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根管治療

根管治療が必要なむし歯の症状とは?治療の種類や放置するリスクも解説!

根管治療が必要なむし歯の症状とは?治療の種類や放置するリスクも解説!

根管治療に対しては「痛い」「長い」「治らない」など、ネガティブな印象を持っている人も多いのではないでしょうか。 本記事では、根管治療が必要となるむし歯の症状や治療の種類、何もせずに放置するリスクを詳しく解説します。

根管治療について

根管治療について まずは根管治療について確認しましょう。

根管治療とは

歯の根の中のむし歯菌や汚染された組織を一掃するのが根管治療です。進行したむし歯で必要となる治療で、成功すれば歯を残すことが可能となります。

根管治療の流れ

根管治療は、細菌に汚染された神経を抜き取り、根管内を専用の器具と消毒薬で清掃します。根管が無菌化されたら樹脂製の材料を充填して、再感染を防ぎます。最後に土台に被せ物を装着すれば、歯の機能や審美性まで回復することが可能となります。

むし歯の進行度別の症状

むし歯の進行度別の症状 次に、むし歯の進行について確認しましょう。むし歯は進行度によって症状が大きく異なります。その中で一定のラインを越えると、根管治療が必要となります。

軽度のむし歯の症状

むし歯の進行度は、CO〜C4までの4段階に大きく分けられます。そのうちのCOからC2までは、比較的軽度のむし歯といえるでしょう。それぞれのむし歯の進行度では、次のような症状が見られます。

CO:初期のむし歯
CO(シーオー)はCaries Observationの略称で、日本語では要観察歯(ようかんさつし)といい、学校検診の際に結果として評価することが多いです。歯の表面に穴は開いておらず、白いシミが認められるだけなので、積極的な切削および修復治療は不要となっています。ただし、白いシミは表層下脱灰(ひょうそうかだっかい)という、歯の内部の歯質が解けている現象を意味するため、放置するのは良くありません。歯科医院でフッ素塗布を受けて、歯の内部の脱灰がそれ以上進まないように処置する必要があります。適切なブラッシング法を身に付けて、細菌の温床となる歯垢や歯石をため込まないことも必須といえます。

C1:エナメル質のむし歯
要観察歯を放っておくと、やがては歯の表面に小さな穴が開きます。その状態をC1といいます。むし歯によって生じた穴がまだエナメル質の範囲内に収まっていることから、痛みを感じることはまずありません。穴の中に食べかすや歯垢がたまると、脱灰が促進されるため、口腔ケアには十分な配慮が必要です。切削による修復治療を施す他に、フッ素塗布で経過観察する場合があります。

C2:象牙質のむし歯
エナメル質のむし歯が進行すると、象牙質にまで穴が広がります。それがC2と呼ばれるむし歯の段階です。象牙質のすぐ下には歯髄が存在していることから、むし歯がC2まで進むと冷たいものがしみやすくなります。なお、慢性潰瘍性歯髄炎など、自発痛がなく進行してしまっている場合もあり、特に若年者では起こりやすいとされています。ただし、むし歯の穴がまだそれほど深くない状態であれば、C1と同じように治すことができますし、根管治療は不要です。むし歯に侵されている歯質を取り除いて、詰め物や被せ物を装着すれば治療も完了します。

重度のむし歯の症状

C3~C4は、重度のむし歯に分類されます。

C3:歯の神経にまで達したむし歯
象牙質のむし歯が進行すると、歯髄腔(しずいくう)と呼ばれる空洞に到達します。そこには歯の神経と血管で構成される歯髄が存在しているため、むし歯の症状も深刻な局面へと移行していきます。歯髄はやわらかい組織で、細菌への抵抗力も弱いことから、あっという間に歯髄炎という症状が現れることでしょう。何もしていないのに歯がズキズキと痛むあの症状です。 歯髄は、歯髄腔に分布する冠部歯髄と根管に分布する根部歯髄の2つに分けられますが、冠部歯髄が感染した時点で、根部歯髄を保存することは困難となる点に注意が必要です。つまり、むし歯がC3に移行した段階で、根管内まで細菌による汚染が広がってしまっているのです。

C4:歯冠が崩壊したむし歯
むし歯菌の酸によって歯冠が崩壊し、歯の神経が死んで歯根のみになった状態がC4です。見た目の通り残根状態(ざんこんじょうたい)と呼ばれることもある段階で、むし歯の末期といっても間違いではないでしょう。残根状態では歯の痛みを感じることはありませんが、細菌は依然として活動を続けているため、膿の排出や歯茎の腫れなどは見られます。そのまま放置していると、歯の根の先に膿の塊ができる根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)に発展することも珍しくありません。C4の段階に達した歯に対しては、抜歯を行う必要があります。

根管治療が必要なむし歯の症状

ここまでは、軽度から重度のむし歯をCO・C1・C2・C3・C4に分けて解説してきましたが、根管治療が必要となるのは、C3の段階です。具体的には、以下に挙げる症状で根管治療が必要となります。

・急性歯髄炎(きゅうせいしずいえん)
急性歯髄炎は、C3で見られるむし歯の症状です。歯の神経にむし歯菌が感染して、急性の炎症反応を引き起こします。歯がズキズキと痛むあの症状が急性歯髄炎で、抜髄および根管治療が必須となります。

・歯髄壊死(しずいえし)
歯髄壊死は、文字通り歯髄が死んだ状態です。C3〜C4の歯髄炎の症状が進んだり、外傷などで歯をぶつけてしまったりすることで引き起こされます。専門的には失活(しっかつ)と呼ばれる状態で、痛みを感じることはなくなります。それならば放置していても問題なさそうではありますが、壊死した歯髄組織はコラーゲンを始めとしたタンパク質で構成されているため、放置していると腐敗が進みます。その過程で、腐敗菌も繁殖することから、早急に根管治療を行った方が良いといえるでしょう。ちなみに、腐敗菌の活動によって神経が腐ることを歯髄壊疽(しずいえそ)と呼びます。

・根尖性歯周炎
根尖性歯周炎は、歯の根の先に細菌感染と炎症反応が起こる病気です。膿の排出や歯茎の腫れ、噛んだ時の痛みなどを生じさせます。根尖性歯周炎の感染源はあくまで根管内にあることから、根管治療を行わなければ症状の改善は望めません。ただし、根管の数や分岐の状態などによっては、通常の根管治療が奏功しないことから、歯の根の先である根尖部ごと外科的に切除する方法が必要となる場合もあります。根尖性歯周炎を放置していて、歯根肉芽腫(しこんにくげしゅ)や歯根嚢胞といったより深刻な病巣へと進展した場合も外科的な摘出が必須となってくるため、十分な注意が必要です。

根管治療の種類

根管治療の種類 根管治療の種類は、次の4つに大きく分けられます。

抜髄

初めての根管治療では、必ず必要となる処置です。根管の中には、歯髄と呼ばれる組織が分布しており、知覚や栄養の供給などを担っています。むし歯由来の歯髄炎では、歯髄が細菌に感染していることから、抜髄という方法で抜き取らなければならないのです。

抜髄の手順は、最初に局所麻酔を施して、歯の神経を麻痺させます。そのうえでファイルと呼ばれる器具を使って、感染した歯髄を除去して根管内を清掃します。

感染根管治療

感染根管治療は、根尖性歯周炎や歯髄壊死などが起きている歯に対して行う処置です。歯髄を取り除いた後の根管内をファイルやリーマー、根管治療用の超音波スケーラーであるエンドチップなどを用いて清掃します。根管歯、1本の歯に複数あるだけではなく、細くて暗く、複雑に入り組んでいることから、根管の拡大・形成・消毒には手間と時間がかかります。

前歯のようなシンプルな構造で、根管の数も少ない歯種の場合は、2~3回で処置が完了しますが、根管の数が3~4本ある大臼歯の場合は、4~5回の処置がかかるのが一般的です。ちなみに、この回数は感染した根管内を清掃して、充填するまでにかかる期間です。土台や被せ物の治療は別途、通院が必要となる点にご注意ください。

再根管治療

再根管治療とは、文字通り根管への再治療を行うことを意味します。過去に根管治療を行って、歯茎の腫れや膿の排出などが認められたり、患歯に痛みなどが生じたりした際に必要となります。

再根管治療は、初めての根管治療よりも難易度が高くなる点に注意が必要です。なぜなら根管内の形成と拡大がもうすでに済んでおり、歯根の歯質が薄く、脆くなっているからです。しかも装着済みの被せ物や土台、根管内に充填されているガッタパーチャを取り除くことから始めなければならないため、歯にかかる負担も自ずと大きくなるのです。

そんな再根管治療が必要となるケースとしては、根尖孔外感染や歯根破折、病変の取り残し、治療後の再感染(コロナルリーケージ)などが挙げられます。ケースによっては、再根管治療ではなく、下段で説明する外科的歯内療法(げかてきしないりょうほう)が必要となる場合もあります。

外科的歯内療法

歯内療法とは、病変が歯の内部に存在している場合に適応されるもので、抜髄や感染根管治療などの総称といえます。それを外科的な方法で行うのが外科的歯内療法です。とても複雑でわかりにくいかと思いますので、最もポピュラーな歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)を例に挙げて、もう少し詳しく解説しましょう。

・歯根端切除術とは?
重傷化したむし歯でよく見られる症状に、根尖性歯周炎というものがあります。歯の根の先に膿の塊ができる病気で、感染源は根管内にあることから、根管治療を適切に行うことで根尖部の病巣も消失します。けれども、根管が複雑に彎曲していたり、側枝やイスムスといったイレギュラーな構造が存在していたりしていると、通常の根管治療を行っても無菌化を達成することは困難です。そうした難症例に適応されるのが歯根端切除術です。

歯茎をメスで切開して、歯の根っこの先と病巣とを一塊で外科的に切除します。患部周囲の汚染組織も丁寧に取り除いた後、根尖の方向から根管充填を行うことで無菌化を達成することが可能となるのです。かなり乱暴な治療に思えるかもしれませんが、難治性の症例には有効です。

根管治療をせずにむし歯を放置するリスク

根管治療をせずにむし歯を放置するリスク 根管治療が必要な歯を何もせずに放置していると、次のようなリスクが生じます。

抜歯の可能性が高まる

むし歯は、自然に治ることのない病気です。通常のむし歯も放置することでエナメル質と象牙質がどんどん溶かされていきますが、それは根管内も同じです。歯冠が崩壊し、根管内もボロボロになった歯は治療によって保存することが難しくなります。その結果、抜歯の可能性が高まるのです。

治療に手間や時間が必要になる

根管治療を始める時期が遅れるほど、治療に手間や時間がかかるようになります。それは患者さんの心身および経済面にまで大きな負担をかけることになるでしょう。

歯の周りに悪影響を及ぼす

根管内の病巣は、根の先や顎骨、上顎洞(じょうがくどう)といった歯の周りの組織にまで広がることがあります。具体的には、根尖性歯周炎や顎骨骨髄炎、上顎洞炎などの病気を誘発するリスクを伴うため、根管内のむし歯を放置するのは良くありません。

血管の病気を引き起こす可能性がある

根管やその周囲で異常繁殖したむし歯菌は、その一部が血管内に入り込むことで、動脈硬化や敗血症、感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)といった病気を引き起こす可能性があります。むし歯は歯が溶けていく病気ですが、感染症の一種であることも忘れてはいけないのです。 ケースによっては、むし歯菌が原因で脳梗塞、心筋梗塞を発症することもあります。これはむし歯菌の病原性そのものが原因というよりは、細菌が血管壁に張り付いてプラークを形成し、その一部が剥がれて血栓を形成することが引き金となります。血栓が細い血管を詰まらせると、脳梗塞や心筋梗塞を発症します。ただし、こうした血管が詰まる合併症は、どちらかというとむし歯菌よりも歯周病菌の方が起こりやすいといえるでしょう。

まとめ

まとめ 歯の一部だけでなく根管全体に虫歯を原因とした細菌感染が及ぶと、根管治療が必要になります。もし適切な治療を行わず放置してしまうと、細菌は根管からさらに深いところに進み、顎の中の方や上顎洞と呼ばれる部分にまで広がるようになり、より重篤な全身の感染症を生じるリスクとなります。虫歯は口の中の細菌による感染症と考えられています。他の全身の病気と同じように早期発見と早期治療が必要です。気になることがありましたら、早めにかかりつけの歯科医師にご相談ください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

若菜 康弘医師(若菜歯科医院院長)

鶴見大学歯学部大学院卒業 / 現在は若菜歯科医院の院長

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