感染根管治療は、歯の内部に生じた感染を取り除き、感染を回復させるための処置です。治療では、根管内の感染組織や細菌を除去し、その後、根管を清潔にして封鎖します。ときには、根尖性歯周炎という状態に至り、根の先端に膿がたまることがあります。
本記事では膿を出す感染根管治療について、以下の点を中心にご紹介します。
- 根管治療とは
- 尖性歯周炎を治すための感染根管治療について
- 感染根管治療も含む根管治療の成功率
根管治療とは
根管治療は、むし歯や外傷によって歯髄が感染したり壊死したりする際に行われる治療です。神経や血管を含む歯髄を取り除き、根の先から細菌や毒素が広がるのを防ぐため、細菌を徹底的に除去し、歯の中を消毒します。
この治療により、歯の機能を維持し、さまざまな合併症を予防できます。再感染や再治療の場合もありますが、根管治療は歯の保存にとって重要な役割を果たします。
治療後は、歯の状態を管理し、再発を防ぐための措置を行います。根管治療は、歯を失うリスクを減らし、患者さんの口腔健康を維持するのに不可欠です。
根管治療の流れ
根管治療はどのような流れで進められるのでしょうか?ここからは、初診から被せ物の治療まで流れを詳しく解説します。
初診・検査
根管治療の初診では、まず口腔内を詳細に検査し、レントゲンや必要に応じてCT撮影を行います。痛みのある歯だけでなく、全ての歯の状態を確認し、部分的なレントゲンや全体的なレントゲン、必要に応じてCT撮影を行います。
その後、検査結果を元にカウンセリングを行い、治療の必要性や期間、費用などを説明します。痛みや腫れがある場合には応急処置も行います。
さらに、マイクロスコープやレントゲン、CTなどを用いて根の形や問題点を詳細に診断し、患者さんに適切な治療計画を立てます。診断結果によって治療方法が変わるため、事前の診査・診断が重要であり、抜髄の条件も患者さんによって異なります。
根管内の掃除
まず、根管治療では、根管内の神経や感染した組織を徹底的に掃除し、細菌を除去します。掃除が完了したら、根管内を薬品で洗浄して殺菌処理を行います。その後、一時的に仮歯を装着して終了します。
保険診療では複数回の治療が必要ですが、自費の精密根管治療では1回で汚れを取り除きます。次回の予約は、症状の変化を確認するために1週間前後をあけます。
神経を取り除き、歯内の細菌を減らす作業は慎重に行われ、特に初期治療の段階では、器具の徹底的な滅菌やラバーダムによる隔離、細菌感染の徹底的な除去、根の形を保護することが重要です。再根管治療の場合には、以前に詰められた根充材を取り除く作業も行います。
根管充填
根管治療の最終段階では、症状の確認を行い、炎症や膿がないことを確認します。その後、根管の先端までしっかりと詰め物をし、すき間が生じないようにします。
根管内の空間が密閉され、再感染のリスクが軽減されるように、殺菌が十分に行われた後は、樹脂状の詰め物であるガッタパーチャを使用します。
一部のケースでは、MTAセメントと呼ばれる材料が使用されることもあります。治療が終了したら、レントゲン撮影を行い、根管内に詰め物が適切に配置されたことを確認します。患者さんの噛み合わせや快適さも確認し、必要に応じて調整を行います。
土台と被せ物の治療
歯の破折や再感染を防ぐために、根管治療後はファイバーポストを立て、仮歯を装着して治療を終えます。その後、適切な被せ物が欠かせません。土台を丈夫に封鎖し、被せ物を支えるための基礎を築きます。
次に、精密な被せ物を設置し、歯を保護しながら自然な噛み合わせを再現します。被せ物は細菌の侵入を防ぐために丁寧に接着され、歯との密着性を確保します。
治療後は、患者さんが快適に噛みしめられるよう、被せ物の調整を行い、適切な口腔衛生を維持するよう指導しされます。歯を保護することで、再発や感染のリスクを抑えます。
根管治療で治らない場合について
根管治療は、むし歯や外傷によって歯髄が感染したり壊死したりする際に行われる治療ですが、根管治療で治らない場合もあります。以下で治らない場合について解説します。
歯の根が割れている場合
歯の根が割れている場合は、歯科用顕微鏡で根の割れ方や歯を残せるのかを確認し、適切な治療方針を立てます。複数の根を持つ歯の場合、割れた根のみを抜歯し、残った歯根を利用して被せ物やブリッジを作ることもあります。
垂直性の割れは抜歯が必要な場合が少なくないですが、水平性の割れでは歯根を残してクラウンを行うことも可能です。根が大きく割れ感染が進んでいる場合は抜歯が必要ですが、症状がない場合や感染が軽度な場合は根管治療を選択することもあります。
ただし、金属を土台として使用すると根に負担がかかり、割れの原因になることがあるため注意が必要です。
根管の清掃が十分でなく、細菌がまだ根管内部に残っている場合
根管治療で治らない場合、根管内の清掃が不十分で細菌が残ってしまうことがあります。根管内に入り込んだ細菌は、根管の複雑な構造や枝分かれした部分に隠れて残りやすく、通常の治療では十分な殺菌・消毒が難しい場合があります。
また、治療のときに使用される拡大鏡や肉眼では根管の奥まで見えにくいため、細かな部分を見落としてしまうこともあります。
このような場合、根管内に細菌が残り、感染が再発して膿ができる可能性が高まります。顕微鏡を使用し、CT画像を参考にしながら治療を行うことで、根管の奥まで清掃・殺菌できる可能性が高まります。
しかし、顕微鏡を使用していても、適切な拡大倍率を選択せずに治療を行ったり、CT画像を適切に解析しなかったりすると、治療の成功率が低下することもあります。
根管治療の成功には、ラバーダム防湿の徹底や適切な薬剤の使用も重要です。根管治療の成功を高めるためには、患者さんと歯科医師でコミュニケーションを取り、適切な治療計画を立てることが重要です。
歯の根の先に膿が溜まっている場合
根尖性歯周炎は、歯の根の先に膿が溜まる状態で、膿が軽度であれば再度神経を消毒し膿を排出することで改善できます。しかし、膿が重度で周りの骨を溶かす可能性があるため、抜歯が必要な場合もあります。
根尖性歯周炎は慢性的な状態になり、膿が溜まると痛みや腫れが生じます。根管治療を行っても改善しない場合や、症状が悪化する場合は、根尖性歯周炎の治療が必要です。
治療の方法は、根管治療や抜歯、そして場合によっては手術的な処置が含まれます。歯科医師との相談を通じて適切な治療法を選択することが重要です。
根管治療後になる可能性がある根尖性歯周炎とは
根管治療後に生じる可能性がある根尖性歯周炎は、歯の内部に細菌感染が広がり、歯根の周囲の組織に炎症を引き起こす状態です。
歯髄炎が放置されると、歯根の尖端にある根尖孔から細菌感染が広がり、根尖性歯周炎が発症します。この炎症によって歯槽骨の内部に膿がたまり、歯槽骨が溶けて破壊されるため、激しい痛みや歯肉・顎の腫れが生じることもあります。
また、歯根の先端に溜まった膿が口内や皮膚に穴を開けて排出される場合もあります。
根管治療によって細菌数が減少し、体の免疫機能が働き始めると、炎症反応が引き起こされ、腫れや痛みが生じることがあります。
根管治療は、歯の中の細菌を減少させることで体の免疫機能を活性化し、細菌に対抗する力を高められる効果が期待できますが、一時的に症状が悪化するため注意が必要です
根尖性歯周炎を治すための感染根管治療について
根尖性歯周炎を治すための感染根管治療は、歯根の先端に溜まった膿や細菌を根管内から除去し、根尖部の炎症を解消する治療法です。以下で詳しく解説します。
感染根管治療とは
感染根管治療は、歯髄壊死や以前に治療された歯が細菌に感染した場合に行われます。根管内の細菌を除去し、歯髄と周囲の歯根を清掃することで膿の蓄積を防ぎます。
この治療を怠ると細菌が顎の骨に進行し、歯を失う可能性があるため、感染根管治療の徹底した清掃により膿が自然に排出され、治癒を促します。治療中には痛みや腫れがあることがありますが、適切な処置と管理によりこれらの症状は軽減されます。
治療後は定期的な検診が重要であり、歯の健康状態を確認し、再発を防ぐための措置を行います。感染根管治療は歯を保存するための重要な処置であり、早めの治療が重要です。</p
感染根管治療は痛い?
感染根管治療では、根管内の神経がすでに死んでいるため、通常の神経による痛みは感じません。しかし、処置中に歯が引っ張られる感覚や、根管外に押し出された汚染物による痛み、薬剤が患部に触れることで生じる痛みがあります。
処置前に痛みや腫れがある場合は、麻酔を行い治療を行います。治療後は2〜3日間、歯が浮いた感じや、ときにはフレアアップと呼ばれる強い腫れや痛みが生じることもあるため注意が必要です。</p
感染根管治療の流れ
感染根管治療について解説しましたが、ここからは、感染根管治療の流れについて解説します。
感染根管治療前の準備(ラバーダムの設置など)
感染根管治療の準備段階では、唾液が根管内に入らないようにするため、隔壁を作ります。隔壁はラバーダムを用いて患部を隔離します。
また、歯の頭部が大きく欠けている場合は、隔壁を設置するための準備として、コンポジットレジンで隔壁を作ります。
これにより、ラバーダムを正しく装着し、適切に仮詰めを行えます。この作業は、唾液中の細菌や消毒薬の飛散を防ぎ、安全性の高い治療を行うために重要です。
根管の掃除(膿を出すなど)・殺菌
感染根管治療では、まず感染した歯髄や腐敗した部分を取り除き、根管内をファイルという器具で丁寧に掃除します。この段階では、超音波ファイルやステンレスファイル、ニッケルチタンファイルなどを使用して、根管内のむし歯や細菌を除去します。
次に、根管内を洗浄し、殺菌します。機械的な手段で除去できない細菌に対して、消毒薬を使用して根管内を徹底的に洗浄します。この段階で、根管内の細菌数をできる限り減らし、感染を根本から治療します。
根管充填
根管内の殺菌が完了したら、根管充填の段階に進みます。通常、ガッタパーチャとバイオセラミクセメント(MTA)を使用して根管を充填します。
ただし、根尖の崩壊が進行している場合は、規格化されたガッターパーチャではなくバイオセラミクセメント(MTA)のみを充填することもあります。
根管内の細菌をできる限り減らした後、根管充填材をできるだけ緊密に充填します。このように、根管内にスペースを残さずに充填することで、細菌の増殖を抑えられます。この段階で根管内を適切に充填することが、治療の成功に重要な役割を果たします。
被せ物の治療
根管の治療が終了すると、被せ物の治療が行われます。細菌の再感染を防ぐために、根管内の細菌を減らした後は、歯の欠損部を補うためのコアと被せ物をしっかりと接着させることで、新たな細菌感染を防ぎ、歯を正常に機能させられます。
感染根管治療も含む根管治療の成功率
根管治療の成功率は、歯の状態によって異なります。 一般的に、健康な歯髄や歯髄炎の場合の成功率は高いですが、根尖病変のある歯髄壊死や再根管治療の場合、成功率は低下します。特に、根尖病変のある再根管治療では成功率がさらに低くなる傾向があります。
適切な根管治療が施された場合でも、治療後の経過には問題が生じる可能性があります。根管治療後4年後において、根尖部X線透過像が消失しない場合は治療の失敗とみなされることがあります。
日本における根管治療の現状は、根尖部X線透過像が50%以上みられる歯が多く、成功率が30〜50%であるとされています。このことから、根管治療の改善と成功率向上には、さらなる努力が必要であると考えられます。
まとめ
ここまで膿を出す感染根管治療についてお伝えしてきました。
インプラントの膿を出す感染根管治療の要点をまとめると以下の通りです。
- 根管治療は、むし歯や外傷によって歯髄が感染したり壊死したりする際に行われる治療のことで、歯の機能を維持し、さまざまな合併症を予防できる
- 感染根管治療は、根尖性歯周炎を解消するための治療で、根管内の細菌を徹底的に除去し、膿の排出を促進する
- 日本における根管治療の現状は、根尖部X線透過像が50%以上みられる歯が多く、成功率が30〜50%であるとされていることから、、根管治療の改善と成功率向上にはさらなる努力が必要
根管治療後は、膿が自然に排出されることで症状が改善されますが、治療後には、定期的に検診を受けケアすることも大切です。
ここまで、お読みいただきありがとうございました。