そのため、どの歯科医院を受診しても治療費は同じです。患者さんは治療を受けられ、費用の心配をすることなく歯の健康を守ります。
- 費用を抑えられる: 自己負担の割合は加入している健康保険によって異なりますが、3割負担が一般的です。そのため、高額な治療費でも患者さんの負担は少なく抑えられます。例えば、1万円の治療費の場合、患者さんの支払いは3,000円に抑えられます。
保険診療の根管治療は、費用が安く抑えられるだけでなく、どの歯科医院でも同じ費用で治療を受けられるという点で、多くの患者さんにとって良い選択肢となっています。
保険診療のデメリット
保険診療のメリットについて解説しましたが、保険診療の根管治療には、いくつかのデメリットもあります。デメリットは、以下の通りです。
- 一人に十分な時間を使えない: 保険診療では、診療報酬が決められており、一人の診療に使える時間が制限されています。通常、一人に対して15分程度の診療時間しか確保されません。そのため、十分な時間をかけて根管治療を行うことが難しく、治療の質に影響が出る可能性があります。
- 精密な処置が困難: 根管治療は非常に精密な処置が必要ですが、保険診療では限られた機器や材料で処置を行うため、精密な治療が困難となります。治療の精度が低下することで、再発や合併症のリスクが高まる可能性があります。
- 再発リスク・抜歯リスクが高まる: 保険診療の根管治療の再発率はおよそ50%といわれています。治療の精度が低く、再発のリスクが高まるだけでなく、再発した場合の治療成功率も低下します。その結果、将来的な抜歯リスクも高まる可能性があります。
- 被せ物の精度が低い: 根管治療後に被せ物を入れる際には、高い適合性が求められます。しかし、保険診療では使用できる材料や工程が制限されているため、適切な適合性を確保することが難しくなります。その結果、被せ物の精度が低下し、再発のリスクが高まる可能性があります。
- ある程度のレベルの治療しか受けられない: 保険治療では使用できる材料や薬剤が国によって決められており、先進的な医療技術を受けられません。これにより、治療のレベルが制限される可能性があります。
- 健康意識が低くなりやすい: 保険治療が安価であるため、患者さんはむし歯の治療を後回しにする傾向があります。健康意識が低下し、歯の健康管理が疎かになることで、将来的に歯の損失や病気のリスクが高まる可能性があります。
これらのデメリットから、保険診療の根管治療費用は抑えられる一方で、治療の質や精度が低下し、再発や抜歯のリスクが高まる可能性があることを考慮する必要があります。
自由診療による根管治療のメリットとデメリット
ここからは、自由診療による根管治療のメリットとデメリットについて解説します。
自由診療のメリット
自由診療の根管治療のメリットは、多岐にわたります。主なメリットは、以下の通りです。
- 精密機器や先進技術を用いた処置: 自由診療では、マイクロスコープやラバーダム、ニッケルチタンファイルなどの精密機器を使用して、高度な根管治療を行うことが可能です。これらの機器や材料を用いることで、より精度の高い治療が実現し、治療の成功率を向上させられます。
- 精度の高い被せ物が作成できる: 自由診療では、精密な工程を経て適合性の高い被せ物を作製できます。適切な被せ物の使用は根管治療の成功率に直結し、再発率を低く抑えられます。
- 時間をかけた治療が受けられる: 自由診療では、患者さん一人ひとりに十分な時間を割けます。これにより、十分な時間をかけて治療を行い、精度の高い治療を受けられます。また、時間を十分に使うことで治療期間や通院回数を減らすことも可能です。
- 再発率を抑えられる: 自由診療では、時間や設備、材料に制約がないため、治療効率や処置精度を向上できます。そのため、初回の根管治療でも高い成功率を期待でき、再発のリスクを低く抑えられます。
- 二次被害に合いにくい: 自由診療では、治療に使用する材料や薬剤の選択肢が広く、精度の高い治療が可能です。そのため、再発や治療に関連する二次被害のリスクを低減できます。結果として、治療した歯の耐久性が向上し、再発率が低くなります。
自由診療の根管治療にはさまざまなメリットがありますが、デメリットもあるため確認することが大切です。
自由診療のデメリット
自由診療も保険診療と同様で、デメリットもあります。自由診療のデメリットは以下の通りです。
- 高額な費用: 自由診療は保険が適用されないため、費用が高額になります。歯科医院で費用を決定するため、5万円から20万円程度の相場があります。再根管治療を含む精密根管治療に必要な費用も7.7万円から14.3万円となります。
- 医療費控除の範囲内での負担: 自費の根管治療は医療費控除の対象になりますが、控除の対象となるのは10万円を超えた部分からです。つまり、控除の範囲内で費用は抑えられますが、費用の全額が控除されるわけではありません。
高額な費用は医療費控除の対象になりますが、詳しい条件について調べることが重要です。
保険診療の根管治療と自由診療の根管治療の違い
保険診療と自由診療の根管治療には大きな違いがあります。以下で、具体的な違いで解説します。
治療期間と通院回数
保険診療の根管治療では通院回数が多く、平均して10回以上に及ぶことが一般的です。治療内容や時間は国によって規定されており、1回の治療時間が短いため、治療期間が長引くことがあります。
一方、自由診療では通院回数が少なく、通常は2回から3回で治療が完了します。前歯の場合は根の数が少ないため、1回の治療で終わることもあります。自由診療の治療時間は1回あたり約60〜90分と長く、これにより通院回数が少なく済みます。
通院回数の違いは、治療時間や処置内容の違いによるものです。
薬剤
自費診療の根管治療では、根管の洗浄や消毒、根管を密閉するために使用する薬剤やセメントを症例によって使い分けられます。 保険診療の根管治療では、薬剤や材料の選択肢が限られており、根管充填には一般的に「ガッタパーチャ」と呼ばれるゴムの材料が使用されます。この材料は殺菌効果がなく密閉力も低いため、歯科医師の技術次第では隙間が生じ、細菌感染を引き起こすリスクがあります。
一方、自由診療では薬剤やセメントの選択肢が広く、根管内の洗浄や消毒、密閉に使用される材料を患者さんの状況に応じて使い分けられます。特に、MTAセメントは細菌の繁殖を防ぎ、密封力が高いため、再発を防ぐ効果が期待できます。
したがって、自費治療では治療の成功率を高め、歯の寿命を延ばせます。
器具・機材
保険診療の根管治療では、拡大ルーペやステンレスのファイルなどの基本的な器具を使用します。これらの器具は手指感覚に頼り、治療の精度や成果は、歯科医師の経験に左右されます。保険治療では、根の形状や根の先端などの細部を十分に確認できない場合があり、細菌の取り残しや治療の不完全さが生じる可能性があります。
一方、自由診療の根管治療では、高性能マイクロスコープやニッケルチタンファイルなどの先進的な器具を使用します。高性能マイクロスコープは根管内を拡大して観察し、手指感覚に頼らない視認が可能です。
また、ニッケルチタンファイルは柔軟性があり、複雑な根管形態に適応できます。これにより、根管内をより正確に清掃し、細菌感染を除去できます。さらに、自由診療ではCT撮影を組み合わせることで、根の形状や病巣の確認がより正確に行えます。
したがって、保険診療ではレントゲン画像だけでは不十分な場合がありますが、自由診療ではより詳細な診断が可能です。
成功率
保険診療の根管治療と自由診療の根管治療の違いは、成功率にも現れています。
保険診療では、根管治療の成功率は約30〜50%とされており、再感染のリスクが高いとされています。この低い成功率は、保険診療の制約によるものであり、十分な治療時間や精密な処置が難しいことが原因です。
一方、自由診療では、成功率は約90%以上とされています。精密な根管治療と精密な被せ物を組み合わせた場合、成功率が高まり、再発率も約9%と低く抑えられます。
しかし、保険の根管治療と被せ物の組み合わせでは、成功率は約18%にとどまり、再発率は約82%と高くなります。
このように、自費と保険の根管治療では、治療の成功率と再発率に大きな差が見られます。
根管治療の費用を抑えるために
ここまで根管治療の費用について解説してきました。最後に、費用を抑えるためにできることを解説します。
精密根管治療を行う歯科医院を選ぶ
根管治療の費用を抑えるためには、精密根管治療を行う歯科医院を選ぶことが重要です。マイクロスコープや歯科CTなどの高度な治療設備を備えた医院では、通院回数が少なく済みます。
これらの設備を活用することで、より細密な部分を見ながら根管治療を行うことが可能になります。ただし、治療期間は歯の状態によって異なるため、注意が必要です。
早めに治療を受ける
歯に異常を感じた場合、早めに歯科医院で治療を受けることが重要です。根管治療が必要な歯を放置すると、菌によって歯冠部分が溶かされてしまい、最終的には抜歯しか選択肢が残りません。
治療を放置すると症状が悪化し、費用だけでなく歯を失うリスクも高まります。早めの治療は痛みや費用を抑えるだけでなく、自身の歯を守るためにも重要です。したがって、歯に異常が見られたら、迅速に歯科医院を受診しましょう。
まとめ
ここまで根管治療の費用相場についてお伝えしてきました。
根管治療の費用相場の要点をまとめると以下の通りです。
- 保険診療での根管治療は約2,000円〜5,000円、自由診療では7万円〜15万円となり、保険診療は一部負担で基本的な治療が受けられるのに対し、自由診療では高額ながらも高度な技術や材料を使用して治療精度の向上が期待できる
- 根管再治療の費用は保険診療で一本あたり2,000円〜5,000円、自由診療では前歯が7万円〜9万円、奥歯が10万円〜15万円です。費用は使用する道具や薬剤、治療時間、回数、被せ物によって変動する
- 根管治療の費用を抑えるためには、「精密根管治療を行う歯科医院を選ぶ」「早めに治療を受ける」ことが大切
ここまで、読んでくださりありがとうございました。