現在治療中の歯について、主治医以外の歯科医師に意見を求めることは、決して珍しいことではありません。十分説明を受けているはずなのに理解しにくい、ほかの治療方法についても知りたいと思うのは自然なことです。
そのようなときはセカンドオピニオンを利用しましょう。セカンドオピニオンは複数の歯科医師の意見を聞くことで、患者さんがより適した治療方法を選択できるものです。
セカンドオピニオンというとがんなどの一部の病気に限られるイメージがありますが、歯科治療でも行われます。
本記事では根管治療のセカンドオピニオンについて解説します。
根管治療のセカンドオピニオンの必要性
- 根管治療について教えてください。
- 根管治療とは神経を抜くと一般的にいわれる治療方法です。歯のなかには神経や血管を含む歯髄という組織がありますが、むし歯や外傷によって炎症や組織が死んでしまうと、この歯髄を取り除く根管治療が必要になります。治療では根管内の細菌をできるだけ取り除くこと、再び菌が侵入するのを防ぐことが重要です。治療の順序としては、レントゲンやマイクロスコープなどを使って検査・診断を行います。次にむし歯の部分の除去と洗浄をしてしっかり消毒を行い、菌が再び侵入しないように封鎖します。最後に土台と被せものを形成して終了です。症状の進行度合いによっては消毒の過程を何回か繰り返す場合もあるので、複数回通院が必要となるケースもあります。これは菌が残っていると再び根管治療が必要となるからです。
- セカンドオピニオンとはなんですか?
- セカンドオピニオンとは主治医とは別の歯科医師に意見を求めることです。セカンドオピニオンは、ほかの歯科医師の意見を参考にすることで選択肢が広がり、より適した治療法を患者さんが選択できるようになります。セカンドオピニオンの基本は情報提供であり治療ではありません。前の歯科医師の検査データや治療方針をもとに、その検査や治療方針が妥当なのか別の選択肢があるのか、第三者として相談を聞いて意見を述べるに留まります。セカンドオピニオンを受けるには主治医に紹介状(診療情報提供書)や画像データ・診断記録などを作成してもらう必要があります。治療方針に関して気になることがあれば、まずは納得するまで主治医に質問してください。それでも理解しにくい部分があればセカンドオピニオンを利用してもよいでしょう。ここで注意しなくてはならないのがセカンドオピニオンは不満のはけ口ではないことです。治療方針や担当医師が気に入らないからといってほかの歯科を受診するのは、ただの転院であってセカンドオピニオンではありません。
- 根管治療のセカンドオピニオンの必要性を教えてください。
- セカンドオピニオンはがんなどのときに利用するイメージがあるかもしれませんが、実際は歯科治療でも行われます。インプラントをすすめられたけどブリッジなどほかの情報も知りたいといった場合などです。根管治療は歯髄を除去して菌の再侵入を防ぐ治療です。検査・歯髄の除去・消毒・密閉・歯の形成とさまざまな処置が続くので、患者さんにとっては複雑に感じられるかもしれません。きちんと説明を受けて同意したうえで治療を開始することが望ましいので、納得できるまで主治医に質問することが重要です。それでもほかの情報も知りたいときにはセカンドオピニオンの助言が必要です。また治療したにも関わらず菌が再侵入したり、一般的な治療ができない程症状が進行してしまったりした場合には、骨まで炎症が広がるケースがあります。その際は抜歯や歯根端切除などの外科的な処置となるケースもあり、この場合にはセカンドオピニオンが必要となってきます。
- 根管治療のセカンドオピニオンを受ける方法を教えてください。
- まずは主治医の先生にセカンドオピニオンを受けたい旨を申し出ましょう。もし直接伝えにくいのであれば歯科助手や医療事務の方に伝えてもよいでしょう。主治医の先生から紹介状(診療情報提供書)やレントゲンの画像データ、診断やこれまでの治療の経緯などの書類を用意してもらいます。希望するセカンドオピニオン先があればご自身で予約を入れてください。予約の段階で手続きに必要な書類などを確認しておきましょう。主治医の先生にセカンドオピニオン先を紹介してもらえるケースもありますが、自分で探すことも想定しておいてください。セカンドオピニオンを受ける前に、これまでの経緯や質問や伝えたいことなどをメモにまとめておくと便利です。当日は可能なかぎり信頼できる人を同行させるとよいでしょう。セカンドオピニオンの基本は相談なので、このときに治療は行われません。またセカンドオピニオンが即転院ではありません。セカンドオピニオンを受けたら、主治医の意見とセカンドオピニオンの先生の意見を総合的に判断し今後の治療方針を決めていきます。
- 受ける前に診療状況などの情報は必要ですか?
- セカンドオピニオンでは診療状況などの情報が必要となります。セカンドオピニオンは新たな検査は行わず、提供された検査や治療のデータをもとに助言を行うので、情報が提供されないと何の助言もできません。必ず主治医の先生に相談して、これまでの経緯や画像データなどを用意してもらいましょう。診療状況の情報がない場合は単なる転院や転院先探しであって、セカンドオピニオンとはいいません。この場合は初診扱いとなり検査のやり直しが考えられます。
根管治療のセカンドオピニオンのメリット・デメリット
- 根管治療のセカンドオピニオンのメリットはありますか?
- メリットとしてまずは選択肢が広がることがあげられます。同じ症状でも治療法まで同じとは限りません。複数の歯科医師の意見を聞くことで選択肢が広がり、より納得できる治療法を自分自身で選択できるようになるでしょう。また、主治医とセカンドオピニオンで同じ意見だった場合二人の歯科医師が同じ治療法を提案するので、自分自身に適した治療法といえます。主治医とセカンドオピニオンの意見が違ったとしても、より多くの医療の知識や理解をえることができ疑問が解決し前向きに治療に臨めます。根管治療に限らず治療には少なからず不安があるのではないでしょうか。セカンドオピニオンを受けることで、少しでも治療に前向きになれるかもしれません。
- 根管治療のセカンドオピニオンのデメリットはありますか?
- デメリットは費用も時間もかかる点があげられます。セカンドオピニオンは保険適用外なので、全額自己負担です。病院によって費用は異なりますが、30分の相談で20,000円必要な場合もあります。主治医の先生に紹介状などを作成してもらったり、セカンドオピニオン先の予約を数週間待たされたりと時間を要します。根管治療の場合、現在進行形で痛みがあるにも関わらず時間がかかるのはとてもつらいかもしれません。ほかにデメリットとして、期待していた意見と違う場合があります。現在の治療法に疑問があるのに同じ提案だった、現在の主治医よりも深刻な内容が告げられたなどです。セカンドオピニオンはデメリットも考慮したうえで利用する必要があります。
根管治療のセカンドオピニオンを受けるにあたって
- 根管治療のセカンドオピニオンを受けるときの心構えはありますか?
- セカンドオピニオンを受ける前には主治医の提案をよく理解しておくことが大切です。理解できなければ理解できるまで主治医に質問しましょう。専門用語や治療方針など理解できていない状態でセカンドオピニオンを受けると、比較や検証ができず混乱するかもしれません。なぜセカンドオピニオンを受けたいのか、自分の気持ちを整理することも大切です。またセカンドオピニオンは苦情や批判の受け口ではないことに留意してください。できるだけ幅広い情報を集めてから決めたい、とことん納得するために別の先生の意見も聞いてみたい、という心構えで臨みましょう。
- セカンドオピニオンで治療方針の変更の可能性はありますか?
- セカンドオピニオンによって治療方針が変更される可能性はあります。複数の歯科医師の意見を聞くことで選択肢が広がるので、治療方針に対しての考えが変化する場合があります。考え方の変化を主治医に報告したうえで、再度治療方法を相談しましょう。患者さんの意思が尊重され、より適した治療方法へ変更されます。また、セカンドオピニオン先で治療を受けることになった場合は、あらためて紹介状などで引き継ぎが行われます。
- セカンドオピニオンを受ける場合はどのような医院を選ぶべきですか?
- 近年はセカンドオピニオンが可能な歯科医も増えてきていますが、より専門的な歯科医を選ぶ方がよいでしょう。同じ歯科医でも得意不得意はあります。ホームページにも記載があるので参考にしてもよいかもしれません。カウンセリングをしっかり行う歯科医を選んでください。主治医の先生に紹介してもらう方法もあります。開業医の判断を高度な医療機関から確認してもらうという観点でいえば、開業医から開業医へのセカンドオピニオンではなく、総合病院や大学病院へ相談するのが良策といえます。
- 根管治療のセカンドオピニオンはどのくらい費用がかかりますか?
- セカンドオピニオンは保険適用外なので全額自己負担となります。病院によって費用は異なりますが、30分10,000円から40,000円程の費用が必要です。ホームページなどで事前に確認しておきましょう。セカンドオピニオンを受けるための紹介状などは5,000円程が相場です。こちらは保険適用なので3割負担の方の場合は1,500円程度です。セカンドオピニオンでは基本的に検査や診断は行いませんが、精密検査などを行う場合は検査費がかかりますし、治療をセカンドオピニオン先に変更する場合は初診料なども必要になってきます。
編集部まとめ
セカンドオピニオンは複数の歯科医師の意見を聞いて、患者さんがよりよい選択をする制度です。
まずは主治医の説明を聞いてわからないことは質問することが大切です。そのうえでできるだけ多くの情報を集めたり、納得するためにほかの先生に助言を求めるのがセカンドオピニオンになります。
セカンドオピニオンを受けることで理解が深まり、納得して治療が受けられます。治療は不安なことも少なくないですが、少しでも前向きになれたら幸いです。
参考文献