注目のトピック

根管治療

根管治療の何年後かに症状が再発することはある?治療後に起こりやすいトラブルや再発のリスクを解説

根管治療の何年後かに症状が再発することはある?治療後に起こりやすいトラブルや再発のリスクを解説

根管治療を受けてむし歯を治した何年後かに、また歯の痛みが再発してきてしまったら、また大変な治療を繰り返すのかと困ってしまいますよね。この記事はそもそもむし歯が再発する可能性があるのかどうかや、根管治療の後に起こりやすいトラブルなどについて解説していきますので、根管治療後の歯の痛みなどにお悩みの方は参考にしてみてください。

根管治療の基礎知識

根管治療の基礎知識

まずは根管治療とはどのような治療なのか、具体的な方法や成功率などについて解説します。

根管治療の内容

根管治療は、歯の根っこ部分にある神経や血管がとおる根管と呼ばれる場所に対する治療です。 むし歯は口腔内の細菌が作り出す酸によって歯が溶かされていく歯の病気です。初期段階においては痛みなどの自覚症状がありませんが、歯の内部にある歯髄と呼ばれる部分に到達すると、持続的な強い痛みが生じるようになります。これは歯髄にある歯の神経が酸によってダメージを受けて炎症が起こっているためで、むし歯がここまで進行してしまうと、痛みを抑えるために歯の神経を除去する必要があります。
根管治療は、歯の神経を除去して痛みを改善するのと同時に、歯の内部の細菌感染部位を除去してむし歯が再発しないようにするためのものです。 具体的な根管治療の内容としては下記のとおりです。

  • むし歯に感染している部分を削り、歯髄を露出させる
  • 歯髄を専用の器具で除去する
  • 根管内を処置しやすくするため、根管内部を広げる(根管拡大)
  • 根管内を徹底的に清掃して細菌を除去する
  • 根管内に薬剤を詰めて仮蓋をする
  • 一定期間後に細菌による炎症がないことを確認してしっかりと蓋をする

根管治療の後は、歯を土台として形を整え、被せ物の治療を行い、噛み合わせを回復させて治療が完了となります。

根管治療の成功率

根管治療は、歯科治療のなかでも難易度が高く、成功率が高くない治療であるといわれています。
具体的には、抜髄を行う根管治療成功率は85%ほどとされていて、残りはむし歯が再発してしまい、再治療または抜歯などの治療へ以降するという流れです。

症状の程度と予後の違い

根管治療に限りませんが、むし歯の治療は症状が進行するほど細菌の感染が広範囲になるため、予後に健康な歯を維持しにくくなります。
むし歯が歯髄に達して強い痛みが生じるようになってからすぐに治療を受ければ、感染がまだ広範囲に広がっていないため、歯を削る量が少なくすみ、丈夫な状態で残せる可能性が高まります。場合によっては、殺菌作用がある薬剤で殺菌を行い、神経を残して治療を行える可能性もあります。 一方で、痛みが出てもすぐに治療を受けず、むし歯の感染がより深い部分にまで広がってしまうと、広範囲を削らなくてはならないため、歯が脆くなりやすいといえます。歯が弱くなるため、強い力が加わると破折するなどのリスクも高まります。
さらにいえば、感染部位が広いということは細菌を除去しきることが難しくなるということであり、根管治療の成功率が低下するという影響もあります。

再根管治療は可能?

根管治療で歯の内部にある細菌を除去しきれなかったり、治療後に根管内に細菌が進入してしまうと、根管治療を行った歯の内部に細菌が再度増殖して炎症が再発します。その場合は再度根管内部を清掃し、薬剤を詰めてから蓋をするという処置を再度行いますが、これを再根管治療と呼びます。 再根管治療は、根管治療を終えた何年後かに必要となる場合もあります。そもそも根管治療はむし歯の症状を改善するものであり、むし歯にならない歯を作る治療ではありません。治療後に適切なケアを行わなければ、むし歯や根尖性歯周炎と呼ばれる根の先に膿が溜まる症状が発生し、再治療が必要となります。 歯が治療に耐えられる状態であれば、再根管治療を行うことは可能ですが、再根管治療は初回の治療よりもさらに難易度が高くなるとされ、成功率が56%程度まで低下するといわれています。
また、再根管治療を繰り返していくと、その度に歯の内部が削られて歯が脆くなっていきますので、最終的には再根管治療が行えなくなり、抜歯などの処置が必要となります。

根管治療が必要な疾患

根管治療が必要な疾患

根管治療が必要となるのは、下記のような疾患が生じているケースです。

歯髄炎

歯髄炎とは、歯の神経や血管がとおっている歯髄部分に生じる炎症のことです。むし歯の原因となる細菌が作り出す毒素や、細菌が歯髄に感染することで生じるほか、外傷などによって神経が傷つき、その影響で歯髄炎が生じることもあります。 なお、歯髄炎には抜髄をしなくてもまだ回復が可能な段階である可逆性歯髄炎と、歯髄を除去しなければ痛みが治まらない不可逆性歯髄炎という二つの種類があります。持続的な強い痛みが生じているような状態は不可逆性歯髄炎になってしまっている状態ですが、冷たいものをお口に含むとしみるような痛みがでるというような状態であればまだ可逆性歯髄炎の状態であるため、歯髄炎になっていても、早めに治療を受ければ神経を残して治療が行える可能性があります。

歯髄壊死

歯髄炎を放置していると、やがて歯髄の細胞が失活し、歯髄壊死の状態になります。
歯髄壊死になると、痛みを感じる神経が働かなくなっているため、むし歯による痛みを感じなくなります。しかし、それは神経の働きがなくなっただけであって細菌の感染が改善されたわけではないため、放置しているとさらに広範囲がむし歯によって溶かされてしまうこととなります。
つまり、歯の痛みがなくなったとしても、放置しておくと状況は悪化していく一方なので、なるべく早めに治療を受ける必要がある点では変わりません。 また、失活した歯髄の細胞は時間経過とともに腐敗し、歯髄壊疽とよばれる状態になります。歯髄壊疽になると、腐敗した細胞により強い口臭が生じるほか、歯髄の変色により歯の色が黄色や灰色に変色します。

根尖性歯周炎

根尖性歯周炎とは、歯の根っこの先端部分である根尖と呼ばれる場所の周囲に、膿が蓄積される状態のことです。
歯髄壊死や歯髄壊疽の状態をさらに放置していると、歯根から炎症が広がって膿が作られ、これが蓄積されて根尖性歯周炎を生じます。
歯髄壊死を放置しておいた場合だけではなく、根管治療が終わった歯にむし歯が再発し、その炎症が歯の根の先に広がっていった場合にも、根尖性歯周炎が生じます。 根尖性歯周炎によって歯の根っこ部分に膿が溜まると、歯茎が内部から圧迫されたり、顎の骨が溶かされるといった状態につながり、激しい痛みや腫れとなる場合があります。

根管治療に伴うリスク

根管治療に伴うリスク

根管治療は歯をなるべく抜歯せずに残す治療法として有用ですが、治療には下記のようなリスクも伴います。

歯に血液や栄養が届かなくなる

根管治療によって抜髄を行うと、歯の内部の神経だけではなく、歯の内部に血液を運ぶ血管も除去されます。これにより、歯の内部に血液や栄養が届かなくなるため、歯の内部にある細胞が失活し、歯が黄色や灰色に変色する可能性があります。

神経を除去するため痛みを感じなくなる

歯の痛みは、歯に伝わる刺激を神経が感じ取って脳に伝え、痛みとして現れます。そのため、根管治療で神経を除去してしまえば、歯は痛みを感じることができなくなります。
むし歯が痛くて悩んでいる方にとっては歯の痛みがなくなることはよいことと感じますが、痛みを感じないということは、むし歯が進行しても気が付かない可能性が高まるということでもあります。
根管治療を行った歯にむし歯が再発した場合、痛みといったの自覚症状が現れるのは根尖性歯周炎などの状態まで症状が悪化したタイミングであるため、治療が遅くなってしまう可能性が高くなります。

歯が脆くなりやすい

根管治療では、根管内部をしっかりと清掃するため、根管の内部を広げる根管拡大という処置を行います。また、歯の内部にあるむし歯の感染を除去するために歯を削る処置が行われるため、結果として歯の厚みが減少し、歯が脆くなってしまう可能性があります。
噛むという行為はとても強い負荷がかかる行為であるため、根管治療によって歯が脆くなると、歯が折れたり割れたりといった状態になるリスクが高まります。

根管治療後に症状が再発するケース

根管治療後に症状が再発するケース

根管治療を行った後に症状が再発する要因は、治療からどの程度時間が経過しているかによって異なります。

根管治療後に症状が再発する理由

根管治療の処置を受けた後すぐに症状が再発する場合、治療が十分に行えておらず、内部に細菌が残ってしまっていた可能性が考えられます。
特に、根管が1本の前歯よりも、根管が複数ある奥歯の治療で、根管治療が不十分で再発が生じるというリスクが高まります。

すぐに再発するケース

根管治療を受けてから数ヶ月など、短期間で症状が再発する場合は、被せ物の適合が悪いことなどが考えられます。
根管治療の後は被せ物をして細菌が治療部位に再感染することを防ぎますが、被せ物がしっかりと合っていなければ、細菌が進入して症状が再発する可能性が高くなります。
また、治療後にしっかりとメンテナンスが行えていないような場合も、再度むし歯に感染して症状が再発しやすいといえます。

何年後かに再発するケース

根管治療の何年後かに症状が再発するケースについては、根管充填材の劣化などが原因として考えられます。
根管治療では治療を行って空洞となった歯の内部に根管充填材を詰めて蓋をしますが、充填材や蓋は、時間経過とともに劣化する可能性があります。きちんと歯磨きやメンテナンスをしていたのに、何年後かに再発してしまうという場合は、こうしたパーツの劣化によって、内部に細菌が進入しやすくなったことが一つの要因として考えられます。

根管治療後に再発が疑われる場合の対応

根管治療後に再発が疑われる場合の対応

根管治療を行った歯が変色するなど、何かしら再発が疑われる場合は、速やかに歯科医院を受診しましょう。
歯の内部に発生している症状をセルフケアで改善することは難しく、なるべく早く治療を行うことが、良好な予後のために重要であるためです。

根管治療後に生じる再発以外のトラブル

根管治療後に生じる再発以外のトラブル

根管治療後には、むし歯の再発以外に下記のようなトラブルが生じることがあります。

歯の破損やひび割れ

根管治療は、根管拡大や感染部位を削る処置を行うため、歯が脆くなるというリスクがあります。歯が脆くなった状態で強く噛むような刺激が加わると、歯が破損したりひび割れたりしてしまい、歯肉を内部から傷つけてしまうといったリスクにもつながります。

隣接する歯のトラブル

根管治療を受けた歯は、神経がないため痛みを感じることがなく、むし歯が重度に進行してもなかなか気が付かない場合があります。
むし歯が重度に進行して広い範囲に感染が及ぶと、隣接する歯にもむし歯が広がる可能性が生じます。

根管治療後の再発を防ぐために

根管治療後の再発を防ぐために

根管治療を受けてからの再発を防ぐためには、以下のような点に注意しましょう。

しっかりと最後まで治療を受ける

根管治療は、細菌を除去しきるまで、しっかりと治療を受けることが大切です。
抜髄をして痛みがなくなることで、歯の治療が終わったと思うかもしれませんが、痛みがなくなることとむし歯の治療が完了することはイコールではありません。
自己判断で治療を終了するのではなく、歯科医師から治療の完了を伝えられるまで、きちんと治療を受けるようにしましょう。

ラバーダムを使用している歯科医院で治療を受ける

根管治療の成功率を高め、再発を防ぐためのポイントの一つが、ラバーダムという器具の使用です。
ラバーダムは根管治療中の歯に、細菌が含まれた唾液が進入しないようにするという働きを持つ器具です。
ラバーダムは保険適用の金額に含まれないため、歯科医院によって使用するかどうかがわかれますが、再発を防ぐためには、ラバーダムを使用して治療を行っているクリニックを選びましょう。

自費診療での治療を検討する

根管治療は保険適用で実施可能な治療ですが、保険適用の治療は、使用できる器具や装置、薬剤に制限があります。
自費診療であればこうした制限がないため、視野を数十倍に拡大できるマイクロスコープや、歯の状態を立体的に撮影できる歯科用CTなど、根管治療の成功率を高めるための対応が行いやすくなります。
特に、マイクロスコープを使用して行う根管治療は、細菌の感染を細かく除去可能でありながら、余計な部分を削らずに残しやすくなるため、再発予防として役立ちます。

治療後のケアを適切に行う

根管治療でむし歯を治しても、その後のケアが不十分であれば、再度むし歯に感染して、症状が再発してしまいます。
歯磨きを丁寧に行うほか、フロスや歯間ブラシを使用したケアや、マウスウォッシュなどを利用し、お口のなかを清潔に保つようにしましょう。

定期的に歯科検診を受ける

定期的な歯科検診の受診は、むし歯などのトラブルを早期発見、早期治療するために重要です。
また、歯科検診では歯の状態をチェックするだけではなく、歯科衛生士による歯の専門的なクリーニングを受けることができます。どれだけ丁寧に歯磨きを行っていても、少しずつ蓄積されたプラークがむし歯や歯周病の要因になる可能性がありますので、歯科医院でのケアで汚れを除去し、健康な状態を維持しましょう。

まとめ

まとめ

根管治療を受けてむし歯を治しても、不適切なケアや、治療に使用した素材の劣化などによって、何年後かに症状が再発してしまうというケースがあります。
こうした再発のリスクを抑えるためには、しっかり治療を最後まで受けてきちんとむし歯を治すことや、治療後にセルフケアや歯科検診といったケアを行うことが大切です。
また、再発を防ぐためには精度が高い治療を受けることも重要で、自費診療にはなりますが、マイクロスコープを使用した治療など、より歯に負担をかけず、かつ再発を防ぎやすい治療法もありますので、こうした治療法も含めて、経験豊富な歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP

電話コンシェルジュ専用番号

電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。

受付時間 平日:9時~18時
お電話でご案内できます!
0120-022-340