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むし歯が神経まで達している場合の症状とは?段階別の症状や治療法について解説

むし歯が神経まで達している場合の症状とは?段階別の症状や治療法について解説

むし歯は、進行度に応じて異なる症状が現れる病気です。発生して間もない頃は、歯面に白いシミが現れるだけで、それ以外の自覚症状はありません。その状態を放置していると歯に穴があき、冷たいものがしみるようになりますが、神経まで到達したらどうなるのか。

ここではそんな神経まで達しているむし歯の症状と治療法について、詳しく解説をします。自分のむし歯がどこまで進行しているのか気になっている人は参考にしてみてください。

むし歯が神経まで達している場合

むし歯が神経まで達している場合

むし歯が神経まで達する前の症状について段階別に教えてください。
むし歯は、神経に達するまでに次のような段階を踏んで行きます。それはCO〜C2という3段階に分けられます。 CO:「Caries Observation」の略称であるCO(シーオー)は、日本語で要観察歯(ようかんさつし)といいます。初期う蝕(しょきうしょく)とも呼ばれるもので、歯の表面には白いシミが生じており、それ以外の症状は認められません。白いシミは歯の内部で脱灰が進んでいる証拠なので、放置しているとやがては歯に穴があきます。

C1:エナメル質のむし歯で、歯面に穴があいています。痛みを感じることはありません。

C2:象牙質のむし歯で、歯面の穴が広く、大きくなっています。歯の神経と血管で構成される歯髄との距離が近いことから、冷たいものや甘いものがしみやすくなります。

むし歯が神経まで達している場合の症状について教えてください。
むし歯菌が神経まで達している「C3」では、冷温刺激が加わった時だけでなく、安静にしている時にも歯痛が生じます。とくに眠る前のような副交感神経が優位になっている時に、歯がズキズキと痛むことが多いです。ケースによっては眠れなくなるくらい痛みが強くなります。
むし歯が神経まで達するよりひどい状態とはどんなものですか?
歯の神経と血管からなる歯髄(しずい)は、歯の頭の部分だけでなく、根っこの部分にまで分布しています。その歯髄全体が細菌によって汚染されると、歯髄壊死(しずいえし)や歯髄壊疽(しずいえそ)という病態を引き起こします。歯髄壊死は単に歯髄が死ぬことを意味しますが、歯髄壊疽は歯髄が腐った状態で、強烈な臭気を放ちます。どちらも歯の感覚が消失するとともに、血液や酸素、栄養素の供給もなくなります。 その状態をさらに放置していると、根管内の汚染が一層進み、歯の根の先にまで病変が漏れ出るようになります。その結果、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)や顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)、上顎洞炎(じょうがくどうえん)、蜂窩織炎(ほうかしきえん)といったより深刻な炎症性疾患を惹起することもあるのです。

むし歯が神経まで達している場合の治療法

むし歯が神経まで達している場合の治療法について教えてください。
歯の神経を抜いて、根管内を無菌化する根管治療が必要となります。例外的に歯の神経を抜かずに残せる場合もありますが、神経まで汚染されたむし歯は原則的に歯の根の治療を行わなければなりません。
根管治療にはどのような種類がありますか?
根管治療は、次の4つの種類に大きく分けられます。種類1:抜髄(ばつずい)
歯髄を抜き取る処置です。クレンザーと呼ばれる専用の器具を使って、歯髄を除去します。

種類2:感染根管治療
感染した根管内を無菌化する処置です。最もスタンダードな根管治療といえます。

種類3:再根管治療
過去に根管治療を行った歯で、再感染が見られた場合に行う処置です。被せ物や土台、根管内の充填物を撤去してから、根管内の清掃を行います。

種類4:外科的歯内療法(げかてきしないりょうほう)
通常の根管治療では改善が見込めない症例に適応される治療法です。感染源となっている歯の根っこの先を外科的に取り除く歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)や充填剤を本来とは逆の方向から挿入する逆根管充填(ぎゃくこんかんじゅうてん)などが代表的です。

根管治療の流れについて教えてください。
根管治療は、次のような流れで進行します。STEP1:感染歯質と天蓋の除去
はじめに、むし歯菌に感染した歯質をドリルで削り取ります。続いて、天蓋(てんがい)と呼ばれる部分を取り除き、歯髄を抜き取りやすい環境を整えます。

STEP2:抜髄
歯の神経を抜く治療です。歯冠部と歯根部の歯髄をさまざまな器具を使って除去します。

STEP3:根管拡大と根管形成
根管内を拡大、形成しながら、汚染された歯質、残存した歯髄を取り除いていきます。適宜、消毒薬を用いながら、根管内の洗浄も進めていきます。

STEP4:根管充填
根管内を無菌化できたら、ガッタパーチャやシーラーなどで充填を行います。根管内を薬剤で緊密化することで、むし歯の再発リスクを抑えることができます。

STEP5:レントゲンで確認
根管充填が上手く行われたかどうかは、レントゲン撮影で確認できます。問題がなければ、土台の築造と被せ物治療へと移行します。

根管治療のメリットとデメリット

根管治療のメリットとデメリット

根管治療のメリットについて教えてください。
根管治療には、次のようなメリットを伴います。メリット1:歯痛を取り除ける
根管治療を行うことで、むし歯由来の歯痛を取り除けます。抜髄をした時点で、ズキズキという不快な歯痛は消失することでしょう。

メリット2:むし歯の重症化を防げる
歯髄炎は、むし歯の途中経過でしかありません。そのまま放置していると、歯冠や歯根がボロボロになるだけでなく、より深刻な炎症性疾患を引き起こしかねないのです。そうしたむし歯の重症化を防げるだけでも根管治療を行うメリットは大きいといえます。

メリット3:歯を保存できる
歯の神経に達したむし歯は、最終的には歯を抜かざるを得ません。現状、天然歯に優る人工歯は存在しておらず、それを失うデメリットは極めて大きいといえるでしょう。早期に根管治療を行うことで、かけがえのない天然歯を保存することが可能となります。

メリット4:医療費を抑えられる
保険診療では、数千円程度の費用で根管治療を行えます。根管治療を行わずに歯を失った場合は、補綴治療の費用として数万円、インプラントで補う場合は数十万円の費用がかかります。つまり、適切な時期に根管治療を行うことで、医療費を抑えられるのです。

根管治療のデメリットについて教えてください。
根管治療には、次に挙げるようなデメリットを伴います。デメリット1:複数回の通院が必要となる
根管治療は、3~6回程度の通院が必要となります。一般の歯科治療と比べると、通院回数が多いというデメリットを伴います。

デメリット2:治療期間中は痛みに悩まされる
根管治療では、根管治療に機械的・化学的刺激が加わるため、麻酔が切れた後はそれなりの痛みが生じます。根管治療の期間中は、そうした痛みに悩まされることになります。

デメリット3:歯を残せないこともある
根管治療を行ったからといって、必ず成功するとは限りません。とくに保険診療の根管治療は、成功率が50%を切っているとも言われており、結果として歯を残せないこともありますので、その点はご注意ください。

むし歯が神経まで達しないためにやるべきこと

むし歯を予防する方法について教えてください。
むし歯は、歯質・糖質・細菌という3つの要素が組み合わさることで発症する病気です。この3点に対処することで、むし歯を効率よく予防できるようになります。具体的には、以下の方法を実践しましょう。【歯質】フッ素で歯を強くする
エナメル質は、フッ素によって酸に対する抵抗力を高めることができるため、歯科医院でのフッ素塗布を定期的に受けるようにしましょう。毎日使用する歯磨き粉もフッ素が配合されたものを選択することで、歯の再石灰化が促され、むし歯になりにくい歯質を作れます。

【糖質】糖質の摂取量を管理する
むし歯菌は、スクロース(砂糖)をはじめとした糖質がなければ活動できません。その糖質の摂取量を減らすことで、むし歯リスクも自ずと低下します。

【細菌】プラークフリーな状態を維持する
むし歯菌の住処となる歯垢は、歯磨きによって除去できます。歯科医院でのブラッシング指導で学んだ正しい歯磨き法を実践して、プラークフリーな環境を維持しましょう。歯垢のない滑らかな歯面には、細菌が繁殖する余地もありません。

初期のむし歯の治療方法について教えてください。
初期のむし歯はまだ歯面に穴があいていないことから、削らずに治すことができます。厳密には、フッ素を作用させることで歯の再石灰化が促され、むし歯の進行が止まります。その後も正しい口腔ケアを継続できれば、むし歯がC1まで進むことはないでしょう。ただし、初期のむし歯で生じた白いシミはなくなりません。

編集部まとめ

このように、むし歯が神経まで達している場合は、冷たいものや甘いものがしみるだけではなく、安静時にも歯がズキズキと痛むようになります。その状態を放置していると、歯の神経が死んで痛みを感じなくなりますが、むし歯が治ったわけではありませんのでご注意ください。

歯の神経が壊死した後もむし歯菌は繁殖を続けて、さらに深刻な炎症性疾患を引き起こすことから、できるだけ早く根管治療を受けた方が良いといえます。根管治療が成功すれば、かけがえのない天然歯を残せることに加え、医療費の抑制にもつながることでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

鶴見大学歯学部大学院卒業 / 現在は若菜歯科医院の院長

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