「再根管治療はどのように行うの?」「どんな症状に必要なの?」 そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか? 本記事では、再根管治療について以下の点を中心にご紹介します!
- 再根管治療について
- 再根管治療が必要になる原因について
- 再根管治療にならないために
再根管治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
再根管治療とは
「再根管治療」とは、過去に一度行われた根管治療が不十分で、歯の問題が再発した場合に再度実施される治療法を指します。
そもそも根管治療は、歯科治療の中でも難しい治療とされており、再発した場合も一度目の治療で神経を取り除いている歯は痛みを感じにくいことから、症状が悪化した状態で見つかるケースも多いようです。
再根管治療では、歯の内部(根管)に感染が広がった細菌を減らし、根尖性歯周炎の再発を防ぐことを目的としています。しかし、再根管治療は、専門的な技術と経験を必要とする複雑な治療であり、その成功率は、初回の治療の質や患者さんの全体的な口腔衛生状態などにより変動し、40~80%程度とされています。
そのため、再根管治療が必要となった場合は、歯科医院選びのポイントを抑えることが重要です。
再根管治療が必要になる症状
再根管治療が必要になる症状は、一度目の根管治療後の数ヶ月から数年後に現れることがあります。具体的には、以下のような症状が考えられます。
まず、治療後に歯に違和感が残り、思うように咬めなくなったり、また、痛みや腫れが再発したりすることもあります。
さらに、痛みはないものの、治療した歯の歯肉から膿が出てくることもあります。
また、冷たいものや温かいものを口にしたときに歯がしみる、歯が浮いているような感覚がある場合も、再根管治療が必要な兆候となります。
これらの症状が現れた場合、再根管治療が必要になる可能性がありますので、すぐに歯科医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。 自然治癒する可能性はほとんどなく、確実に治療が必要となるため、早期の対応が求められます。
再根管治療が必要になる原因
治療の難しいとされている根管治療ですが、再根管治療が必要になる原因とは何でしょうか。 いくつかの原因について、以下に解説します。
神経の取り残し
根管治療の過程で歯の神経の取り残しがあった場合、再根管治療が必要になるケースがあります。神経の取り残しは、根管の複雑な構造をはじめとするさまざまな要因により発生します。
例えば、大臼歯では根管が3本、小臼歯では2本といったように、歯の種類によって根管の数は異なります。これらの根管は、主要な根管から枝分かれした側枝と呼ばれる細い根管を持つことがあり、これらの側枝で神経が取り残されるケースが多いようです。
また、加齢やそのほかの要因により根管が狭くなると、治療器具が根管内部に適切に到達できず、神経が取り残される可能性があります。
取り残された神経は、治療後に炎症や感染を引き起こす可能性があり、これが再根管治療が必要となる主な原因となります。したがって、根管治療を行う際には、神経を取り残さないようにすることが重要となります。
感染歯質の取り残し
再根管治療が必要になる原因の一つに、感染歯質の取り残しがあります。感染歯質の取り残しとは、根管治療の過程でむし歯の感染部分が除去されずに残ってしまう現象を指します。 一度治療が完了し神経を取り除いて空洞となった根管内には薬剤が詰められ(根管充填)ますが、感染部分が取り除かれずに残ってしまうと、その中でむし歯が広がってしまいます。また、根管治療によって神経を除去した歯は痛みを感じないため、むし歯がかなり進行するまで気づきにくくなります。レントゲン画像などで感染源の取り残しが見つかる場合もあります。
むし歯の再発
再根管治療が必要になる原因の一つに、むし歯の再発があります。むし歯の再発は、根管治療の後の口腔衛生管理や、被せ物の適合性などにより発生します。
具体的には、以前に根管治療が成功した歯でも、日々の口腔ケアが不十分だった場合に新たなむし歯が発生し、それが根管に感染を引き起こすと、再根管治療が必要となります。 また、治療した歯の詰め物や被せ物が不適合であったり密閉できていない場合、新たなむし歯が発生しやすくなります。特に、根管充填(歯の詰め物)から被せ物をするまでに時間が空いてしまうと、その間に細菌が侵入し、感染が広がる可能性があります。
したがって、根管治療後も定期的な口腔衛生管理と、適切な被せ物の管理が重要となります。また、新たなむし歯の発生や感染の兆候がある場合は、早期に歯科医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
再根管治療の流れ
再根管治療とはどのような流れで行われるのでしょうか。 再根管治療の治療計画について、5つの工程に分けて以下に詳しく解説します。
麻酔
再根管治療では、まず初めに局所麻酔が使用されます。根管治療が一度行われていても、神経がまだ部分的に残っている可能性があります。そのため、麻酔を行うことで治療中の不快感や痛みを軽減し、患者さんの快適さを確保するために重要です。
しかし、痛みが強く、麻酔が十分に効かない場合もあります。そのような場合、抗生物質と鎮痛剤を用いて急性症状を和らげ、その後に治療を行うこともあります。
根管治療前の準備
再根管治療を行う前には、残っているむし歯や感染部分をしっかりと取り除きます。次に、根管内に唾液が入らないようにするための対策が必要です。
具体的には、歯の周囲に隔壁を作り、根管内に唾液が入らないように「ラバーダム」と呼ばれる特殊なゴムシートを装着することで、唾液の侵入を防ぎます。治療中の細菌感染を防ぎ、治療の成功率を高めるために重要な措置です。
充填剤を取り除く
ラバーダムを装着した後は、以前の根管治療で充填されているガッタパーチャ(ゴム状の充填剤)の除去が行われます。充填剤の周囲には感染によるバイオフィルムが形成され、黒く変色していることもあり、汚れが溜まっています。バイオフィルムに包まれた充填材は、根管内にへばりついており、感染源の取り残しが生じやすい状態です。
治療では、根管治療専用の細い超音波チップなど、さまざまな器具を使用して、充填剤と汚物を根管内から除去します。この過程で取り残しがあると再発する可能性が高くなるため、再根管治療の成功にとって重要な処置となります。
消毒をして充填剤を詰める
充填剤が取り除かれた後は、消毒をして新たな充填剤を詰めます。 再根管治療の過程では、感染部分の徹底的な除去と、その後の密閉が重要なポイントとなります。
まず、根管内を丁寧に消毒し、清潔な状態にします。 次に、充填剤を用いて根管を密閉します。この際、隙間ができないように充填剤を緊密に詰めることが大切です。 充填剤を詰める方法には、横方向から加圧する「側方加圧」と、上から加圧する「垂直加圧」の2種類があります。これらの方法は、状況に応じて適切に使い分けられます。
充填剤の詰め込みと密閉が完了したら、エックス線を用いて根っこの先まで充填剤が適切に詰められているか確認されます。この封じ込めの徹底度が、再発防止の鍵となります。
土台を入れてクラウンを被せる
再根管治療の最終段階では、炎症が治まった後、歯の回復状況を確認し、クラウン(かぶせ物)の土台となるコアを形成します。このコアは、根管治療後の歯を補強し、クラウンを安定させるための重要な役割を果たします。
以前は、このコアには丈夫なメタルコアが主に使用されていました。しかし、再根管治療を受けた歯は弱っているケースが多く、硬い金属のコアを使用すると、上から強く噛んだときの刺激により歯根が割れ、結果として抜歯が必要となることがありました。
そのため、現在では歯根破折を防ぐために、コンポジットレジンコアという素材が使用される歯科医院もあります。この素材は、歯根を適度に補強しながらも、過度な圧力による歯根の破折を防ぐ特性を持っています。
コアの形成とクラウンの取り付けが完了すれば、再根管治療は終了となります。
以上のように、再根管治療の流れは、麻酔から始まり、次に根管治療前の準備、充填剤の除去、そして消毒と充填剤の詰め込み、土台を入れてクラウンを被せる作業へと進行します。これらのステップを適切に行うことが、再根管治療の成功のために重要な流れです。
再根管治療にならないためのポイント
再根管治療は、難しい歯科治療であることが分かりました。一度目の根管治療が成功するためにはどんなことを知っておくべきなのでしょうか。 ここでは、再根管治療にならないために気を付けるポイントについて解説します。
歯科用CTによる検査と診断
再根管治療にならないためのポイントの一つに、歯科用CTによる検査と診断が行われている歯科医院を選ぶことが挙げられます。
歯科用CTは、X線を用いて断層撮影を行い、コンピューターでデータを処理・再構成することで、顎骨の状態、神経や血管の位置、歯周組織の欠損状態、歯根の病変などを3次元画像で正確に把握する医療機器です。画像を元に、治療中に起こりうるリスクを軽減し、より精度の高い適切な治療を実施します。
根管治療では、患者さんによって異なる複雑な構造をしている根管の中を治療するために、立体的な歯根、根管の状態、根尖病巣の有無や周辺組織の詳細な把握が重要です。歯科用CTを用いて詳細な根管の状態を確認し、成功率の高い良好な治療結果を目指しています。
また、歯科用CTは一般的なレントゲン撮影では把握が困難な歯根の病変や歯根破折なども早期に発見でき、痛みの原因を解明し、早期治療によって症状の悪化を防ぎます。
以上のように、歯科用CTは、根管治療の成功を確実にするための重要なツールとなります。しかし、全ての歯科医院で導入されているわけではないため、根管治療を受ける際には、歯科用CTによる検査と診断が行われることを確認することが重要です。
ラバーダムやマイクロスコープを使用した治療
再根管治療の成功に重要なポイントは、「マイクロスコープ」と「ラバーダム」を使用した治療が行われているかどうかです。
まず、「マイクロスコープ」は、歯科用の顕微鏡のことで、歯の内部を数十倍に拡大して視野を鮮明にし、繊細な作業をサポートします。歯の内部は狭く複雑に入り組んでいるため、鮮明な視野を確保することで、目視では見えなかった病巣を取り残すリスクを軽減できます。ただし、マイクロスコープを使用するには高度なテクニックが必要で、適切なトレーニングを受けた歯科医師でなければ扱えません。
次に、「ラバーダム」は、治療を行う際に歯に装着するゴムのマスクで、治療部位に唾液が混入するのを防ぎます。唾液による細菌感染を防ぐことで、根管治療の成功率は向上します。しかし、日本ではまだラバーダムを使用している歯科医院は少なく、その使用率は約5%ともいわれています。
これらの設備と道具を適切に使用することで、再根管治療のリスクを軽減し、治療の成功率を高めるとされています。したがって、根管治療を受ける際には、歯科医師がこれらの設備と道具を使用しているかどうかを確認することが重要です。
根管治療の経験が豊富な歯科医師のいる医院を選ぶ
根管治療は専門性が高く、その成功は歯科医師の知識と技術に依存します。
欧米では、根管治療は専門医院で行われる分野で、専門の知識と技術を持つ専門の医師による治療が行われています。
そのため、根管治療が必要となった場合は、根管治療の経験が豊富な歯科医師に診察してもらうことをおすすめします。普段通院している一般歯科からの紹介状があってもなくても、根管治療専門の医院を受診することはできるので、再発のリスクを下げるためにも、医院選びは慎重に行いましょう。
再根管治療ができない場合
ここまで、再根管治療についての情報をお伝えしてきましたが、再根管治療ができない場合もあります。
再根管治療ができないケースについて、以下に解説します。
準的な手順で根管治療を受けている
再根管治療が適応とならない可能性がある状況の一つは、既に標準的な手順で根管治療を受けているケースです。
標準的な手順とは、器具の滅菌が徹底された状態でラバーダムを使用して治療を受けている場合などを指しています。これは、感染根管治療ではその病気が治らないということを示しています。
保存が難しい場合
再根管治療が適応とならない可能性がある状況の一つは、歯の状態が悪く保存が難しいケースです。
具体的には、以下のような状況では再根管治療が適応とならないことがあります。
- 症状が進行し歯を支える骨が溶けている
- 歯が割れている
- むし歯が深い
- 歯の保存が難しくなるさまざまな要因がある
これらの症状に加えて、既にぐらついている歯や、根の長さが短かったり根の厚みが薄かったりする場合では、根管治療後の歯の機能に対して懸念があります。 再根管治療が本当に患者さんの利益に繋がるのか、十分に検討される必要があります。
まとめ
ここまで再根管治療についてお伝えしてきました。
再根管治療について、要点をまとめると以下の通りです。
- 「再根管治療」とは、過去に一度行われた根管治療が不十分で、歯の問題が再発した場合に再度実施される治療法を指し、歯の内部(根管)に感染が広がった細菌を減らし、根尖性歯周炎の再発を防ぐことを目的としている
- 再根管治療が必要になる原因は、神経の取り残しや感染歯質の取り残し、むし歯の再発などが挙げられる
- 再根管治療にならないためには、歯科用CTによる検査と診断が行われていること、ラバーダムやマイクロスコープを使用した治療であること、そして根管治療の経験が豊富な歯科医師のいる医院を選ぶことが大切
再根管治療は、一度根管治療を行った歯に再び炎症が起きてしまい、再治療が必要になった際に行われる治療です。できれば再治療にならないよう、丁寧な歯磨きなど、自身でできることは取り組むようにしましょう。
再根管治療について、皆様の参考になれば幸いです。