むし歯治療の1つに根管治療があります。むし歯が神経に到達する程、進行していた場合は根管治療を行います。
根管治療では神経を抜いたり細菌の除去を行ったりしますが、根管治療後ににおいが出ることもあるようです。
根管治療後ににおいが出るのはなぜなのでしょうか。本記事では根管治療後ににおいが出る原因や、においがしたときの対処法、予防方法を解説します。
根管治療後のにおいに悩まれている方は、ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。
根管治療後のにおいの原因
根管治療後ににおいが出るのはなぜなのでしょうか。歯周病や歯の破折などがない場合、根管治療後ににおいが出る原因として考えられるのは、主に次の2つです。
- 治療に使用した薬剤
- 歯茎から漏れた膿
根管治療では根管を洗浄・消毒した後、薬を詰めます。この薬が原因でにおいが出ている場合や、細菌が歯根に残っていて膿が発生することもにおいの原因です。
下記ではこれらの原因について解説します。
治療に使用した薬剤
根管治療後のにおいが気になっている方は、ご自身のお口の中のにおいを確認してみてください。薬品のようなにおいがする場合、原因は治療に使用した薬剤です。
根管治療は通常2〜3回行われ、治療中には仮蓋で歯を保護します。仮蓋が損傷すると、使用した薬剤が漏れるリスクがあります。
薬品のにおいなので苦手と感じる方は少なくありません。
歯茎から漏れた膿
歯茎から膿が出ている場合、その膿がにおいの原因となります。メチルメルカプタンという物質が含まれており、玉ねぎが腐ったようなにおいがします。
治療後に膿のにおいがする場合には、サイナストラクトやフィステルといった膿が出る穴が歯茎に開いている場合や歯周病による匂いなどが考えられます。前者に関しては膿の量はあまり多くなく、患者さんが穴の存在に気付いていないこともあるため、膿を感じることは少ないでしょう。
歯根に膿が溜まると身体の防御反応が働き、身体の外に膿を出そうとするそうです。そのため、膿が歯根の外に漏れ出しにおいが出るのです。
膿のにおいは根管治療中に発生することもあります。根管に溜まった膿を出す際ににおうことがあり、最初の根管治療のときににおうことがあるようです。
根管治療後のにおいの対処法
根管治療後ににおいが出た場合の対処法は、早期の行動が重要です。放置すると症状が悪化する可能性があります。
根管治療後のにおいの対処法には次の方法が挙げられます。
- 根管治療後(継続治療中)の歯に仮蓋がされている場合、新しい仮蓋に変える
- 根管治療完了後である場合、再度根管治療を行う
においの原因によって対処法は異なります。仮蓋の破損が原因の場合は、根管の中に入っている根管治療用の薬剤のにおいが破損部から漏れていることがあるので、新しい仮蓋に交換することで、においの改善ができるでしょう。
膿が原因の場合は、再度根管治療が必要になることもあります。
下記ではこれらのにおいの対処法について詳しく解説しているので、根管治療後のにおいについて悩まれている方は参考にしてみてください。
新しい仮蓋に変える
仮蓋のトラブルでにおいが出ている場合は、新しい仮蓋に変えてもらいましょう。仮蓋は長く使えるものではなく、装着してから2週間程しか持ちません。
そのため、仮蓋を装着して2週間前後経つと噛む力に耐え切れず、欠けたり割れたりすることがあります。早めに歯科医院に行き、仮蓋を変えてもらってください。
2週間経っていなくても、噛む力が強いと欠けたり割れたりします。見た目には異常がなくても、小さな傷が入っていることもあるでしょう。
少しでも薬品のにおいを感じたら担当医に相談してください。仮蓋のトラブルによってにおいが出ている場合は、仮蓋を交換することで改善できます。
再度根管治療を行う
根管治療が完了した歯からの膿が原因でにおいが出ている場合は、再度根管治療をする必要があるかもしれません。これは根管治療の難易度が高く、一度根管治療が完了した部分に再感染が起きて膿が出ることが原因です。また、二次むし歯からの感染や、歯周組織の問題や歯が割れていて膿んでいることもあるため、歯科医師に相談し適切な処置を受けましょう。膿がなくなればにおいはなくなります。
このように、根管治療完了後もにおいが発生することがあります。
根管治療が成功しても油断は禁物です。
根管治療に使う薬のにおい
根管治療を行う際に使われる薬には、水酸化カルシウム、FG、FC、ペリオドンなどがあります。近年は、水酸化カルシウム使う歯科医院が少なくありません。
水酸化カルシウムは強アルカリ性で、細菌を死滅させる効果を期待できるそうです。この水酸化カルシウムは無味無臭のため、においがありません。
FCやペリドンなどのホルムアルデビド系の薬は昔から使われている薬で、揮発性のため蒸発しやすいという特徴があります。そのため、仮蓋にトラブルが発生すると薬剤のにおいが漏れ、根管治療後のにおいの原因となるのです。
仮蓋を新しいものに変えても、薬のにおいが気になる方は、ホルマリン系の薬を使っていない歯科医院を探してみてはいかがでしょうか。
また、仮蓋の封鎖性が低いとそれもにおいが漏れる原因となります。この場合は、封鎖性の高い仮歯を使ってもらう方法があります。
根管治療後のにおいの予防方法
根管治療後(根管治療継続中)のにおいを予防するためには、仮蓋が破損したり外れないように注意することが大切です。
仮蓋は細菌の侵入を防ぐために装着するもので、食事をすることを前提としては考えられていません。そのため、補綴物と比べると弱いです。
硬いものは仮蓋の破損につながるので、できるだけ避けるようにしましょう。ガムやキャラメルなどの粘着性が高いものは、仮蓋が取れる原因となります。治療中は食べないようにしてください。
仮蓋ははじめやわらかく、徐々に固くなります。そのため、治療後すぐは特に注意しましょう。
仮蓋はしっかりと固定されているわけではないので、歯磨きをするときは優しく磨いてください。段差が気になったり、食べかすが挟まったりすることがありますが、そのときに指や舌で触るのもやめましょう。仮蓋が外れる原因となります。
本記事の後半では、根管治療後の口腔ケアについて紹介しています。口腔ケアをしっかりとすることで、根管治療後のにおいの予防につながるのでそちらも参考にしてみてください。
根管治療後や根管治療完了後のにおいを放置するとどうなる?
根管治療後のにおいを放置すると、どのようなことが起こるのでしょうか。そのままでもいいだろうと考える方もいるでしょう。
しかし、根管治療後のにおいを放置するのはおすすめできません。理由は以下のとおりです。
- 根管治療継続中の歯の治療が順調に進まなくなる可能性が生じる
- 根管治療継続中の歯の根管に入っている薬剤の種類によっては、歯周組織に悪影響を及ぼす場合がある
- 根管治療完了後の歯の歯茎から膿が出ている場合、再根管治療を行わずに放置していると、抜歯のリスクが高くなる
下記では根管治療後および根管治療完了後のにおいを放置するとどのようなことが起こるのか、詳しく解説していきます。
再治療が必要になる可能性がある
膿が出ている場合はもちろん、仮蓋にトラブルが起きている場合は早めに歯科医院に相談してください。
仮蓋が欠けたり割れたり、もしくは取れてしまった場合、放置するとそこから治療後の歯根に細菌が侵入する可能性があります。歯根に細菌が入ってしまうと、次の治療時にまた洗浄して薬を詰めなくてはなりません。
本来なら2~3回で終わる治療がいつまで経っても終わらないとなりかねないです。
膿は自然に消滅するものではありません。放置するとどんどん状態が悪化し、再治療が難しくなります。
次の項で詳しく解説しますが、再治療が難しくなると抜歯となる可能性もあります。早めに対処すれば歯を残せる可能性が高くなるので、少しでもにおいを感じたら歯科医院で受診するようにしましょう。
抜歯につながる
においを放置すると抜歯につながる可能性が高くなります。
先程もお伝えしたように、膿は自然に消えることはありません。それどころか放置するとどんどん増えていきます。
膿が増えると歯根の周りの顎の骨まで溶かすリスクが高くなります。そのため、抜歯につながるのです。
仮蓋のトラブルにより根管に細菌が入り、再治療ができない場合も抜歯となります。
歯を残すために根管治療をしていたはずなのに、抜歯となってはこれまでの治療が無意味となってしまいます。
そうならないように、においが気になったら歯科医院に相談するようにしてください。
根管治療後の口腔ケア
ここまで、根管治療後のにおいについて解説してきました。最後に根管治療後の口腔ケアについて紹介します。
根管治療をした歯は、治療前と同じ状態になることはありません。根管治療は神経を取り、根管を洗浄・消毒する治療です。
神経を抜いた歯は、神経を抜いていない歯と比べると弱いとされています。また、お口の中の状態や歯の状態によっても根管治療後の歯が長持ちするか変わってきます。
根管治療後の歯を長持ちさせるためには、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
- 歯に負担をかけない
- 歯磨きで汚れを落とす
- 詰め物や被せ物を新しくする
ここではこれら3つについて紹介します。
歯に負担をかけない
お口の中の状態は一人ひとり違い、根管治療後の予後がよい歯と悪い歯があります。根管の形状が複雑だったり歯根が割れていたりする歯は予後が悪いとされています。
このほかにも、よく使う歯や残っている歯の本数が少ないと予後が悪くなるようです。特定の歯に負担がかかり、歯が疲労しやすくなるためです。
根管治療をした歯に力が集中している場合は、その歯に負担をかけないようにしましょう。噛み合わせを調整したりお口の中の状態を整えたりすることで改善できます。
噛み合わせの悪さや特定の歯に負担がかかっている状態は、仮蓋の破損にもつながりかねません。根管治療と一緒に噛み合わせの改善やお口の中の状態の改善も一緒に行うといいでしょう。
歯磨きで汚れを落とす
神経を抜いた歯はむし歯になっても痛みを感じたり冷たいものや熱いものがしみたりすることがありません。そのため、再びむし歯になっても気付きにくいです。
むし歯がひどくなり根管内部まで進行したら、再度根管治療をする必要があります。むし歯の再発を繰り返すと、歯の保存も難しくなるでしょう。
そうならないように、むし歯にならないように注意することが大切です。ご自身でできる対策として、しっかりと歯磨きをして歯についた汚れを落とすことが挙げられます。
歯と歯の間のようにすき間があって磨きにくい部分は、フロスを使って落とすといいでしょう。
ただし、根管治療中で仮蓋の状態の場合はフロスの使用はおすすめできません。仮蓋が外れる可能性があるからです。
定期的に歯科医院に通い、むし歯になっていないかチェックしてもらうのもおすすめです。歯科医院では自分では落としきれない汚れを落としてもらうこともできます。
詰め物や被せ物を新しくする
根管治療が終わったら、被せ物や詰め物を装着します。すでに被せ物や詰め物が装着してあっても、根管治療後の歯の状態にあわせて新しくします。
すでに根管治療が終わっていても注意が必要です。根管治療後のにおいの原因として、膿が漏れている可能性があることをお伝えしましたが、詰め物や被せ物の劣化が引き金になっていることもあるそうです。
保険診療で使われる銀歯は天然歯よりも硬いため、使っているうちに変形し段差やすき間が生じることがあります。その段差やすき間に食べかすが溜まると細菌が繫殖します。
むし歯や歯周病になるリスクがあり、放置するとどんどん悪化し、においの原因となる膿が溜まることにつながるのです。
銀歯を外してみたら、むし歯で真っ黒になっていたという事例もあるそうです。
詰め物や被せ物があっていない、破損しているなどのトラブルがある場合は速やかに歯科医院で受診し、詰め物や被せ物を新しくしてもらいましょう。
まとめ
本記事では根管治療後のにおいについて解説しました。根管治療後のにおいの原因は歯周病や歯の破折などがない場合、薬品と膿にあります。
いずれの場合も放置すると状態が悪化する原因となるので、少しでも違和感を覚えたら歯科医院に相談しましょう。
根管治療は自分の歯を保存するために行われる治療です。しかし、根管治療後の歯は弱くなるという側面もあります。
せっかくした治療が無駄にならないように、根管治療後は適切なケアが大切です。本記事では根管治療後のケアについても紹介していますので、参考にしていただけますと幸いです。
参考文献