根管治療はむし歯などで傷んだ歯の神経を取り除く治療です。
しかし根管治療を行った歯を10年後に抜歯しなければならない状態に陥る場合があります。
この記事ではこれから根管治療を行う人はもちろん、すでに根管治療を行った人にも向けて、根管治療後に抜歯しなければならない状態や治療後の歯の寿命や長持ちさせる方法について解説します。
根管治療について
- 根管治療とはどのようなものですか?
- 根管治療とは、歯髄と呼ばれる歯の中の神経や血管などの組織を取り除く治療です。
歯科医院に治療に行った際に根管治療という言葉は聞いたことはなくても、歯の神経を抜くという言葉は聞いたことのあるのではないでしょうか。歯髄が炎症などを起こし傷んでしまった場合に、神経を抜き清掃や消毒をする治療のことです。
若年層から高齢者まで世代を問わず必要と判断されれば治療が行われます。
- なぜ根管治療が必要になるのですか?
- 歯の中の神経や血管などの組織がむし歯や外傷によって感染や壊死などをした場合に必要です。むし歯は初期むし歯だとフッ化物を塗布するなどして歯を削らずに治療することが可能です。
しかし、穴が開いてしまうとむし歯になった部分を削り詰め物をする必要があります。ここまでに治療できればよいですが、さらにむし歯が進行してしまうと歯に強い痛みが出てきます。この状態にまでなると、歯の神経が傷んでしまっている状態なため根管治療が必要です。
- 根管治療後の歯の寿命はどのくらいですか?
- 根管治療を行った歯がその後どのくらいもつかは、口腔内環境によっても変わるため個人差があります。しかしアメリカの研究所によって発表された論文では、根管治療後の歯の寿命の平均は11.1年であるとされています。
この数字は、根管治療を行っていない健康な歯と比べて短い数字です。歯の寿命とは歯を失うまでの時間をいいます。歯を失う理由は多々ありますが、基本的には抜歯により失うケースがほとんどです。
根管治療を行った歯は治療を行っていない歯に比べて、その後抜歯される頻度が高い傾向があります。
根管治療の10年後
- 根管治療10年後でも抜歯しなくて大丈夫ですか?
- 根管治療を行った歯でも、腫れや痛みがあるなどの問題がなければ抜歯の必要はありません。そのため、10年後に抜歯をしなければならないというわけではありません。かといって10年後に抜歯をしなくてもよいとも言い切れないのが事実です。
先程も述べたように、根管治療を行った歯がどのくらいもつかは個人差があるからです。根管治療後に新たな痛みなどの症状が出た場合、再治療が必要です。再治療を行う際に、症状の度合いによっては抜歯を提案されることもあります。
そうなることを防ぎ、10年後にも抜歯をしないようにするためには、しっかりと歯の健康を保つことが必要です。
- 根管治療後の歯の寿命が短くなる原因は何ですか?
- 根管治療により神経を取った歯は、そうでない健康な歯に比べて強度や歯の質が低下します。そのため健康な歯と同じようにケアをしていても、歯周病などの病気になりやすいです。
また、むし歯などにもなりやすく進行しやすいため、抜歯をしなければいけない状態に陥りやすいです。また、根管治療を行った歯に根尖病巣などの新たな症状が見られる場合もあるため、それらの症状も歯の寿命が短くなる原因の一つになっています。
- なぜ根尖病巣ができるのですか?
- 根尖病巣は歯の根が細菌に感染し炎症を起こすことで発症します。初期では自覚症状はほとんど見られません。
根管治療の際に細菌の処置は行いますが、そこで十分に処置がされていないケースもあり、処置しきれなかった細菌が原因になることがあります。この場合、再び根管治療を行う可能性もあります。根尖病巣ができると、歯茎の腫れや歯茎から膿が出るなどの症状が見られるのが特徴です。
放置してしまうと症状が悪化し、歯の根が折れてしまう歯根破折が見られたり、歯に再び痛みが出てきたりする可能性があるため注意が必要です。根尖病巣は自然治癒することはありません。
症状が見られたら早めに歯科医院を受診することが大切です。
- 歯根破折が起きやすくなる理由は何ですか?
- 前述したとおり、根管治療を行った歯は健康な歯に比べて脆くなっています。脆くなった歯は根尖病巣のような病変が起きやすく、また咀嚼などの刺激の影響も受けやすいです。
咀嚼は食事をするたびに行う行為です。人間が生きるためには食事が必要なため、毎日歯に刺激を与えることになります。こうして繰り返し歯に負荷をかけることによって、歯が疲労により破壊されてしまいます。
これを歯根破折といい、歯がグラグラしたり折れてしまったり欠けてしまったりする状態です。
以上のことから歯根破折が起きやすくなる理由は、根管治療などにより脆弱になってしまった歯には健康な歯以上の負担がかかるからといえます。
根管治療後の歯を長持ちさせる方法
- 根管治療後に気をつけるべきことを教えてください
- 治療後の歯を長持ちさせるためには、まず治療時にしっかり細菌を処置し、神経の代わりになる詰め物をきちんと詰めることが大切です。しかし、これらは歯科医師の治療の仕方に左右されるものであり、治療を受ける側ができることはありません。
それ以外の面で、長持ちさせるために気をつけていきましょう。
根管治療を行った歯は歯周病などの病気になりやすいうえに、むし歯が知らず知らずのうちに進行していきやすいです。それらを防ぐために、日々の口腔内のケアをしっかり行うことが大切です。
むし歯は正しい磨き方で歯みがきを行うことはもちろん、フロスで歯の間もしっかり掃除したり、フッ素が配合された歯みがき粉や洗口液を使ったりすることによって予防できます。歯周病もこれらのケアと規則正しい生活習慣で予防できるため、口腔内のケアをこれまで以上にしっかり行いましょう。
- 根管治療後は歯科検診が必要ですか?
- 治療した歯の寿命を短くする原因であるむし歯や歯周病の進行などの確認のため、定期的なメンテナンスが必要です。特に根尖病巣は初期は自覚症状がほぼないため、症状に気づいて歯科医院を受診したときにはかなり進行していることがほとんどです。
しかし、エックス線写真などによって根尖病巣を見つけることができる場合があります。根尖病巣は治療後の歯の寿命を短くする大きな原因なため、早めに発見し対処することが大切です。根管治療後の歯は健康な歯に比べて、病気などのさまざまなリスクが高い状態にあります。
どれだけ気をつけてケアを行っていても、自身では見えない部分やなかなかケアしにくい場所などがあり、完璧に病気を防ぐことはなかなか難しいです。定期的に受診することで自身ではケアしきれなかったところをケアしてもらうことができますし、きちんとケアできているかの確認もしてもらえます。
歯を長持ちさせるためにも定期的に歯科検診に行きましょう。
- 根管治療後の適切な通院頻度はどのくらいですか?
- 日本歯科医師会では何もなくても年2回以上の定期的な受診を推奨しています。治療後に症状が見られなければ、年2回程の受診で問題ありません。
しかし、治療後の歯に不安がある人は、頻度をあげて受診するとよいでしょう。高頻度で受診すればその分異常が起きた場合に早く異常を発見してもらえるため、年2回以上の受診がおすすめです。
定期的な受診以外でも、気になる症状があれば早めに歯科医師に相談しましょう。
編集部まとめ
歯の根管治療は、むし歯や外傷などによって傷んでしまった歯の神経を取り除く治療です。
根管治療を行った歯は健康な歯に比べて、歯の強度や歯の質が低下する傾向があります。根管治療後の歯の平均寿命は11.1年と健康な歯に比べて短いです。
歯の強度が低下した治療後の歯は負荷がかかるため、根尖病巣などにより抜歯をしなければならない状態に陥ることがあります。
治療後の歯を長持ちさせるためには、毎日の口腔内ケアや定期検診で早く異常を見つけるなどのその後のケアが大切です。
参考文献