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将来の歯を守る!20代で根管治療を受ける前に知っておくべきこと

将来の歯を守る!20代で根管治療を受ける前に知っておくべきこと

20代で根管治療をすすめられたら、不安や疑問が浮かぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか?大切な歯を残すための治療である一方、治療後の影響や将来への影響も気になりますよね。

根管治療は将来の歯を守るための大切な選択肢ですが、適切なタイミングで治療を受けることで、歯の寿命を延ばせます。

本記事では20代で根管治療を受ける前に知っておくべきことについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 20代で根管治療を受けたことのある方の割合
  • 20代で根管治療を受けるリスク
  • 神経を抜かない治療方法

20代で根管治療を受ける前に知っておくべきことについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

20代で根管治療を受けたことのある方の割合

20代で根管治療を受けたことのある方の割合

一般社団法人 日本歯内療法学会による調査では、20代でむし歯治療を受けた経験がある方は全体の約65.6%にのぼるとされています。そのうち、歯の神経を除去する根管治療(歯髄除去)を受けた経験がある方は28.1%で、これは3〜4人に1人程度が該当するとされています。

かつては年齢を重ねてから必要になることが多いと考えられていた根管治療ですが、実際には20代という若い世代でもすでに一定数が受けている現状があります。

神経を抜いた歯は将来的に再治療や抜歯のリスクが高まり、歯の寿命が短くなる傾向があるため、できる限り神経を残す方向での治療が望まれます。そのため、若いうちから定期的に歯科検診を受ける習慣をつけ、予防意識を持って日々のセルフケアに取り組むことが、将来の歯の健康を守るための第一歩となります。

むし歯の進行具合と歯の神経を抜く理由

むし歯の進行具合と歯の神経を抜く理由

どのくらいむし歯が進行していると歯の神経を抜く必要があるのでしょうか。歯の神経を抜く前の段階と歯の神経を抜く段階別に解説します。

歯の神経を抜く前の段階

むし歯は進行段階によって治療内容が大きく異なります。

C0はむし歯になる前の状態で、フッ素塗布などで経過観察されます。C1では歯の表面(エナメル質)に限局した初期むし歯で、自覚症状が少なく、レジン充填などで対応できるとされています。

C2になるとむし歯が象牙質に達し、冷たいものがしみるなどの症状が現れます。この段階でも神経を抜く必要はなく、削って詰め物をする治療が中心です。
この時点ではまだ神経治療を避けられる可能性があるため、早めの治療が鍵となります。

歯の神経を抜く段階

むし歯がC3まで進行すると、細菌が神経(歯髄)に到達し、激しい痛みや歯茎の腫れなどの症状が現れます。この段階では神経を除去する根管治療が必要となり、歯の内部を清掃と消毒してから詰め物や被せ物で補う処置が行われます。

そしてC4に至ると、むし歯は歯根にまでおよび、歯冠が崩壊してしまうこともあります。このような場合、歯の保存が困難となり、抜歯や補綴治療が検討されるケースが多くなります。

神経を抜かざるを得ないケース

神経を抜かざるを得ないケース

上記では段階別に解説しましたが、神経を抜かざるを得ないケースについて以下で解説します。

①神経までむし歯が到達して強い痛みがある

むし歯が象牙質を越えて神経にまで達すると、炎症が起こり、ズキズキとした強い痛みが現れることがあります。特に自発的な痛みが続く場合は、神経が深く侵されている可能性が高く、保存的な処置では対応が難しくなります。

このような状態を放置すると炎症が悪化し、日常生活にも大きな支障をきたす恐れがあります。そのため、痛みの原因を取り除き、歯を残すために神経を抜く治療が選択されるケースが多くなります。

②歯髄が壊死している

神経(歯髄)がすでに細菌に感染して壊死している場合、そのままにしておくと根の先に膿がたまり、根尖性歯周炎を引き起こす恐れがあります。なかでも、強い痛みや腫れが生じることもあり、放置すれば炎症が広がる危険性もあるため、早急な処置が必要です。

また、スポーツや事故などで歯に強い衝撃を受けた場合にも、神経が壊死することがあります。このようなケースでは、壊死した神経を取り除く根管治療が不可欠となります。

根管治療の流れ

根管治療の流れ

根管治療は、歯を抜かずに残すための大切な治療であり、以下のような流れで段階的に進められます。

①むし歯の除去と神経の取り除き(抜髄)
まず麻酔を行い、痛みを抑えた状態で治療を始めます。切削器具を使ってむし歯に侵された部分を丁寧に取り除き、次に手用器具を使用して歯の内部にある神経(歯髄)を除去します。この処置を抜髄(ばつずい)と呼びます。

②根の長さの測定と洗浄
神経を取り除いた後は、根管(歯の根の中の管)の長さを専用の測定機器で正確に測ります。根管の長さを正しく把握することは、後の治療精度に直結する重要な工程です。その後、薬液を用いて根管内を徹底的に洗浄し、細菌や感染組織を取り除きます。

③貼薬と仮封
洗浄後には、根管内に殺菌作用のある薬剤を入れ、仮のフタ(仮封)をして数日間おきます。この期間に炎症が落ち着くかどうかを確認しながら、必要に応じて何度か貼薬と洗浄を繰り返します。根管治療は1回で終わることは少なく、数回に分けて慎重に進められます。

④根管充填(根充)
根管内が清潔な状態であることが確認できたら、ガッタパーチャというゴム状の材料を用いて、根管内を隙間なく封鎖します。この根充によって、根のなかに細菌が再び侵入するのを防ぎます。きちんと充填ができているかどうかはレントゲンで確認されます。

⑤支台築造と被せ物の装着
根管治療が完了したら、削った歯を補強するために土台(支台築造)を作り、その上に被せ物(クラウン)を装着します。被せ物には銀歯、レジン、セラミックなどさまざまな種類があり、保険診療と自費診療によって選択肢が異なります。

このように、根管治療は複数の精密な工程を経て進められる治療であり、歯を長く使い続けるために欠かせない重要な方法です。

20代で根管治療を受けるリスク

20代で根管治療を受けるリスク

20代で根管治療を受けることには、将来にわたる歯の健康に影響を及ぼす可能性があります。治療を受ける際は、さまざまなリスクについても正しく理解しておくことが大切です。以下で解説します。

歯の神経を抜く際に痛みを感じることがある

神経を抜く処置では、麻酔をしていても治療中に鈍い痛みや違和感を感じることがあります。なかでも、リーマーという器具で根の中を掃除する際や、仮のフタをした後に痛みが出ることもあります。

また、最終的な薬剤の充填時にも圧迫感や痛みを感じることがあり、ほかの歯科治療よりも負担が大きくなる場合もあるため、慎重な判断が求められます。

歯が脆くなる

20代で根管治療を受けると、歯が脆くなるリスクがあります。神経とともに血管も除去されるため、歯に栄養が行き渡らなくなり、弾力性が失われます。その結果、硬さは保たれていても、わずかな衝撃でも歯が欠けたり割れたりしやすくなります。

また、根管治療では神経にアクセスするために大きく歯を削る必要があり、残された歯質が薄くなることで、噛む力が弱くなるというリスクもあります。

歯が変色する

神経を抜いた歯は、時間の経過とともに茶色や灰色に変色することがあります。これは歯の内部にある血管や神経が失われることで栄養供給が絶たれ、歯の透明感が失われるためです。

特に前歯で起こると目立ちやすく、見た目に影響することでコンプレックスを感じる方も少なくありません。変色への対応として被せ物をすすめられる場合もあり、審美性を重視するなら費用面での負担も考慮する必要があります。

感覚が鈍くなり異変に気付きづらくなる

歯の神経は痛みや温度変化を感じ取る重要な役割を果たしていますが、根管治療によって神経を取り除くと、そうした感覚が失われます。その結果、むし歯が再発しても痛みを感じにくくなり、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。

また、神経を抜いた歯には被せ物を装着することが多く、そのすき間に汚れがたまりやすくなることで再びむし歯が発生しやすくなるリスクもあります。違和感に気付きづらくなるため、定期的な検診がより重要とされています。 /p>

再治療や抜歯が必要になる可能性がある

神経を抜いた歯は、内部の神経や血管がなくなることで脆くなり、再治療の難易度も高くなります。治療後は見た目が回復していても、根のなかに細菌が再び侵入することで感染が再発し、強い痛みや歯茎の腫れ、膿がたまるといった症状が現れることがあります。

こうした場合には、再び根管治療を行う必要がありますが、治療済みの歯は内部構造が複雑になっていることも多く、治療が困難になるケースも少なくありません。

さらに、感染が根深く進行していたり、歯にひびが入っていたりすると、再治療では対処しきれず、抜歯を選択せざるを得ないこともあります。1本の歯を失うだけでも、噛み合わせや歯並びに影響を及ぼし、結果としてほかの歯に大きな負担がかかることにつながります。

その負担が積み重なると、連鎖的にほかの歯を失うリスクも高まってしまいます。そのため、神経を抜く治療には慎重な判断が求められ、治療後の定期的なメンテナンスが不可欠です。

神経を抜かない治療方法

神経を抜かない治療方法

歯の痛みが強いと「神経を抜くしかないのでは」と考えがちですが、近年ではできるだけ神経を残す治療方法も選べるようになっています。
ここでは最後に、神経を抜かない治療方法を以下で解説します。

直接覆髄

近年では、歯の神経をできるだけ残す歯髄温存療法が重視されており、特に20代の方にとっては将来の歯の健康を守るうえで重要な治療選択肢とされています。

なかでも直接覆髄(ちょくせつふくずい)は、むし歯や外傷によって神経が露出した際に、薬剤を直接歯髄に塗布して保存を図る治療法です。このとき使用されるMTAセメントは、封鎖性と生体親和性を兼ね備えており、神経への刺激を抑えながら、細菌の侵入を防ぐ働きが期待できます。

治療のタイミングや症例の見極めが重要ではありますが、しっかりとに行えば歯の寿命を延ばす大きな助けとなる治療法です。

間接覆髄

間接覆髄法は、むし歯が神経の近くまで進行しているものの、神経自体がまだ露出していない場合に行われる治療法です。むし歯をすべて取り除こうとすると神経が露出してしまうリスクがある場合に、あえて一部の象牙質を残し、その上から薬剤を充填して刺激を遮断し、神経を保護します。

使用される薬剤には殺菌作用や抗炎症作用があるものが用いられ、神経が炎症を起こすのを防ぎつつ、自然治癒を助ける働きが期待されます。

この方法は、神経を残したまま治療を終えられるため、歯の寿命を延ばすうえでとても有効とされています。20代などの若年層では、将来的な再治療のリスクを軽減する目的でも有意義な選択肢となります。

ただし、神経が露出していないことが前提となるため、むし歯の進行具合を正確に見極める診断力と、適切な処置のタイミングが治療の成功に大きく関わります。

まとめ

まとめ

ここまで20代で根管治療を受ける前に知っておくべきことについてお伝えしてきました。20代で根管治療を受ける前に知っておくべきことの要点をまとめると以下のとおりです。

  • 一般社団法人 日本歯内療法学会による調査では、20代でむし歯治療を受けた経験がある方は全体の65.6%程度にのぼり、そのうち歯の神経を除去する根管治療(歯髄除去)を受けた経験がある方は28.1%程度で、これは3〜4人に1人程度が該当する
  • 神経を抜く治療には、痛みや歯の脆弱化、変色、感覚の鈍化などさまざまなリスクが伴い、再感染や抜歯の可能性、将来的にほかの歯へも影響を及ぼすおそれがあるため、治療後の定期的なメンテナンスが重要
  • 神経を抜かずに歯を残す治療法として、直接覆髄と間接覆髄があるが、いずれも神経を保護することで歯の寿命を延ばす効果が期待され、特に将来の健康を考える20代にとって重要な選択肢といえる

20代で根管治療をすすめられた場合、不安や迷いを感じるのは自然なことです。実際、若い世代でも根管治療を受ける方は少なくなく、治療後には歯が脆くなったり、変色や再感染のリスクが伴うこともあります。

そのため、治療前にリスクや将来への影響を正しく理解することが大切です。近年では直接覆髄や間接覆髄といった、神経を抜かずに歯を保存する治療法も登場しており、可能な限り神経を温存する選択肢も検討されています。

これらの情報が少しでも20代で根管治療を受ける前に知っておくべきことについて知りたい方のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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