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根管治療で隣の歯が痛い原因|隣の歯が痛む場合の診断方法や対処法を解説

根管治療で隣の歯が痛い原因|隣の歯が痛む場合の診断方法や対処法を解説

根管治療中や治療後に、隣の歯が痛みだすことは少なくありません。

根管治療は、歯の神経に達したむし歯を治療し、細い根管を処置する難しい治療法です。

根管治療後の歯や隣の歯に慢性的な痛みを生じ、治療が困難になってしまうケースもあります。

しかし、適切に治療すれば痛みは軽減されていくことがほとんどで、過度に心配する必要はありません。

この記事では、根管治療で隣の歯が痛みだしたときに知っておくべき、以下のポイントを解説します。

  • 根管治療で隣の歯が痛む原因
  • 隣の歯の歯が痛む場合の診断方法
  • 歯が痛む場合の自分でできる対処法

患者さん自身でも痛みの原因や診断方法を理解しておき、検査や治療をスムーズにすすめるための参考になれば幸いです。

根管治療で隣の歯が痛い原因

ルームウェアの女性

根管治療中にはさまざまな理由で痛みが発生することがあり、治療中の歯ではなく、隣の歯が痛くなるケースも少なくありません。

根管治療は歯の神経の治療であり、極めて細く複雑な根管を治療していくため、経験豊富な歯科医師であっても治療成功率は100%ではないのが現状です。

根管治療中の歯だけでなく、隣の歯が痛む場合に考えられる主な原因を解説します。

治療による神経への影響

根管治療は歯の神経を対象としており、時に神経を刺激し痛みを引き起こすことがあります。

根管治療が必要な歯は神経が壊死して痛みを感じなくなっていることが大半です。

ただし壊死した神経を除去する際に正常な神経とつながっている部分を切断するため、正常な神経も刺激を受ける場合があります。

この刺激は一時的な痛みだけでなく、神経周辺の炎症によって慢性化する場合が少なくありません。

根管治療で歯の根元を掃除した際に、隣の歯につながる神経を刺激してしまった場合は、隣の歯が痛みを感じて難治性の疼痛となります。

噛み合わせの変化

根管治療では歯の根元を掃除するために、歯を大きく削る必要があります。

治療完了後には被せ物をして噛み合わせを調整しますが、この調整が不十分だった場合には噛み合わせが変化してしまいます。

変わった噛み合わせにより隣の歯が圧迫されて、歯の痛みが生じる場合もあるでしょう。

根管治療をした歯はもろくなっているため、不適切な噛み合わせだと歯が割れる可能性もあります。

根管治療中によって歯茎が腫れたり感覚が鈍ったりして、被せ物を装着する際には違和感に気が付かないことも少なくありません。

治療後しばらくしてから噛み合わせの違和感がある場合は、早めに歯科医院を受診して調整してもらいましょう。

治療で歯茎が傷ついた

根管治療では、歯茎を切開して歯の根元の治療を行うことがあり、切開した部分が持続的に痛む場合があります。

歯の根元の感染源が大きかったり、歯の表面を削って患部にアプローチするのが難しかったりする場合は、歯茎を切開して歯の根元を切除する根尖切除術が必要です。

根尖切除術中は麻酔を使用するので痛みは感じにくいですが、術後には傷口が塞がるまでズキズキと痛みが続く場合もあります。

切除範囲が大きかった場合は、隣の歯まで痛みだすことがありますが、ほとんどの場合は数日で治まるでしょう。

顎関節・筋肉による痛み

歯が痛い若い女性

患者さんは歯が痛いと思っていても、実は別の部分で痛みが生じているケースは少なくありません。

根管治療をした際に顎の筋肉に炎症が起こっていたり、顎の関節に炎症が起こったりして痛みが生じ、それが歯の痛みとして知覚されている場合もあります。

特に上の歯の根管治療では、上顎洞性歯痛が起こりやすいといわれています。

上顎洞とは頬の部分にある頭蓋骨の空洞で、上の歯の歯根が上顎洞までつながっていることは少なくありません。

根管治療が必要な歯は歯の根元に細菌が感染しており、上顎洞まで細菌が侵入した場合は上顎洞炎となります。

根管治療の刺激によって上顎洞に炎症が起こり、隣の歯の痛みと感じられるケースもあります。

むし歯

根管治療とは関係なく、隣の歯がむし歯になっている可能性もあります。

根管治療が必要な歯は、むし歯が進行して歯の神経にまで達している状態です。

ここまで進行したむし歯がある場合には、隣の歯やほかの歯でもむし歯が進行している可能性は少なくないでしょう。

歯科医師は口腔全体を診察して、優先度の高いむし歯から治療していくため、根管治療中に隣の歯のむし歯が進行して痛みだす場合があります。

痛みが強くて耐え難い場合は、根管治療を中断して隣の歯の治療を優先してもらうことも可能です。

歯周病

歯が痛いビジネスウーマン

むし歯と同じく歯周病も、隣の歯の根管治療とは関係なく進行する場合があります。

むし歯は歯の病気であるのに対し、歯周病は歯の周りの歯茎や歯槽骨の病気です。

歯周ポケットで細菌が増殖し、酸により歯肉や歯槽骨が溶解すると、歯が抜け落ちることがあります。

歯の周りで細菌が増殖しても痛みは出にくく、歯周病で痛みが出る場合にはかなり進行してしまっている可能性が高いでしょう。

歯茎が大きく下がったり、歯茎が赤く腫れて出血したりする場合には歯周病を疑います。

歯周病は日本人が歯を失う原因の第1位であるため、予防のためにも定期的に検査を受けるようにしてください。

根管治療で隣の歯が痛む場合の診断方法

患者を治療する医師と歯科衛生士

根管治療中や治療後に隣の歯が痛みだした場合には、まず原因を特定することが重要です。

歯が痛む原因は複数あり、痛みの原因を正確に特定することは簡単ではありません。

症状によっては高度な検査が必要になることもあり、原因がわからないまま慢性的に続く痛みは患者さんにとって精神的な負担となるでしょう。

歯の痛みの原因を特定するための、主な診断方法を解説します。

視診

歯科医師が目で見て状態を確認する視診は、歯科治療の基本です。

単に目で見るだけでなく、拡大鏡を使って詳細に観察し、歯の変色やう蝕がないかを調べていきます。

根管治療は歯の根元にまで治療範囲が及ぶため、歯と歯茎全体に影響がないかを調べる必要があります。

根管治療をしている歯の隣の歯が痛みだした場合、視診だけでは原因の特定は困難で、より高度な検査方法を併用することがほとんどです。

レントゲン検査

レントゲン写真を確認する歯科衛生士

レントゲン検査は、X線によって目で見えない歯の内部や骨の状態を確認する検査です。

根管治療が必要な歯では、多くの場合歯の根元に黒い影を生じており、これは細菌感染による膿が溜まったものです。

レントゲン検査では歯の根元に膿が溜まっていることは調べられますが、本当にその歯が原因であるとは限りません。

根管内に細菌が侵入している歯から漏れた膿が、別の歯の近くに溜まっている場合もあります。

根元に膿が溜まっている歯を根管治療しても、本当の原因は隣の歯にある場合も多いため、レントゲン検査だけでは痛みの原因特定はできないことがあります。

歯周ポケットの検査

歯周ポケット検査は、歯の周りにできた歯茎の溝の深さを調べるもので、歯周病の兆候を見つける検査です。

歯周ポケットの深さは通常2~3mmで、4~5mmだと初期の歯周病・6mm以上となると重度に進行した歯周病と判断されます。

歯周ポケットが深い場合には歯周病や歯肉の炎症による痛みの可能性が高いため、根管治療とは別で速やかに治療が必要です。

また、歯周ポケットから採取した唾液に含まれる細菌を調べることで、歯周病の原因菌などが増えていないかを調べることもできます。

打診・触診

打診・触診は、歯に軽い刺激を加えて、痛みの原因や場所を特定するための検査です。

患者さんは歯が痛いと感じていても、実際にどの歯が痛いのかを正確に自覚することはほとんどできません。

このため、歯科医師が歯を1本1本打診や触診して、触ると痛い歯を特定していきます。

健康な歯は軽く叩かれても痛みを感じることはなく、叩かれて痛い場合には歯の周辺で炎症が起こっている可能性が高いでしょう。

触診では歯が動くかどうか、歯肉が腫れているかどうかを調べて、歯や歯肉に炎症がないかを検査します。

電気刺激を与える診査

歯髄電気診査は、電気を流して歯の神経が生きているかを調べる検査です。

根管治療が必要な歯は、歯の神経が細菌に感染して壊死しており、電気を流しても痛みは感じません。

電気を流して痛みがある場合には神経が生きているとわかるため、歯に損傷を与えずに正確に神経の状態を検査できるのがメリットです。

レントゲン検査で歯の根元に膿が溜まっているように見えても、電気歯髄診査によって神経が生きているとわかるケースもあります。

隣の歯を電気歯髄診査して神経が壊死しているとわかり、原因歯の特定につながった症例も報告されています。

根管治療中の隣の歯が痛む場合の対処法

目を閉じる若い女性

根管治療中に隣の歯が痛みだした場合は、歯科医師に相談して原因を調べてもらうのが基本です。

しかし、次の通院までに時間がある場合には、自分でできる痛みの軽減方法も知っておくと便利でしょう。

一刻も早く痛みを軽減したい場合に、役立つ対処法を解説します。

治療した歯の近くを冷やす

冷たいものがしみない場合は、痛い部位を冷やすと痛みが軽減されることがあります。

お口に水を含んだり、頬の上から氷嚢を当てたりして患部を冷やしてください。

むし歯や歯周病などの痛み全般に効果的で、根管治療をした歯の近くを冷やすことで隣の歯にも効果が及ぶでしょう。

冷やすことで毛細血管が収縮し、血液に含まれる発痛物質や炎症物質の流れが悪くなるため、痛みが伝わりづらくなります。

ズキズキとした痛みで患部が熱を持っている場合は、冷やすことで炎症を抑える効果もあります。

冷たいものがしみる場合は逆に痛みを増してしまうので、冷やすことは避けてください。

歯みがきで力を入れ過ぎない

歯みがきの際に痛みが生じる場合は、力を入れ過ぎないように注意しましょう。

歯の周りや歯の根元に炎症が起こっていると、歯を押す力で刺激を受けて痛みが生じることがあります。

口腔内を清潔に保つためにも歯みがきは必要ですが、歯みがきの刺激で痛みが増してしまわないように慎重に行ってください。

歯ブラシの毛先が細くやわらかいものに変えて、歯を1本1本磨くように細かく動かしていくのがポイントです。

力を入れて歯を磨かなくても、細くやわらかい歯ブラシを丁寧に動かせば歯垢は十分に落とせます。

また、うがい薬を利用すれば、歯に負担をかけることなく口腔内の清潔を保てるでしょう。

隣の歯が痛くなった場合、どのくらい様子を見るべき?

歯痛を訴える女性

根管治療中には、治療中の歯や隣の歯に痛みが生じることが少なくありません。

痛みの原因はさまざまですが、治療の刺激による痛みである場合は、数日のうちに自然に治まることがほとんどです。

麻酔をして根管治療をした場合は、麻酔が切れるタイミングで痛みが生じますが、通常は数時間で治まります。

歯科医院で痛み止めが処方されるため、痛みが強い場合には痛み止めを使用しましょう。

しかし、根管治療によって細菌が体内に侵入して炎症を起こしている場合などは、抗生物質などによる治療が必要なこともあります。

治療中や治療後に生じた痛みが1週間以上治まらない場合や、痛みが強い場合には歯科医院を受診しましょう。

すぐに通院できない場合でも、電話で症状を相談することも可能です。

隣の歯が痛くなった場合の根管治療への影響は?

歯科衛生士と患者

根管治療中に隣の歯が痛くなった場合は、原因を特定しなければいけません。

隣の歯がむし歯や歯周病になっている場合は、症状の進行度合いによって優先度を判断します。

根管治療を完了させてから隣の歯のむし歯や歯周病の治療に移るケースがほとんどですが、痛みが強い場合には根管治療を中断して応急処置を優先することもあります。

痛みの原因がすぐに特定できない場合は、検査のために別の病院に紹介されるケースも少なくありません。

一度根管治療をはじめたら根管をしっかり封鎖しなければいけないため、根管治療が終わるまでやめずに通院するようにしてください。

根管治療中の隣の歯以外が痛むケース

歯科衛生士と男性患者

根管治療後に痛みが生じるケースはよく見られ、治療した歯や隣の歯以外にも痛みが生じることは少なくありません。

根管治療によって痛みが生じる原因は、主に以下の3つに分けられます。

  • 根管を拡張して神経を除去する治療の機械的刺激によるもの
  • 根管治療で使われる薬剤の化学的刺激によるもの
  • 細菌感染による炎症によるもの

いずれの場合も、根管治療をした歯だけでなく、ほかの歯に波及するケースがあります。

神経の損傷や炎症などの異常がないにもかかわらず歯の痛みを生じることもあり、原因の特定や治療は簡単ではありません。

慢性的な痛みが続くことで精神的負荷が大きくなり、心因性の痛みが生じる可能性もあるため、精神面のケアも重要です。

まとめ

口元を指さす女性

根管治療で隣の歯が痛い場合に、考えられる原因や診断方法を解説してきました。

根管治療は歯の根元の治療であり、自分の歯を残すためには不可欠な治療ですが、難易度が高く思わぬ結果になることも少なくありません。

根管治療後に隣の歯やほかの歯が痛みだす症例はこれまでにも報告されており、治療や検査の技術と知識は蓄積されています。

歯の痛みが続くと精神的にも落ち込んできますが、適切な治療を継続すれば治るケースがほとんどです。

根管治療中や治療後に歯が痛みだした場合には、進行する前に早めに歯科医師にご相談ください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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