根管治療を受けた後、「歯が黒ずんできた」と感じる方もいるのではないでしょうか。これは、神経を失った歯で代謝が止まり、内部に残った物質が変色するためです。
本記事では根管治療後に歯が変色する原因について以下の点を中心にご紹介します。
- 根管治療とは
- 根管治療後に歯が変色する原因
- 根管治療によって変色した歯の治療法
根管治療後に歯が変色する原因について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
根管治療とは
- 根管治療とはどのような治療法ですか?
- 根管治療とは、歯の内部にある”歯髄”と呼ばれる組織が細菌感染した際に、その歯を保存するために行われる治療法です。
歯髄には神経や血管が含まれており、むし歯や外傷により細菌が侵入すると激しい痛みや腫れが生じます。そのまま放置すると歯を抜かざるを得ないケースも多いとされるため、早期の治療が重要です。治療では、まず感染した歯髄や膿を器具で除去し、歯の内部を洗浄・消毒します。その後、根管内に専用の詰め物を充填し、被せ物で補強して治療を完了します。
根管治療は、むし歯が神経に達した場合の「抜髄」や、再感染した場合の「感染根管治療」に分けられ、どちらも歯の保存に欠かせない手法です。
根管治療により、歯の機能を維持し、抜歯を回避できる可能性があります。
- 根管治療を受けた歯の寿命はどのくらいですか?
- 根管治療を受けた歯は健康な歯に比べて寿命が短くなる傾向があります。
寿命は治療後に残せた歯の量によって大きく異なります。
歯の大部分を残せた場合、適切な治療とメンテナンスを続ければ、20〜30年程度と長期間機能を維持できる可能性があります。
一方、歯のほとんどを削った場合、寿命は5年前後にとどまることが多いとされ、再発などのトラブルが起きやすい傾向があります。根管治療を受けた歯の平均的な寿命は約10年といわれていますが、メンテナンスの有無やセルフケアの状況により大きく左右されます。
歯を長持ちさせるためには、定期的な歯科医院でのチェックと適切なケアが不可欠です。
早期に異常を発見し対処することで、寿命を延ばすことができるとされています。
根管治療による歯の変色
- 根管治療で歯が変色してしまう原因を教えてください
- 根管治療後の歯が変色する原因は、歯の神経とともに血管が失われ、歯の内部での代謝機能が停止してしまうことにあります。
健康な歯の内部には神経と細かい血管が通っており、これらが血液の循環を通じて栄養を供給し、古い物質を代謝しています。しかし、神経を抜くことで血管も同時に失われるため、この代謝機能が失われます。代謝が行われない歯の内部では、血液成分や変色したコラーゲンが象牙細管に蓄積していきます。この蓄積が進むと、歯は時間とともに白色から褐色、茶褐色、さらには黒色に変色します。
変色は歯の内部から起こるため、歯磨きやセルフケア、さらには表面的なホワイトニングでも改善は難しいとされています。こうした背景から、歯科治療では可能な限り神経を保存する方針が取られることが多いとされています。
神経を抜いた場合でも適切な被せ物を行うことで、変色を遅らせることが可能になるといわれているため、治療後のケアやメンテナンスが重要です。歯の健康を保つためには、定期的な歯科検診と早期治療が欠かせません。
- 根管治療後どのくらいで歯が変色してしまいますか?
- 根管治療後の歯の変色は、治療から約2〜3年後に顕著になることが多いといわれています。
歯の神経を抜くことで、内部の血液循環が停止し、歯の代謝機能も失われます。この結果、血液成分や変性したコラーゲンが歯の内部に蓄積し、象牙細管に沈着します。これが原因で、もともと白かった歯が徐々に茶色や茶褐色、さらに黒色へと変色していきます。
なかでも、治療後に被せ物をせずに放置された歯では、変色が加速するケースがよく見られます。これは、歯が外部の刺激を受けやすくなり、内部の変性が進みやすいからです。この変色は歯の内部から生じるため、歯磨きやセルフケアで防ぐことはできません。
また、表面のホワイトニングを行っても、歯を白く戻すことは困難です。歯の変色を防ぐためには、根管治療後に早めに適切な被せ物をすることや、治療後も歯科医師の指導にしたがってメンテナンスを継続することが重要です。これにより、歯の審美性や機能をより長く保つことができるとされています。
根管治療を受けた後は、歯の健康を維持するために定期的な検診を怠らないようにしましょう。
根管治療によって変色した歯の治療法
- 根管治療で変色した歯はホワイトニングで改善できますか?
- 根管治療後に変色した歯は、通常のホワイトニングでは改善が難しいとされています。
ホワイトニングは歯の表面に作用するため、歯の内部から黒く変色した場合、その効果がほとんど得られません。変色の原因が神経や血液成分の残留物である場合、これらを取り除かなければ根本的な改善にはつながらないのです。変色した歯は、差し歯やセラミックで補う方法が選択されることが多いようです。しかし、自身の歯が多く残っている場合や歯を削ることに抵抗がある場合、ほかの方法で白さを取り戻す選択肢もあります。
例えば、歯の内側から漂白剤を使うウォーキングブリーチという方法があり、削らずに歯を白くすることができます。ただし、どの方法が合うかは歯の状態によります。
ホワイトニングを検討する場合でも、歯科医師に相談し、原因に合った治療法を選ぶことが重要です。根管治療後の変色はセルフケアでは防ぎきれないため、早めに専門的なケアを受けることをおすすめします。
- 根管治療後に変色した歯を白くする治療法を教えてください
- 根管治療後に変色した歯は、通常のホワイトニングでは改善が難しいとされています。
ホワイトニングは歯の表面に作用するため、歯の内部から黒く変色した場合には効果がほとんど得られません。変色の原因が神経組織や血液成分の残留物である場合、それらを取り除かない限り根本的な改善は困難です。こうした歯を白くする方法として、ウォーキングブリーチが挙げられます。
これは、歯の内側に漂白剤を直接入れて着色成分を分解する方法で、削る量が少なく自身の歯を残せる点が特徴です。1〜4回程度薬剤を交換し、納得のいく白さになったら終了します。
ただし、時間が経つと再び変色する場合があり、その際には再処置が可能とされています。一方、歯の残存部分が少ない場合や金属による変色が見られる場合は、セラミックやジルコニアの被せ物(クラウン)を装着する方法が選ばれます。この方法は歯を大きく削る必要がありますが、耐久性が高く、時間が経っても色が変わらない利点があります。
変色した歯の治療法は歯の状態により異なるため、まずは歯科医師に相談することをおすすめします。
適切な方法を選ぶことで、美しい歯を取り戻すことができるでしょう。
- ウォーキングブリーチのメリット・デメリットを教えてください
- ウォーキングブリーチは、歯を削らずに内部から変色を改善できる方法として関心が寄せられています。しかし、治療を選ぶ際にはメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。
【メリット】
ウォーキングブリーチは歯を削る量が少なく、天然歯を多く残せるのが大きな利点です。また、神経を失った歯に行うため、治療中に痛みを感じることはほとんどないといわれています。内部から漂白剤を作用させるため、表面的なホワイトニングでは改善できない深い変色も効果的に白くできるとされています。さらに、特定の歯のみを対象とするため、ほかの健康な歯に影響を与えません。被せ物に比べて費用も抑えられる点も魅力です。
【デメリット】
一方で、一度白くなっても時間とともに変色が戻る可能性があります。また、治療中に歯の内圧が高まり、痛みを感じる場合があります。
さらに、歯質が弱い場合や残存部分が少ない場合には適用できないことがあります。漂白剤の影響で歯が内部吸収を起こし、割れやすくなるリスクもあるとされています。
加えて、保険適用外のため、自費診療となります。治療法を選ぶ際は、これらのポイントをよく理解し、歯科医師と相談のうえで自身に合った方法を選ぶことが大切です。
編集部まとめ
根管治療後に歯が変色する原因についてお伝えしてきました。
要点をまとめると以下のとおりです。
- 根管治療とは、細菌感染した歯髄を除去し、歯を保存するための治療法であり、感染部分を除去し内部を消毒・充填して補強する。抜髄や感染根管治療に分類され、歯の機能を保ち抜歯を回避できる可能性がある
- 根管治療後の歯が変色する原因は、神経と血管が失われることで代謝が行われなくなり、歯の内部に血液成分やコラーゲンが蓄積することにある。その結果、歯は内部から変色し、通常の歯磨きやホワイトニングでは改善が困難になる
- 根管治療で変色した歯の治療法には、歯の内側に漂白剤を入れるウォーキングブリーチや、セラミック・ジルコニアの被せ物がある。歯の状態に合わせて適切な方法を選ぶことが重要である
根管治療後の歯の変色は避けられないケースもありますが、適切な治療法を選ぶことで改善ができます。自身の歯の状態に応じた対処法を歯科医師と相談しながら選びましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。