根管治療中の歯磨きは感染リスクを減らすためにも重要ですが、うまくできているか不安になる方も多いのではないでしょうか。
根管治療は1回で終わらず、仮の詰め物と蓋をすることも少なくありません。そのため、力を入れて歯みがきを行うと、詰め物が取れたり、隙間から雑菌が入ってしまったりする可能性があります。
本記事では根管治療中の歯磨きについて以下の点を中心にご紹介します。
- 根管治療の治療回数、治療期間の目安
- 根管治療の回数、期間が長くなる理由
- 根管治療の回数、期間を短くしたい場合
根管治療中の歯磨きについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
根管治療について
- 根管治療の流れを教えてください
- 根管治療は、細菌感染や痛みの原因となる歯髄(歯の神経)の除去を主な目的とし、神経が入っていた根管内を洗浄、消毒する治療です。むし歯などによる抜歯を避け、歯の保存を目指します。
根管治療のプロセスは以下のとおりです。
- 検査と診断:レントゲン検査(主にパノラマ撮影、デンタル撮影、CT撮影の3つ)やマイクロスコープで歯の詳細な状態を把握します。
必要に応じて温度診断や歯髄電気診断などを行い、神経が生きているか死んでいるかを判別します - 抜髄(ばつずい):むし歯や被せ物、詰め物を除去し、感染した歯髄(歯の内部の神経)を取り除きます
- 根管拡大・形成:根管(歯の神経が入っている部分)の内部が菌に侵されているので、細い器具で掃除します。その際、根管という管の幅も同時に広げていきます
- 根管の清掃・消毒:3の器具で除去し切れない細菌や残留物を、薬剤で溶かし、消毒します
- 仮詰め(仮蓋):消毒した根管内に菌が入らないよう、仮詰め(仮蓋)をします
- 根管充填:2~5を繰り返し、根管がきれいになったら根管内に歯科用のセメントを流し込み、空洞を埋めます
- 根管の密封・土台の設置:詰め物の上に土台を作り、被せ物を外れにくくします。根管内への細菌の侵入を防ぎ、歯を補強します
- 被せ物の装着:最後に、被せ物(人工の歯、クラウン)を被せて治療が完了します。歯科医院によっては仮歯が使われることもあります
根管治療は、各ステップで慎重かつ精密な作業が求められます。
- 検査と診断:レントゲン検査(主にパノラマ撮影、デンタル撮影、CT撮影の3つ)やマイクロスコープで歯の詳細な状態を把握します。
- 根管治療は何回くらいかかりますか?
- 根管治療にかかる回数は、むし歯の進行度や根管の形状、根管治療が必要な歯の本数によって異なります。
必要な治療回数の目安は、抜髄から被せ物まで、トータルで以下の回数が必要になる見込みです。- 前歯:約5~6回
- 奥歯:約7~8回
抜髄から仮蓋まで、前歯では約2~3回、奥歯では約3~4回必要です。
さらに、土台形成、型取り、被せ物の工程があるため、プラス3回程必要になります。根管形状が複雑であったり、感染が深刻である場合は、これより多くの治療回数が必要になることがあります。
逆に、むし歯が重症化していても根尖周囲組織が正常だと認められる場合は、1回の通院で根管治療が終わることもあります。(後日、被せ物をするための通院は必要です。)1週間に1度の通院とした場合、治療完了までの期間は約1~2ヵ月、トータルの通院回数は約4~6回かかる場合が多いようです。
明確な治療期間を知りたい場合は、担当の歯科医師に相談してみましょう。重要なのは、根管治療の際に再感染を防ぐことです。感染対策が不十分だと再治療が必要になり、治療回数が増える可能性があります。
そのため、患者さん自身も歯磨き方法などに注意を払う必要があります。
根管治療中の歯磨き
- 根管治療中の歯磨きで痛みが出ることはありますか?
- 根管治療中は、歯の神経が刺激されることで、食事や歯磨きの際にズキズキとした痛みやジーンとする感覚が生じることがあります。神経が過敏になっているため、特に熱いものや冷たいものに反応しやすくなっています。
歯磨きをする際には、やわらかい歯ブラシを使用し、ぬるま湯でゆっくりと磨くことが推奨されます。
痛みが強い場合は、痛みを和らげるためにも一時的に対象の部分を避けて磨くか、早目に歯科医院で相談しましょう。
- 根管治療で仮詰めしているときの歯磨き方法を教えてください
- 根管治療中に仮詰め(仮蓋)をしている場合、強い力を加えると仮詰めが外れる可能性があるため、歯磨きは慎重に行う必要があります。仮詰め部分は優しく磨くことを心がけ、強く歯ブラシを押し付けないようにしてください。
歯間ブラシやデンタルフロスを使用する際は、仮詰めが外れないように注意が必要です。 仮詰めの形によっては、歯間ブラシやデンタルフロスそのものが入らないこともあります。 歯間ブラシやデンタルフロスが通らない、または通しにくいときは、無理に通さず、可能な範囲で磨くようにしましょう。
- 根管治療中の歯磨きのコツを教えてください
- 根管治療中の歯磨きは、繊細に行いましょう。
使用する歯ブラシは、毛先が細かくやわらかいタイプを選び、歯磨きの圧力は可能な限りかけないようにしましょう。
仮詰めの部分は特に、1本ずつ丁寧に磨き、力を入れすぎないように注意してください。 また、食べ物の残りやすい部分は、歯間ブラシやデンタルフロスの使用がおすすめですが、その場合も優しく清掃することが求められます。
根管治療中に注意すること
- 治療中のところに食べかすが詰まったときの対処法はありますか?
- 食べかすがしっかりと取れない場合や、治療中の歯に痛みがある場合は、無理をせず速やかに歯科医院に相談することが大切です。
根管治療中の歯を保護しながら清潔に保つためには、食事の後はお口をすすぐことを心がけましょう。
また、歯間ブラシやデンタルフロスを使用する場合は、優しく慎重に食べカスを取り除きましょう。
- 歯磨きのときのうがいで気を付ける点はありますか?
- 歯磨きの後のうがいは、少ないお水で優しく行ってください。強くうがいをすると、仮詰めが外れてしまう恐れがあります。
また、殺菌効果の期待できるうがい薬やマウスウォッシュの使用もおすすめですが、その際も優しく行い、刺激の強いものは避けるようにしましょう。
- 根管治療中の食事で気をつけることはありますか?
- 根管治療中は神経が過敏になっているため、食事も熱い物や冷たい物、刺激物や硬い食べ物を避けるようにしましょう。
また、仮詰めをしている間は、お餅やキャラメル、ガムといった粘着性のある食べ物や、せんべいや飴などの硬い食べ物も避けるようにしましょう。仮詰めが取れたり、破損する可能性があります。
特に仮詰めをした直後は取れやすい状態なので、30分は食事を控えるようにしてください。
編集部まとめ
ここまで根管治療中の歯磨きについてお伝えしてきました。 根管治療中の歯磨きについて、要点をまとめると以下のとおりです。
- 根管治療は、細菌感染や痛みの原因となる歯の神経の除去を主な目的とし、神経が入っていた根管内を洗浄、消毒する治療。むし歯などによる抜歯を避け、歯の保存を目指す
- 根管治療中の歯磨きは、やわらかい歯ブラシを使い、治療部分を優しく磨くことが大切。特に仮詰めをしている間は、デンタルフロスや歯間ブラシの使用に注意する
- 根管治療中は、治療部分への刺激を避けるため、熱いものや冷たいもの、粘性のあるものや硬い食べ物の摂取を控えることが重要。また、食べかすは無理に取ろうとせず、痛みや腫れがあれば歯科医院へ早目の相談が大切
根管治療中、とりわけ仮詰めがされている間は普段の歯磨きよりも慎重さと丁寧さが求められます。食事にも気を配り、治療結果につながるようにしましょう。
これらの情報が少しでも、根管治療中の歯磨きに対する不安や懸念点の払拭に貢献できれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。