根管治療は、保険診療では成功率が4割程度にとどまるといわれています。根管充填をして被せ物を装着しても、むし歯が再発すれば再根管治療が必要となりますが、必ずしも1回で成功するとは限りません。
この記事では再根管治療を受けても治らない理由や対処方法、むし歯の再発を防ぐ方法を解説します。根管治療を繰り返し受けている方は、その理由や対処方法を参考にしてみてください。
再根管治療について
再根管治療の基本事項を確認しておきましょう。
- 再根管治療とはどのような治療ですか?
- 再根管治療とは、根管治療を再び行うことを指します。初めての根管治療では、歯の神経を抜いて根管を拡大して形成しながら、汚れを取り除いていきます。根管の清掃が完了したら、根管充填を行って土台を作り、被せ物を装着して治療は終了です。
その後、歯の痛みや根尖部の病巣などが現れた場合は、むし歯の再発が疑われるため、再根管治療が必要となります。再根管治療では、まず被せ物と土台、根管内の充填物を取り除くことから始まります。もうすでに歯の神経は除去されているため、抜髄は必要ありません。その後は、初回の根管治療と同じ流れで治療が進んで行きます。
- 再根管治療が必要になる主な原因にはどのようなものがありますか?
- 再根管治療が必要となる主な原因は、根尖性歯周炎とされています。根尖性歯周炎とは、歯の根っこの先に膿の塊ができる病気で、感染源は根管内にあります。
初回の根管治療で病変の取り残しがあったか、治療後に再び細菌の侵入が起こったかして、根尖病変が形成されるのです。その他、むし歯の再発で被せ物が脱離した場合も多くのケースで再根管治療が必要となります。
- 再根管治療は、何回まで受けられるのか教えてください
- 再根管治療に回数制限は設けられていませんが、一般的には1〜2回が限度と考えられています。根管治療は1回ごとに根管の壁を削るなど、侵襲性の高い処置を必要としてしまいます。薬剤によるダメージも蓄積することから3回、4回と積み重ねていくのはなかなか難しいでしょう。
再根管治療後でも再発する理由
再根管治療を行ったにも関わらず、むし歯が再発する理由について解説します。
- 再根管治療後に痛みや腫れが続くのは、どのような理由が考えられますか?
- 再根管治療後しばらく経過しても痛みや腫れが継続するのは、病変を取り残している可能性が高いです。根管内や根尖部に細菌が残っていれば、炎症反応も続いていきます。
一部のケースでは、根尖の壁に穴が開いたり、歯根そのものが折れたりしている可能性も否定できません。
- 治療後も細菌が繁殖し、感染が再発する原因を教えてください
- 再根管治療を行った後に細菌感染が再発する原因としては、以下の3つがあげられます。
◎細菌を取り残している
根管の形状が複雑であったり、未処置の根管が存在していたりすると、再根管治療後も細菌が繁殖して感染が再発します。
◎根管充填が不十分
根管内をきれいに清掃できたとしても、根管充填をしっかり行えていないと細菌が再び根管内へと侵入して再感染が起こります。
◎被せ物と土台の適合が悪い
根管充填まで適切に行えた場合でも、その上に設置する土台や被せ物の適合が悪いと、口腔内から細菌が入り込んで再感染を引き起こします。
- 根管の形状が複雑な場合は再根管治療が成功しにくいですか?
- 根管の形状は、再根管治療の成功率に影響します。側枝と呼ばれる細いわかれ道があったり、根管の先の方が大きく彎曲していたりするケースは、細部まで汚れを取り除くことが困難なことから、再根管治療の成功率も低下します。
再根管治療を受けても治らない場合の対処法
再根管治療が失敗した場合の対処法について解説します。
- 再根管治療を受けても治らない場合、どのような選択肢がありますか?
- 主に歯根端切除術、意図的再植術、抜歯という3つの選択肢が考えられます。抜歯以外は、高度な技術と専門的な知識、経験が求められる治療法なので、対応できる歯科医院は一部に限られます。
意図的再植術とは、患歯を一度、歯槽骨から抜き取って、肉眼で確認できる状態で根尖部を切除する方法です。歯根の方からの根管充填が完了したらもとの位置へと戻すため、このように呼ばれています。
- 再根管治療を受けても治らない場合は抜歯が必要ですか?
- 歯根端切除術や意図的再植術を選べない、あるいはこの2つの方法でも治癒が望めない場合は、抜歯が必要になります。
細菌感染が認められる歯を何もせずに放置しておくと、隣の歯にむし歯がうつったり、顎骨骨髄炎や上顎洞炎、蜂窩織炎といった歯性感染症を発症するリスクが高まったりするため、適切な時期に抜歯をするのが望ましいです。
- 歯根端切除術はどのようなケースで行われますか?
- 根尖性歯周炎を発症していて再根管治療を行い、それでも根尖病巣が消失しない場合は、歯根端切除術の適応が検討されます。
歯根端切除術とは、歯の根っこの先とその周りの病変を外科的に切除する方法で、外科的歯内療法に分類されます。病変を取り除いたら、歯根側から根管充填を行って、再発を防ぎます。歯根端切除術は、根管治療後に装着した被せ物や土台を撤去したくない場合にも適応されることがあります。
根管治療後の再発を防ぎ、歯を長持ちさせるためのケア
根管治療後のむし歯の再発を防ぐ方法と歯を長持ちさせるコツを解説します。
- 再根管治療後に自宅でできる再発防止策はありますか?
- 再根管治療後には、自宅での歯磨きを徹底することがむし歯の再発を防止するうえで大切です。正しい歯磨き方法で歯磨きをして、歯と歯の間の汚れはデンタルフロスや歯間ブラシで清掃しましょう。
再根管治療を行った歯は、健全な生活歯よりも脆くなっており、外からの圧力も感じにくくなっていることから、硬い食べ物を噛んだり、歯ぎしりや食いしばりで過剰な負担を与えたりしないよう心がける必要があります。
- 治療後の歯を長く保つために、どのようなメンテナンスが必要ですか?
- 根管治療後の歯は、健全な天然歯とは異なります。根管のなかには薬剤が充填されており、被せ物も装着しています。自宅でのケアだけでは、適切なメンテナンスを行うことが難しいので、歯科医師によるチェックを定期的に受けるようにしましょう。
- 定期的に歯科検診を受ける必要はありますか?
- 3〜6ヵ月に1回の頻度で定期検診を受けるのが望ましいです。歯科検診では、患者さん自身では気付きにくい被せ物の破損や劣化、根管内の異常を早期に発見することができます。噛み合わせが高くなっていたりする場合は、被せ物を削るなどの処置で調整できます。こうしたメンテナンスは歯科医院でなければ受けられません。再根管治療を行ったケースは、定期的な歯科検診が大切です。
編集部まとめ
再根管治療を受けても治らない原因やむし歯が再発する理由、こうしたケースへの対処方法について解説しました。再根管治療後も痛みや腫れなどが持続する場合は、根尖性歯周炎を発症している可能性が高いです。
根管内や根尖部に細菌が繁殖している状態で、難症例の場合は意図的再植術や歯根端切除術が必要になります。抜歯を余儀なくされるため、根管治療後は再発のリスクを抑える取り組みが重要となります。同時に、精度の高い根管治療を行える歯科医院を選ぶことも大切です。
参考文献