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根管治療

根管治療で麻酔が効かない原因は?対処法や注意点について解説

根管治療で麻酔が効かない原因は?対処法や注意点について解説

根管治療を行うにあたっては、事前に麻酔をかけることが一般的です。しかし、実際には麻酔が効かない・効きにくいという臨床例もあります。

医療行為において麻酔が効かなければ痛みを抑える方法のひとつがなくなるため、患者さんに必要以上の負担を与えることにつながりかねません。

根管治療とはどのようなものかについてあらためて解説するとともに、麻酔が効かない原因・麻酔が効かない場合の対処法などについても説明していきます。

根管治療で麻酔が効かない原因

治療器具

根管治療について教えてください。
歯の奥には血管や神経などからなる組織があり、これを歯髄といいます。むし歯が進行すると、この歯髄にまで病巣が広がってしまうのです。むし歯が悪くなって常に痛みがあるようなときは、病巣が歯髄にまで達しているケースだといえます。さらに症状が進行すると歯髄壊死と呼ばれる状態になり、痛みを感じなくなります。この段階までむし歯が進行すると、歯髄自体の除去が必要です。根管治療とは歯髄を取り除いて患部を洗浄し、詰め物をして再感染を防ぐものです。
根管治療で麻酔が効かない原因を教えてください。
根管治療で除去する歯髄には痛みを感じる神経も含まれているため、除去するとなるとそのままでは激しい痛みを伴います。このため治療にあたっては麻酔をかけるのですが、実際には麻酔が効かない・効きにくいケースがあります。原因として考えられるのは、むし歯の進行です。むし歯が進行して何もしなくても痛みを感じる程の状態になっている場合、患部に炎症が起きています。このとき、患部周辺が酸性になっているのです。根管治療の際に行う浸透麻酔法は患部が酸性だと効果が落ちる傾向があるため、麻酔が効きにくくなる原因となります。また、炎症が起きているときには周囲の血管が拡張されています。炎症の原因となっている細菌を退治するために、白血球を送り込むことが目的です。血管が拡張されていると、麻酔薬が吸収されやすくなるという問題が生じます。そのため、麻酔が効きにくくなるのです。
麻酔が効かない理由に体質は関係しますか?
麻酔が効きにくい体質的要因としては、歯を支える歯槽骨が丈夫かどうかというポイントが考えられます。歯槽骨の表面組織が分厚いことは骨が丈夫な証拠で、歯をしっかり支えてくれるため本来はメリットといえるものです。しかし歯槽骨の表面組織が分厚いと浸透麻酔法では薬剤が浸透しにくくなり、麻酔が効きにくくなる要因となりかねません。歯槽骨の表面組織の分厚さは人によって異なるため、医療機関側は患者さんに合わせた麻酔を行う必要が生じるのです。また体質とはいえませんが、下顎は骨が分厚いため人によっては麻酔が効きにくくなるとされています。
麻酔が効かないことで治療にリスクが生じますか?
根管治療で除去する歯髄は神経が含まれるため、麻酔を行わない状態で治療すると激しい痛みを伴います。これが患者さんに多大な負担を強いてしまうことは、説明するまでもありません。痛みによって患者さんが顎を動かすと、歯髄が除去しきれないという結果を招く可能性もあります。これは根管治療の失敗を意味しており、再び状態が悪化して再治療が必要となりかねません。このため浸透麻酔法では効きにくい患者さんに対してはほかの方法で麻酔をかける・先に炎症を抑えてから治療を行うなどの方法が取られています。
根管治療で使用する麻酔の種類を教えてください
根管治療で使用される麻酔は、浸透麻酔法と呼ばれるものです。歯茎に注射針を刺して麻酔薬を注入し、浸透させることで歯の神経まで薬剤を到達させる仕組みになっています。ただし、麻酔注射を行う際の痛みが嫌だという患者さんもいます。麻酔注射の痛みを少しでも抑えるため、表面麻酔法を使用することもあるのです。麻酔薬を歯茎に塗布することで、注射の痛みを和らげるものです。また、下の奥歯は下顎の骨が丈夫なので浸透麻酔法では効果が不十分なケースもあります。この場合には、神経がある部位に注射針を刺して直接薬剤を到達させる伝達麻酔法を使用することになります。

根管治療で麻酔が効かないときの対処法

治療を受ける男性

根管治療で麻酔が効かない場合の対処法はありますか?
根管治療で浸透麻酔法が効果的でない場合、まず考えられるのが薬剤を増やす方法です。より多くの麻酔薬を注射することで浸透する薬剤の量を増やし、効果を高めることが狙いです。下の奥歯など浸透麻酔法の効果が必ずしも高くない部位では、伝達麻酔法に切り替えることがあります。伝達麻酔法は神経に直接、薬剤を到達させる方法です。患部の炎症が原因で麻酔の効果が低下している場合には、炎症の対策も行われます。具体的には薬剤によって消炎処置を行い、患部に麻酔が効きやすい状態にするのです。緊急性がある場合には歯髄に直接薬剤を注射する歯髄腔内麻酔を行います。この方法は強い痛みを伴うため、最後の手段ともいえる方法です。
痛みが重くなると麻酔は効きにくくなりますか?
繰り返しになりますが、痛みが重い状態だと浸透麻酔法の効果は低下するとされています。何もしなくても強い痛みがある場合、患部に炎症が起きているのです。この炎症によって患部が酸性となり、麻酔の効果が低下しやすくなるのです。また患部に炎症が起きている場合には細菌を退治する白血球を送り込むため、血管が拡張されています。これによって浸透すべき麻酔薬が血管に吸収され、薬剤の効果の低下につながるのです。根管治療で麻酔が効かない場合に消炎処置を行うのは、上記のような麻酔が効きにくい状態を解消することが目的だといえます。
麻酔は高血圧がある場合だと効きにくいですか?
結論からいえば、麻酔の効きにくさと高血圧には必ずしも関係はありません。高血圧の患者さんへの麻酔が注意すべきだとされているのは、アドレナリンが含まれている麻酔薬があることが理由です。アドレナリンとは副腎皮質から分泌されているホルモンのひとつで、心機能亢進作用があります。もともと血圧が高い高血圧の患者さんにアドレナリンを投与すると、さらに血圧が上昇して動悸などの症状が出る可能性があるのです。このため、高血圧の患者さんにはアドレナリンが含まれていない麻酔薬を使用するなどの対策が取られます。しかし、これはあくまでも患者さんの体への負担を抑えることが目的です。麻酔を効きやすくするための処置ではありません。

根管治療後の注意点

頬を抑える女性

根管治療後麻酔の効果が効きにくいときの注意点はありますか?
根管治療の施術後、麻酔が効いている時間には個人差があります。麻酔の効果が早めに切れた場合には患部に痛みを感じますが、内部組織を取り除く処置を行った後なので仕方がありません。これについては医療機関も痛み止めを処方するなどの対策を取っていますが、いつまでも痛みが取れないような場合は根管治療が失敗している可能性を考慮すべきです。再根管治療が必要なケースもありますので、医療機関の診断を仰いでください。
根管治療後に痛み止めは出ますか?
繰り返しますが、根管治療は神経などからなる歯髄を取り除くものです。麻酔なしで処置を行えば、激しい痛みを伴います。治療中に麻酔を行うのはこの痛みを取り除くためですが、麻酔が切れるまでの時間が短いと痛みを感じるケースが想定されます。そのため、根管治療後には痛み止めが処方されます。しかし痛みを和らげることはできても、完全になくすことはできません。また痛み止めの効果を高めようとして指示を上回る量を服用することは、薬剤の副作用につながる危険性があります。痛み止めの使用に伴うリスクを可能な限り抑えるため、医療機関の指示にしたがって服用するようにしてください。
治療後の生活で気を付けたいことはありますか?
根管治療を行った後で痛みが引かないようなケースが想定できるため、施術を行った医療機関と連絡を取れるようにすることが大切です。むし歯の進行度合い・医療機関の技量によっては根管治療が成功しておらず、再治療が必要になるケースが考えられるからです。また、根管治療を行った歯は歯髄が除去されているため、もろくなっています。そのため、治療後のメンテナンスも重要です。

編集部まとめ

歯ブラシを持つ男性医師

根管治療で麻酔が効きにくいという臨床例は、医療機関のサイトでも実例が報告されているレベルで起きることです。原因についてもわかっています。

それだけに、医療機関側でもさまざまな対策を立てています。麻酔が効かないから、なしで根管治療を行うようなことはまずありません。

麻酔が効きにくくなる原因のひとつである炎症は、むし歯が悪化するまで放置していることなどが原因です。痛みを感じたら放置せず、医療機関の治療を受けてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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