歯の感染を治療する一手段としてある根管治療ですが、どのようなリスクが伴うのか不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 本記事では根管治療のリスクについて以下の点を中心にご紹介します。
- 根管治療のリスク
- 再根管治療について
- 根管治療のリスクを減らすために
根管治療のリスクについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
根管治療のリスク
- 根管治療で考えられるリスクを教えてください。
- 根管治療にはいくつかのリスクが伴います。以下のポイントを考慮して、リスクを理解し、適切な対策を講じましょう。
- 歯を大きく削る必要性
根管治療では視野の確保が必要なため、通常のむし歯治療よりも歯を大きく削る必要があります。これにより、歯が薄くなり脆くなる可能性があります。 - 再発のリスク
根管治療後も完全に成功するとは限らず、再発する可能性があります。日本における成功率は約60%とされ、再発した場合は再治療が必要になります。再治療を繰り返すと、歯を再度削る必要があり、最終的に抜歯に至ることもあります。 - 神経除去による感覚喪失
神経を除去することで痛みを感じなくなるため、むし歯の再発に気付きにくくなります。このため、むし歯が進行してから発見されるリスクがあります。 - 治療の複雑性
歯根が湾曲していたり、根管の形態が複雑な場合、治療が難しくなることがあります。治療がうまくいかない場合、痛みや違和感が続くことがあります。 - 外科的処置の可能性
根管治療が成功しない場合、外科的処置や最終的に抜歯が必要になることがあります。
- 歯を大きく削る必要性
- 根管治療を行った歯は色が変わりますか?
- 変色は、治療中に歯髄(しずい)という歯の内部組織を取り除くため、歯を栄養していた血管がなくなり、歯のコラーゲンが変色してしまうために起こります。
主に前歯のような目立つ位置の歯に変色が現れた場合、見た目の印象にも影響が出てしまいます。
しかし、根管治療後の歯の変色は、適切なケアと治療で改善が可能といわれています。変色した歯を元の白さに戻す方法としては、まず歯の内部に漂白剤を注入し、内側から漂白する方法があります。加えて、オフィスホワイトニングやホームホワイトニングといった外部からのホワイトニング治療と併用すると、自然で均一な白さを実現できます。
- 根管治療では治療後も痛みがでますか?
- 根管治療後に痛みが続くかどうかは、多くの患者さんが気にするポイントです。治療直後に痛みが消えるとは限らず、数日間ズキズキとした痛みが続くことがあります。
鎮痛剤を使用することで痛みを和らげることができますが、不安がある場合は早めに歯科医院に連絡することをおすすめします。
また、治療後に歯肉に膿が溜まって腫れや痛み、不快感を感じることがあり、感染した歯の内部を十分に洗浄できていない可能性があります。膿が出てくると、臭いや不快感を伴うこともあります。症状が現れた場合、放置せずに再治療を受ける必要があります。
根管治療は複雑な処置であり、治療後に痛みが続くことは珍しくありません。痛みや不快感が続く場合は、自己判断で放置せず、専門の医師に相談してください。再治療が必要な場合もありますので、早めの対応が望まれます。
- 根管治療を行うと歯が脆くなるのですか?
- 根管治療は、感染した歯髄を取り除き、歯の内部を清掃するための治療です。この過程で、歯質が削られてしまうため、治療後の歯は以前よりも脆くなることがあります。
歯髄には神経や血管が通っており、歯に栄養を供給していますが、根管治療により歯髄が除去されると、供給がなくなり、歯の強度が低下し、割れやすくなるのです。
治療後の歯が割れてしまうと、痛みが生じることがあります。また、割れた歯は細菌が侵入しやすくなり、感染のリスクが高まります。このような場合、残念ながら抜歯が必要になることが多いとされています。
- 根管治療を中断したときに考えられるリスクはありますか?
- 根管治療を中断すると、以下のリスクが考えられます。
- むし歯の悪化
根管治療は複数回に分けて行うことが多く、神経を除去した後でも治療は完了していません。途中で中断すると、歯の内部に細菌が残り、仮蓋の隙間から細菌が再侵入し、むし歯が悪化します。これにより、歯茎や顎骨に感染が広がる可能性もあります。 - 抜歯リスクの増加
神経を取り除いた歯は栄養供給がなくなり、脆くなります。治療を中断すると、歯が割れたり折れたりするリスクが高まり、最終的には抜歯が必要になることがあります。 - 再治療の必要性
仮蓋が取れたり、隙間から細菌が侵入すると、再び細菌が繁殖し、再度根管治療が必要になります。これにより治療期間が長引き、症状が重症化する可能性が高くなります。 - 痛みの再発
痛みを抑えるために行った処置を中断すると、痛みが再発し、激しく痛むことがあります。 - 仮蓋の機能低下
仮蓋や仮詰めは長期的な耐久性がなく、長期間放置すると取れてしまうことがあります。これにより、再び症状が現れるリスクが高まります。 - かぶせ物の不適合
治療を中断すると、歯型を取って作成したかぶせ物が合わなくなることがあります。
- むし歯の悪化
再根管治療について
- 根管治療の成功率はどのくらいですか?
- 根管治療の成功率は、術前の歯の状態や治療方法に大きく影響されます。例えば、健康な歯髄や歯髄炎の状態では、成功率は高く、約96%に達します。
しかし、根尖病変がある場合、成功率は86%に低下し、再根管治療を必要とする場合はさらに成功率が低くなり、62%程度となることがわかっています。
東京医科歯科大学のデータによると、日本における根管治療の成功率は30〜50%とされています。この違いは、使用する器具や薬剤、そして保険診療か自費診療かによる制約に起因します。保険診療では使用できる器具や薬剤に制限があり、成功率が自費診療に比べて低くなる傾向があります。
根管治療の成功には、高度な技術と徹底した無菌的処置が必要です。歯の内部をきれいに消毒し、細菌を除去することが求められますが、治療後も細菌が残って再発することがあります。そのため、患者さんには、治療後の定期的な検診とケアが重要です。
- 再根管治療はどのような場合に行われますか?
- 再根管治療は、初回の根管治療後に再び問題が発生した場合に行われます。
具体的には、根の先に膿が溜まったり、歯が再感染した場合が該当します。膿が溜まると圧力で痛みが生じ、根尖部に膿が溜まる原因は細菌感染です。
再感染は、治療後にコア築造やクラウン装着時の唾液混入や、前回の治療で細菌が完全に取り除かれていないことが原因です。根尖病巣が見られた場合も再根管治療が必要です。
- 再根管治療の治療回数について教えてください。
- 再根管治療の治療回数は、2〜4回程度といわれています。初回の治療よりも手間がかかるため、治療期間も長くなりがちです。
具体的には、すでに装着されている詰め物や被せ物を取り除く作業が必要です。また、根管内のガッタパーチャという材料を取り除く工程も含まれます。
さらに、感染が進行していたり、膿や出血が見られる場合は、治療がさらに複雑になり、回数が増えることがあります。再治療が長引くと、治療費や時間、精神的、肉体的な負担も増加します。そのため、不必要な再治療を避けるためにも、初回の治療をしっかりと行うことが重要です。
根管治療のリスクを減らすために
- リスクを減らすためにできるセルフケアはありますか?
- 根管治療のリスクを減らすためには、以下のセルフケアが重要です。
- 信頼できる歯科医院の選択
治療前に医師としっかり話し合い、不安や疑問を解消しましょう。 - 口内の衛生状態を保つ
毎日の歯磨きやデンタルフロスを欠かさず行い、口内の清潔を保ちましょう。 - 治療中の指示に従う
歯科医師の指示に従い、リラックスして治療を受けることが大切です。 - 丁寧なセルフケアの実施
歯と歯の間の汚れを取り除くために、デンタルフロスや歯間ブラシを使用しましょう。 歯茎の境目は汚れが残りやすいので、歯ブラシを斜め45度に当てて細かく動かして磨きます。
セルフケアを徹底と、根管治療のリスクを減らし、健康な歯を保てます。患者さん自身の努力も、治療の成功に寄与するのです。
- 信頼できる歯科医院の選択
- リスクを減らすためのクリニック選びのコツはありますか?
- 根管治療のリスクを減らすためには、以下のポイントに注意してクリニックを選びましょう。
- しっかりとした検査と診断
レントゲンやCBCTを用いた詳細な検査を行っているクリニックを選びましょう。正確な診断と治療計画が立てられます。 - 専門的な知識とスキル
根管治療の専門医が在籍しているクリニックは、再発リスクを低減できます。専門の医師の経験と知識が治療の質を左右するといわれています。 - 先進的な設備
マイクロスコープやラバーダムなどの先進的な設備を使用しているクリニックを選びましょう。治療の精度が向上し、感染リスクを減らせるとされています。
- しっかりとした検査と診断
編集部まとめ
ここまで根管治療のリスクについてお伝えしてきました。根管治療のリスクの要点をまとめると以下のとおりです。
- 根管治療のリスクとして、歯を大きく削る必要があり、再発のリスクや神経除去による感覚喪失、治療の複雑性、外科的処置の必要性がある
- 再根管治療は初回治療後に再発した場合に行われ、治療回数は2~4回、信頼できる歯科医院での適切なケアが重要である
- 根管治療のリスクを減らすためには、信頼できる歯科医院の選択と口内の衛生管理、医師の指示に従うことが重要である
これらの情報を皆さまの口腔健康の維持に役立てていただけますと幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。