むし歯を処置せず放置していると、歯の根管にまでむし歯菌が進行し、根管治療が必要となるケースがあります。
根管治療は治療法が複雑ですが、近年ではレーザーを使用した治療法が増えてきています。どんな治療法なのか気になる方もいるのではないでしょうか。
レーザーを使用した根管治療の効果や、ほかの治療法も深堀りしていくので、ぜひ参考にしてください。
根管治療でのレーザー治療で得られる効果
- 根管治療とはどのような治療ですか?
- むし歯や歯周病は、日頃の歯磨きや定期的な歯科医院への健診によって防がなければなりません。むし歯が進行すると、歯の神経まで痛めてしまうこともあります。
そうした際に、歯の神経の治療を行うことを根管治療といいます。
そもそも根管とは、歯の神経や血管が含まれた歯髄という組織の根元にあたる、管のことです。むし歯が進行していき、エナメル層や象牙質を侵食して歯髄に達することは、痛いうえに神経を腐らせる原因となるほど怖いものです。
神経は歯に栄養を与える役割があり、神経が壊死するということは、歯への栄養補給が行われなくなることを指します。歯は黒く変色して硬さも失われ、熱い・冷たいの感覚がわからなくなり、痛みまでも感じられなくなります。いわゆる、「むし歯を放置していたら痛みを感じなくなった」状態です。
一度壊死した神経は二度と元には戻らないため、抜歯をするほかなくなります。そうならないために、歯髄を完全に除去(「神経を抜く」ともいわれます)し、むし歯に侵された根管を治療する必要があるのです。
また根管は歯の位置によって数が変わり、前歯は1〜2本のことが多く、奥歯は3〜4本あります。さらに根っこの数が1本でも、根管はその中に2本以上あるという場合もあります。根管は個人差があるうえ、非常に複雑な形状をしており、治療にはかなりの注意を要するといえるでしょう。
根管治療の基本は、抜歯をせずに、根管内を可能な限りきれいにすることです。根管治療には以下の種類があります。- 抜髄(歯髄炎になった歯髄を除去する治療)
- 感染根管治療(抜髄した歯に再び菌が感染した際に、壊死した歯髄を除去し周りの汚れた歯根をきれいにする治療)
- レーザーを使って根管治療を行うことができるのですか?
- レーザーによる根管治療も可能です。
レーザーを使用するのは、基本的に神経が壊死しているタイミングであり、そのため痛みを感じることは少ないです。年齢制限もなく、小さい子どもや妊婦さんでも受けることができます。
基本的にレーザー治療は、レーザーによる熱で患部を治療します。赤外線領域の波長を照射するだけなので痛みを感じることは少なく、また発がん性もほとんどないため妊婦さんでも安心して治療を受けることが可能です。化学物質などを使用することもないため、アレルギーの有無も無関係であり体にも安全であることがわかっています。
レーザーという特徴から、痛む患部に直接照射することができるため、歯を削るのを極力少なくできる部分もメリットといえるでしょう。
歯の治療の場合、機器によるキーンという機械音が苦手という方も多いため、そのような方にとっても嬉しい治療法でしょう。なお、レーザーは高密度な熱を照射します。火傷のような状態を起こすため、誤って目に当たると角膜や水晶体を傷つける恐れがあります。そのため日本では、歯科用レーザーは免許を持った歯科医師でなければ扱うことができません。
- レーザーによる根管治療で得られる効果について教えてください。
- むし歯が神経に到達していると、その痛みによって耐えがたいほどの苦痛に悩まされます。その痛みを和らげることができるので、神経まで達するむし歯の治療に欠かせない治療法といえるでしょう。
患部に対してピンポイントで光を当てられるため健康な部位への影響が少ないこと、治療後の回復が早いことがメリットとしてあげられます。
- ナメタメソッドについて教えてください。
- ナメタメソッドとは、被せ物を取らずに治療ができる、NdYAGレーザーを用いた画期的な根管治療のことです。東京都世田谷区の上北沢歯科院長である行田克則先生によって考案されました。
むし歯が進行すると、根管の先に膿が溜まる(根尖病巣)ことがあり、この膿を外科的に手術して取り除くことになります。しかしながら手術にはリスクもあり、傷跡が残る可能性や再発の可能性もあります。そのリスクを大幅に減らすための施術がナメタメソッドというものです。
ナメタメソッドでは、歯根を除去せずにレーザーによって病巣部分を蒸散(高温で蒸発させて焼失させること)させます。ナメタメソッドの特徴は以下のとおりです。- 被せ物であるクラウンやコアを外さず治療が可能
- レーザー治療後の痛みや不快感が少ない
- 歯根を傷つけることなく、傷口も小さいため治療後の回復が早い
- 術後は0.3ミリメートル程度の穴が残る程度であり、治癒とともに自然に閉鎖する
- 周囲の健康な部位へのダメージが少ない
ナメタメソッドでは、まず麻酔(浸潤麻酔)をかけ、根尖病巣に針の穴ほどの小さな穴を開けます。その穴へNdYAGレーザーのチップを挿入し、根尖部や周囲にレーザー照射して治療します。
これによって感染部位が蒸散し、同時に起こる発熱によって患部を滅菌することで症状を改善していくという画期的な方法です。ナメタメソッドは根管治療において重要な施術法であるといえます。
根管治療でのレーザー治療とほかの治療法
- レーザー治療とほかの治療法の違いについて教えてください。
- レーザーを用いない通常の根管治療の場合、リーマーやファイルといった機器を使って歯髄を取り除き、根管を掃除します。その後、根管の中に薬を入れて仮封をし、根管内が無菌状態になったら根管の中を隙間なくシーリング剤を用いて封鎖します(根管充填)。最終的に土台を立てて被せ物をして完了となる治療法です。
このやり方では健康保険が適用できる場合もあり、保険適用とならないレーザー治療よりも安く治療できる可能性があります。しかしながら、根管深くまで入り込んでしまっている菌を除去するためには、レーザーによる治療が有効な場合もあるでしょう。
レーザー治療では、リーマーやファイルを使用した治療に加え、レーザーにより根っこの中をきれいに殺菌します。上述したとおり、人の根管は複雑な形状をしており、また個人差もあるため徹底的な歯髄の除去と滅菌が必要です。そのため、症状にもよりますが、レーザーを用いた根管治療が有効な場合もあるでしょう。
治療したものの、根管に菌が残っており、再度治療する手間がかかると患者さんへの金銭的負担や体力的負担がかかってしまいます。
- レーザー治療はほかの根管治療法と比べて成功率は高いですか?
- 治療時間の短縮や根管内の止血・殺菌、治療回数の低減などからほかの根管治療法と比べても成功率は高いといえるでしょう。
レーザー治療する際には0.3ミリメートル程度の穴を開ける必要があり、万が一にも器具が穴の中に破折した場合、取り除くために根管を拡大する必要があります。それ以外の点では、有効な治療法といえます。
根管治療でのレーザー治療で押さえておきたいこと
- 根管治療のレーザー治療は痛みはありますか?
- レーザー照射時に輪ゴムで弾かれたような痛みが伴うことがあり、痛みがまったくないわけではありません。それでも、従来の根管治療よりも痛みが軽減されます。
根管治療は徹底的に行う必要がありますが、痛みが生じることもしばしばです。レーザー治療はその点でも、メリットの大きい治療法といえます。
- 根管治療のレーザー治療の注意点はありますか?
- レーザー照射後、数日間は刺激物の摂取は控えること、照射した箇所に歯ブラシを当てないなど患部をやさしく取り扱うことが大切です。
そのほか、痛みや不具合が起きたときは、すぐに歯科医師へ相談するようにしましょう。
- レーザー治療は自費診療になりますか?
- 根管治療におけるレーザー治療は、保険が適用できず、基本的に自費となります。
むし歯や歯周病・歯茎などの軟組織のレーザー治療における処置については健康保険が適用できますが、根管治療では全てご自身で払っていただく必要があるので注意が必要です。
- レーザー治療をしても再発することはありますか?
- レーザー治療により徹底的に根管治療を行っても、菌の除去漏れによって再び治療が必要になる場合もあります。
それほど根管内部は複雑な形状をしており、施術する歯科医師のスキルや知識が必要な医療行為ですが、一度目の治療の後に再発させていないケースもあります。
しっかりとした施術を行ってもらえる歯科医院を選び、また丁寧な治療をしてもらえるよう症状などは細かく伝える必要があるでしょう。
編集部まとめ
レーザーによる根管治療は、従来までの治療法よりも効果的であることがわかりました。
妊婦さんや小さな子どもでも施術が可能であり、痛みを感じることも少なく、歯に被せ物をつけていても外さず治療が可能である点もメリットといえるでしょう。
菌の除去だけでなく、患部周辺の滅菌ができる点もレーザー治療ならではです。
しかしながら、再発を必ず防ぐ治療法ではなく、根管の洗浄状況によっては除菌しきれず病気が再発する恐れもあります。
仮に再発した場合であっても、諦めずに何度も歯科医院へ通い、徹底的に菌を除去しましょう。
根気強く病気と向き合う必要がありますが、しっかり治して健康的な生活を手に入れましょう。
参考文献