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根管治療で処方される抗生物質(抗菌剤)の種類は?役割・飲み方の注意点を解説

根管治療で処方される抗生物質(抗菌剤)の種類は?役割・飲み方の注意点を解説

歯のなかにある歯髄が感染すると、これを取り除く根管治療が行われます。基本的に細菌やその栄養源を直接取り除くことが根管治療です。

根管治療のときには、他の治療と合わせて抗生物質が処方されます。ではなぜ根管治療をしたときに、抗生物質を飲むのでしょうか。

今回は根管治療で処方される抗生物質の種類とその役割、飲み方の注意点を解説します。根管治療で処方される抗生物質の服用をする際の参考になれば幸いです。

根管治療時に処方される薬や抗生物質の種類

薬を飲む女性

根管治療時に処方される薬にはどのようなものがありますか?
根管治療時に処方される薬は、解熱鎮痛薬と抗生物質です。根管治療と併用して、腫れや痛みの治療としてこれらの薬が処方されます。
処方される抗生物質の種類を教えてください。
根管治療のときに処方される抗生物質は、マクロライド系と呼ばれる種類のうち効果時間の長いジスロマック(アジスロマイシン)です。ジスロマックが作用すると細菌のタンパク質を作るリボソームという器官の働きは阻害され、細菌の増殖が抑制されます。人の細胞にもリボソームは存在しますが、ジスロマックは細菌の持つリボソームだけを選択して作用する抗生物質です。この作用は細菌数が増えなくなることから静菌作用と呼ばれますが、ジスロマックには殺菌作用も備わっています。この作用の違いは濃度によって調整可能なため、感染している細菌の種類に応じて医師または歯科医師が処方量を調整します。
処方される消炎鎮痛剤の種類を教えてください。
根管治療のときに処方される消炎鎮痛剤は、NSAIDsのロキソニン(ロキソプロフェン)やボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)、またはカロナール(アセトアミノフェン)です。NSAIDsは非ステロイド性抗炎症薬という消炎鎮痛剤の一種です。その作用は体内の痛みや炎症、発熱を引き起こす物質であるプロスタグランジンの産生を抑制します。これにより炎症に伴う解熱・鎮痛効果が得られます。副作用として胃腸障害が起こることが少なくないため、胃が弱い方は処方時に医師と相談した方がよいでしょう。そのほかの副作用には吐き気や嘔吐があります。このほか根管治療の消炎鎮痛剤として、カロナールが処方されることもあります。カロナールも鎮痛剤の一種ですが、NSAIDsとはメカニズムが異なります。カロナールは非ピリン系解熱鎮痛薬で、脳の中枢神経や体温調節中枢に作用してその効果を発揮します。NSAIDsと比べると効果は穏やかですが、副作用が出にくく小児から飲むことができるメリットがあります。カロナールの副作用には発疹、嘔吐や食欲不振などがあります。

根管治療で処方される抗生物質(抗菌剤)の役割

薬を飲む

根管治療で処方される抗生物質にはどのような役割がありますか?
根管治療は、歯髄炎や根尖性歯周炎に対して行われる治療法です。歯髄炎や根尖性歯周炎は歯の根の周囲に炎症が起こっている状態のため、痛みや腫れなどの症状が起こる可能性があります。この炎症は根管内に住み着いた細菌に体の免疫が反応した結果として、起こります。基本的に細菌やその栄養源を取り除くことが根管治療です。さらにそれに加えて取り除ききれない細菌からの感染拡大を防ぐために抗生物質が処方されます。
抗生物質の服用で根管の状態はよくなりますか?
根管治療でよく処方される抗生物質としてジスロマック(アジスロマイシン)があります。抗生物質には殺菌作用のあるものと静菌作用のあるものがありますが、このジスロマックが持っているのは細菌の増殖を抑える静菌作用です。ジスロマックを内服することで、根管の周囲に炎症を起こしている細菌の増殖を抑えることができます。しかしこれは一時的な治療に過ぎず、根本的な治療にはなりません。現在の状態によって必要な治療は異なりますが、根管治療におけるあくまで抗生物質の服用は補助的な役割だと考えておきましょう。
抗生物質が効かないケースもありますか?
口内にはバイオフィルム(プラーク)と呼ばれる膜状の細菌の集合体があります。バイオフィルムは細菌の好む環境でできているため、細菌増殖の温床です。そしてこのバイオフィルムは抗生物質に対して強い抵抗性を持っています。そのためバイオフィルム内にいる細菌には抗生物質は効かないのです。

根管治療で処方される抗生物質の飲み方の注意点

処方中

抗生物質の飲み方の注意点を教えてください。
根管治療で処方される抗生物質のジスロマック(アジスロマイシン)の飲み方と注意点を解説します。ジスロマックは食事による影響を受けにくい薬です。そのため食前や食後などのタイミングは問いません。服用後は体内に長くとどまる性質の薬のため、服用から数日後に副作用が発生することがあります。服用後に気になる症状がある場合は、処方した医師へと相談しましょう。またジスロマックは、アルコールの摂取により薬の効果が強く出ることがあります。副作用症状が出やすくなるほかにも肝臓への負担が大きくなってしまうため、ジスロマック服用中の飲酒は控えましょう。
抗生物質を飲み忘れてしまった場合どうすればよいですか?
内服した薬は、その成分の血中濃度が体内で一定になることで、本来の期待される効果を発揮します。抗生物質を飲み忘れてしまったときには、飲み忘れたことに気付いた時点ですぐに服用しましょう。ここで注意しなければいけないのは、飲み忘れに気付いて抗生物質を服用した時間が、次に服用する予定だった時間に近かった場合です。この場合は次回飲む予定だった分は抜いて、その次の分から決められた時間で服用を再開します。くれぐれも2回分をまとめて服用してはいけません。処方量以上に一度に内服すると、血中濃度が高くなり過ぎてしまい、副作用が起こる可能性があります。
抗生物質の薬剤耐性菌とは何ですか?
抗生物質は、主に細菌に対する効果を持っています。抗生物質の持つ効果は、細菌が増えていく仕組みを邪魔をして増殖を抑えたり、細菌を殺したりするものです。しかし本来なら抗生物質が効くはずの細菌が薬剤に対しての耐性を持ち、抗生物質の効果が出ないことがあります。この耐性を持った細菌を薬剤耐性菌といいます。薬剤耐性菌は、感染症の予防・治療を困難にする厄介な存在です。この薬剤耐性菌が増えると、使用できる抗生物質の種類が減ってしまいます。もともと免疫力の低い人が感染症にかかってしまうと特に重症化する可能性が高く、使用できる抗生物質の数が少ないと治療が難しくなります。薬剤耐性菌を増やさないためには、必要のない抗生物質を無闇に使用しないことや感染症を拡大させないことが重要となります。処方された抗生物質を医師や薬剤師の指示のとおりに、適切な量を適切な期間で服用して薬剤耐性菌の拡大を防ぎましょう。
患部の状態がよくなったら服用をやめても大丈夫ですか?
抗生物質は自己判断で服用を中止してはいけません。抗生物質は処方時に「すべて飲み切ってください」と処方されるのが一般的です。患部の状態が良くなった場合であっても、原因となる細菌が期待される程度まで減っているとは限りません。そのため自己判断で抗生物質の中止や減量は絶対に行わず、処方された分は指示のとおりの方法で飲み切るのが原則です。

編集部まとめ

処方中

根管治療では、ジスロマックなどの抗生物質が処方されることがあります。しかし、この抗生物質の服用だけでは、患部の状態を改善できません。

抗生物質は正しい服用が求められる薬です。根管治療で抗生物質が処方された場合は、正しい時間に正しい量で指示された期間が終わるまでしっかりと飲み切るように気をつけましょう。

抗生物質の自己判断での中止は、薬剤耐性菌の発生や感染の拡大につながります。患部の状態が改善しても、自己中断は絶対に行わないことが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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