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根管治療で使う歯科用CTとは?根管治療で歯科用CTが必要な理由や使用するメリット、注意点など解説

根管治療で使う歯科用CTとは?根管治療で歯科用CTが必要な理由や使用するメリット、注意点など解説

「なんで根管治療で歯科用CTを使うの?」「どのようなメリットがあるの?」 根管治療を検討していてそんな疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 本記事では、根管治療と歯科用CTについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 歯科用CTとは
  • 根管治療で歯科用CTを使用するメリット
  • 根管治療で歯科用CTを使用する際の注意点

根管治療で用いる歯科用CTについて理解するためにもご参考いただけたら幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

歯科用CTとは

歯科用CTとは

歯科用CT(Computed Tomography)は、X線を用いた断層撮影とコンピューターによるデータ処理や再構成により、顎骨や神経、血管、歯周組織の状態を三次元画像で正確に把握する精密機器です。

以下では、医科用CTとレントゲンとの違いをそれぞれ詳しく解説します。

医科用CTとの違い

歯科用CTは、医科用CTと比べて被爆量が少なく、日常生活の被爆量の約15分の1程度とされています。

また、高解像度で必要な範囲の撮影ができ、医科用CTの約5倍の情報量を提供します。座って撮影できるため、気軽に撮影でき、準備から撮影まで約10分の短時間で完了する点も医科用CTとの違いです。

レントゲンとの違い

歯科用CTとレントゲン撮影の主な違いは、得られる画像の次元にあります。レントゲンは一方向からの情報を二次元(平面)に投影するため、画像は影絵のようになり、奥行きや前後関係を正確に把握することが難しいです。

それに対して、歯科用CTは360度あらゆる方向から情報を収集し、三次元(立体)画像として表示します。歯科用CTより、骨質や骨の厚み、形状、周辺の血管や神経の位置などを正確に把握できます。

また、歯科用CTは三次元画像を用いるため、患者さんへの説明が容易で、理解しやすい点が特徴です。レントゲンでは、診断に臨床経験と読影能力が必要で、診断結果が歯科医師の能力に左右されることがありますが、CTでは理解しやすい立体画像を使用するため、診断のブレが少なくなります。

なお、歯科用CTやレントゲンは硬組織の描写に適しており、骨折や骨の変形、歯を支える骨の量、歯のエナメル質の厚みやむし歯の深さなどを詳細に診断できます。しかし、血管や神経、筋肉、脂肪、歯茎などの軟組織の描写は得意ではありませんが、骨の形状から神経の位置の推察はできます。

根管治療で歯科用CTが必要な理由

根管治療で歯科用CTが必要な理由

根管治療で歯科用CTの使用が必要とされる理由には、高い精度と詳細な情報提供能力にあります。

根管は神経の通り道であり、途中で曲がったり複雑に枝分かれしたりして、迷路のように入り組んでいます。一方向からの二次元レントゲン画像では、こうした複雑な構造を正確に把握することは困難です。

しかし、歯科用CTは三次元画像を提供するため、根管の立体的な形態や走行を正確に確認できます。また、根尖(根の先端)にできた病変の大きさや原因も詳細に把握できます。さらに、CT画像はレントゲンでは見えにくい歯の小さなヒビや割れも映し出せるため、より精密な診断ができるようになります。

根管治療で歯科用CTを使用するメリット

根管治療で歯科用CTを使用するメリット

根管治療で歯科用CTを使用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか? 以下で詳しくみていきましょう。

精度の高い治療

根管の形状は一人ひとり異なり、湾曲したものや枝分かれしたものなど、多様な形態が見られます。根管治療を成功させるには、複雑な根管や見落としがちな隠れ根管を事前の把握が重要です。

どんなに高い技術を持つ歯科医であっても、誤った診断では治療の成功率が低下してしまいます。そこで重要となるのが、歯科用CTの利用です。

歯科用CTを用いると、治療前に顎や歯、さらには鼻腔や粘膜の状態など従来の二次元画像では得られなかった情報を三次元で詳細に把握できます。

このように歯科用CTにより、患者さんの快適さと治療後の健康を向上できるとされています。

患者さんの負担の軽減

歯科用CTの導入は、患者さんの負担軽減につながります。まず、歯科用CTは医科用CTに比べて放射線量が極めて低いとされています。

また、患者さんは座ったままや立ったままの楽な姿勢で撮影ができるため、ポジショニングのストレスが少なくなります。撮影時間も短く、短時間で必要な情報を取得できるため、体への負担も抑えられます。

従来、歯科用CTを持たない歯科医院では、CT撮影のためにほかの大きな医療機関に依頼する必要がありました。患者さんは複数の病院を訪れる手間や時間、費用の負担を負うこととなっていました。

しかし、かかりつけの歯科医院に歯科用CTが導入されていれば、すべての診断と治療を一つの場所で完結できるため、通院の手間や費用の軽減が図れます。 さらに、歯科用CTは従来のレントゲン撮影に比べて、患者さんの負担を軽減できるとされています。従来のレントゲン撮影では、お口の開け閉めや咬むことが何度も必要で、不快感や痛みが伴うことがありました。しかし、歯科用CTは一度の撮影ですべての情報を取得できるため、患者さんの不快感や痛みを軽減できます。

このように、歯科用CTの利用は、患者さんにとって多くのメリットがあります。低被曝で撮影できること、楽な姿勢で短時間での撮影できること、そして治療を一つの歯科医院で完結できることは、患者さんの身体的・時間的・経済的な負担を減らすことにつながります。歯科用CTの導入は、よりよい治療環境の提供と患者さんの快適さを追求する大きな一歩といえるでしょう。

安全性の向上

CT画像を利用すると、根の位置や周囲の重要な組織(神経や血管)の位置を正確に把握できるため、手術中の損傷リスクを抑えられ、手術の成功率が高まり、患者さんへの負担も軽減されます。

また、従来であれば、歯茎を切開して直接確認しなければわからなかった情報も、歯科用CTを使用すると事前に把握できます。手術前に詳細なシミュレーションができ、正確性が向上します。

さらに、治療計画を立てる際にも、CT画像をもとにした詳細な情報があるため、よりリスクの少ない治療を提供できます。

また、歯科用CTは患者さんに対する放射線量が低いため、患者さんの治療に対する抵抗感も薄れるのではないでしょうか。

根管治療で歯科用CTを使用する際の注意点

根管治療で歯科用CTを使用する際の注意点

ここまで根管治療で歯科用CTを用いるメリットをお伝えしましたが、注意しなければいけない点も存在します。 以下で詳しく解説します。

被ばく線量

歯科用CTの被ばく線量は、多くの方が心配されることと思います。たしかに、歯科用CTは従来のX線写真撮影に比べて被ばく線量が多いといわれていますが、量は少なく、抑えられています。

また、新しいデジタル高感度X線センサーの進化により、被ばく線量は無視できるほど低くなっています。具体的には、東京からニューヨークへ飛行機で移動した際に浴びる自然放射線量と同程度です。この程度の被ばくで健康に悪影響が出ることはありません。

歯科用CTはコーンビームCTと呼ばれるタイプで、全身用のCTとは異なり、簡易的で被ばく量も少なく済みます。CTスキャン撮影はレントゲン撮影よりも被ばく量が多いといわれていますが、詳細な情報を提供し、より正確な診断ができるようになります。

また、歯科用CTの使用は必要な場合に限定されており、不必要に多用されることはありません。歯科医師は患者さんのことを考え、必要な場合にのみCT撮影を行います。

歯科用CTによる検査を受けられない場合

妊娠中や妊娠の可能性のある方、過去に金属を埋め込むような手術を受けられた方、お医者さんから放射線を利用した検査について注意を受けている方は、必ず検査の前にその旨を申告し相談するようにしてください。

根管治療で歯科用CTを使用する際の費用

根管治療で歯科用CTを使用する際の費用

歯科用CT検査は撮影費用と診断費用が患者さんの実費負担となることが多く、費用は約1〜3万円かかるとされています。

しかし、保険適用が認められるのは、歯科用エックス線撮影または歯科用パノラマ断面撮影で診断が困難な場合で、当該画像撮影の必要が十分認められる場合という条件下に限られています。

まず、根管の形態が複雑な歯に対し、マイクロスコープを使って根管治療を行う場合です。具体的には、根管が4本以上の歯や、樋状根(といじょうこん)と呼ばれる複雑な形態の歯が対象となります。

また、マイクロスコープを用いた歯根尖切除手術を実施する場合も保険が適用されます。 このように、歯の状態や治療の内容によって保険が適用されるかどうかが決まります。

歯科用CTが必要な場合、歯科医院では事前に患者さんに対して十分な説明を行い、同意を得たうえで検査を進めます。保険が適用されない場合でも、歯科用CTによる詳細な診断と治療計画は、根管治療の成功率を高めるために重要です。

根管治療で歯科用CTと併せて使用したい歯科機器

根管治療で歯科用CTと併せて使用したい歯科機器

ここでは、根管治療で歯科用CTと併せて使用したい歯科機器を2つご紹介します。

ラバーダム

ラバーダムは、治療部位以外をゴム膜で覆い、クランプという金具を使って治療部位のみを隔離する方法で、ラバーダム防湿法と呼ばれています。ラバーダム防湿法は、根管治療の際に唾液の混入による細菌感染を防ぐために、広く使用されています。

唾液には多くの細菌が含まれており、これが治療中に根管内に入ると、治療後の再発リスクが高まります。しかしラバーダムの使用により、唾液の侵入を防ぎ、根管内の清潔な環境を保てます。

さらに、ラバーダムは薬の漏れを防げます。根管治療では複数の薬剤を使用しますが、薬剤が口腔内に漏れると、粘膜に刺激を与え、不快感を引き起こします。 また、根管治療に使われるファイルは先が尖っており、万が一お口のなかに落ちてしまうと粘膜を傷つける恐れがあります。そこでラバーダムを使用すると、器具が直接お口のなかに落ちることを防げます。

マイクロスコープ

マイクロスコープは、手術用の顕微鏡を使って患部を拡大し、精密な治療ができるようになる装置です。そのため、マイクロスコープを使用すると難易度の高い処置も高精度で行えるようになります。

まとめ

まとめ

ここまで根管治療で用いる歯科用CTについてお伝えしてきました。 根管治療で用いる歯科用CTについて要点をまとめると以下のとおりです。

  • 歯科用CT(Computed Tomography)は、X線を用いた断層撮影とコンピューターによるデータ処理や再構成により、顎骨や神経、血管、歯周組織の状態を三次元画像で正確に把握する精密機器のこと
  • 歯科用CTを用いると、治療前に顎や歯、さらには鼻腔や粘膜の状態など従来の二次元画像では得られなかった情報を三次元で詳細に把握できる
  • 妊娠中や妊娠の可能性がある方、体内に金属が埋め込まれている方は、歯科用CTを含むすべてのレントゲン撮影の前に歯科医師に相談すべき

このように、歯科用CTの使用により患者さん一人ひとりの根管の形状を事前に正確に把握できるため、根管治療の成功率が高まります。 しかし、歯科用CTを使用できないこともあるので、検討している場合は、担当医ときちんと相談しましょう。 最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 / 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) / 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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