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根管治療後の再発率は高い?むし歯再発の原因や予防方法も解説

根管治療後の再発率は高い?むし歯再発の原因や予防方法も解説

根管治療を受けた歯でも、その後しばらくして再び症状が現れることがあります。特に日本では根管治療の成功率が低いことが知られており、再発・再治療が珍しくありません。本章では、根管治療後にむし歯や感染が再発する割合やその国際的な状況、歯科医師による差を解説します。

根管治療後のむし歯再発率

根管治療後のむし歯再発率

日本での根管治療後の再発率を教えてください
根管治療後の再発率とは、治療した歯に再び感染や痛みが起こる割合を指します。日本の保険診療下のデータでは、根管治療後のレントゲン検査で再発が認められた例は45~70%と高い割合にのぼっています。また、海外先進国と比べると日本の成功率はかなり低く、アメリカでは約90%もの高い成功率が報告されています。つまり、日本では10本中5~7本が再治療を必要とすると推測されます。このように、国内外で再発率には大きな差があり、歯科医療の質にも注目すべき違いがあります。
国によって根管治療後の再発率に差はありますか?
先進国では専門医が行う精密治療が普及しているため、根管治療の成功率はとても高い傾向にあります。例えばアメリカやスウェーデンの歯科クリニックでは約90%の成功率が報告されています。一方、日本では保険診療の制約からラバーダム(唾液遮断シート)やマイクロスコープの使用が限定されることが多く、結果的に成功率は30~50%程度にとどまっています。設備や治療体制の違いが、国別の再発率の差につながっているのです。
歯科医師によって根管治療後の再発率に違いは生じますか?
根管治療の成功率には、治療を行う歯科医師の経験や技術も大きく影響します。歯内療法の専門家や大学病院の治療成績では、成功率がおおむね90%以上と高い一方、一般開業医による治療では65~75%とかなり低くなるという調査もあります。これは、専門医がマイクロスコープや高度な器具を用いて繊細に治療を行うのに対し、一般歯科医では時間や装備の制約で十分な処置が難しい場合があるためです。したがって、高い成功率を目指すには、経験豊富な歯科医師や専門性の高い医院での治療を選ぶことが重要です。

根管治療を行ってもむし歯が再発しやすい理由

根管治療を行ってもむし歯が再発しやすい理由

なぜ根管治療後も再びむし歯になるのですか?
根管治療をした歯が再びむし歯や感染を起こす背景には、見えない細菌が関わっています。唾液には500~700種類もの常在菌が含まれ、治療中にこれらが歯の根に入り込むと感染が続く原因になります。再発の主な原因として、5つの原因が挙げられます。
  • 治療中にラバーダムなどを使わず唾液が混入した
  • 根管内の汚染組織を完全に除去しきれなかった
  • 根管充填(薬や詰め物で封鎖する処置)が不十分だった
  • 被せ物や詰め物と歯の接合部分に隙間ができてしまった
  • 治療後に外部から新たに細菌が侵入した

などが挙げられます。特に、ラバーダム不使用や汚れの取り残しがあると、ごくわずかな汚染でも感染が再燃しやすくなります。

むし歯が再発しにくい治療法を教えてください
むし歯の再発を防ぐには、根管内を無菌的に保つ徹底した処置が求められます。治療時にはラバーダムで治療する歯だけを隔離し、唾液中の菌が入らないようにするのが基本です。また、形状の複雑な根管には弾力性の高いニッケルチタン製ファイルを用い、根管の奥深くまでしっかりと清掃します。治療には歯科用顕微鏡で見逃しやすい細かい部位まで観察したり、消毒薬や抗菌薬を十分に浸透させたりすることで、再発率を下げることができます。こうした精密根管治療を標準とする医院では、再発しにくい治療結果が得られやすいのです。

根管治療後のむし歯再発を防ぐ方法

根管治療後のむし歯再発を防ぐ方法

根管治療後のむし歯再発リスクを抑えるためのセルフケア方法を教えてください
根管治療後は、歯の構造が弱くなっているため、セルフケアが大切です。まず丁寧な歯磨きを行います。フッ素入り歯磨き粉で1日2回以上磨き、治療した歯の周りを特に念入りに清掃します。歯と歯の間に食べかすが溜まらないよう、デンタルフロス歯間ブラシも毎日使いましょう。加えて、口腔内の菌の増殖を抑えるために抗菌性マウスウォッシュを併用するのも効果的です。食事面では砂糖を控え、ビタミンやカルシウムを含むバランスのよい食事で唾液の分泌を促し、歯の健康を維持しましょう。さらに、定期検診で歯科医師のチェックを受けることも重要です。治療後も少なくとも半年に一度は受診し、レントゲンや歯科医による診察で根管の状態を確認してもらいます。これにより、軽い炎症や小さな膿の袋など、万が一再発の兆候があっても早期に発見でき、速やかに対応できます。
根管治療後の再発が疑われる場合の対処法を教えてください
もし治療した歯に違和感や痛み、あるいは歯茎の腫れなどの症状が現れたら、早めに歯科医院を受診してください。歯科医師はレントゲンや歯科用CTで歯の根元まで詳しく調べ、根管内部に炎症や病変がないか確認します。レントゲンで異常が認められた場合は、再根管治療が必要になります。再治療では、前回と同じ治療法を行う場合もあれば、外科的な方法を組み合わせることもあります。再治療の成功率を高めるには、経験豊富な専門医や自費診療での精密治療を検討すると安心です。

根管治療後の再発を避けるための歯科医院の選び方

根管治療後の再発を避けるための歯科医院の選び方

根管治療後の再発率が低い歯科医院はどのように探せばよいですか?
根管治療の質は、選ぶ歯科医院で大きく変わります。再発率が低い医院を見つけるポイントは、専門性と設備です。まず、歯科保存学会の認定医や日本歯内療法学会(歯内療法専門医)の資格を持つ歯科医師が在籍しているかを確認しましょう。これらの専門医は根管治療に特化した研修を受けており、高度な症例にも対応できます。また、マイクロスコープや歯科用CT、電気的根管長測定器など、精密機器が揃っている医院を選ぶと安心です。実際、経験豊富な歯科医院ではラバーダムやマイクロスコープといった設備が一般的に用意されています。
再発率が低い歯科医院とそうでない歯科医院の違いは何ですか?
再発率の高低は、保険診療中心の医院と自費診療中心の医院でも異なります。保険診療では治療にかけられる時間や回数、使用できる器材が限定される場合が多いです。例えば、保険の根管治療では5~7回ほど通院するのが一般的で、ラバーダムの使用も制限されることがあります。一方、再発率が低いとされる精密根管治療では、治療を1~2回で集中して終わらせ、常にラバーダムを装着しながら治療を行います。また、歯科用顕微鏡や高精度な器具を積極的に使い、根管の汚れや隙間を徹底的に処理します。このように、治療の進め方や技術・設備への投資が違うため、医院によって再発率に大きな差が生じるのです。
再発率が低いとされる根管治療は自由診療になりますか?
根管治療のなかでも特に精密な治療(精密根管治療)は、ほとんどの場合で自由診療(保険外)となることが多いです。保険診療では使えない高度な機器や材料を用いるため、追加費用がかかるのです。例えば、保険診療では制限のあるマイクロスコープや最新器具を使い、治療時間を十分に確保する精密治療は自由診療扱いです。しかし、保険の枠内でも腕のよい歯科医師はいますし、必ずしも自由診療でなければよい治療が受けられないわけではありません。ただ、再発リスクを極力減らしたい場合は、自由診療であっても専門医による精密治療を検討すると安心です。

編集部まとめ

編集部まとめ

根管治療後の再発を防ぐには、治療そのものの質とその後のケアが両方とも重要です。日本では治療後の再発率が他国よりも高いので、精密な治療を行う歯科医院を選び、歯科医師や設備のレベルを確認しましょう。また、家庭でも毎日の丁寧な歯磨きや定期検診によって歯を守る努力が必要です。ラバーダムを使った無菌的な治療と、高い技術を持つ歯科医師による治療で再発リスクを減らし、日常では歯磨きや生活習慣で歯を守りましょう。これらのポイントを押さえることで、根管治療後も健康な状態を長く維持できます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 京之介歯科医師(歯科医)

松浦 京之介歯科医師(歯科医)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:2019年 福岡歯科大学卒業、2020年 広島大学病院研修修了、2020年 静岡県、神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務、2023年 医療法人高輪会にて勤務、2024年 合同会社House Call Agencyを起業 / 資格:歯科医師免許 / 所属学会:日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会

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