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根管治療

根管治療における土台とは?土台の目的や種類について解説

根管治療における土台とは?土台の目的や種類について解説

根管治療には、土台を築造するというプロセスがあります。一見すると、歯の根の治療とは関係のないもののように感じますが、実際は必要不可欠なプロセスといえます。なぜなら土台を築造しなければ、失われた歯の審美性や機能性を回復することができないからです。ここではそんな根管治療における土台の目的や種類、それぞれの特徴について詳しく解説します。ひと言で土台といっても実に多くの種類があるため、自分に合ったものを選ぶ必要があります。

根管治療における歯の土台とは

根管治療における歯の土台とは 歯の土台の目的や役割を理解するために、まずは根管治療の基本事項を確認しておきましょう。

そもそも根管治療とは

根管治療とは、むし歯菌に侵された歯髄(しずい)を取り除き、根管内を無菌化するために清掃する処置です。歯髄が収まっている根管はとても細く、暗く、複雑な構造を呈しているため、清掃によって無菌化するにはそれなりの期間を要します。根管内の無菌化が達成されたら、ガッタパーチャと呼ばれる樹脂と殺菌作用が期待できる薬剤を充填して、今回のテーマである土台の築造へと移行します。

根管治療における土台の目的

根管治療における土台の目的は、歯の補強です。上段で解説した「根管充填」までは根管内の補強にとどまりますが、その状態ではまだ歯が持つ本来の審美性と機能性を回復できません。いわゆる被せ物を装着しなければならないのです。その際に文字通り“土台”となるのがコアと呼ばれるもので、歯を補強する役割を担います。

歯の土台の種類

歯の土台の種類 歯の土台にあたるコアは、メタルコア、レジンコア、ファイバーコアの3つに大きく分けられます。

  • メタルコア
  • レジンコア
  • ファイバーコア

被せ物や詰め物の材料と同様、メタルコアとレジンコアには保険が適用されます。ファイバーコアは特殊な材料を使用することから、原則として保険が適用されません。費用が高くなる分、ファイバーコアにはたくさんのメリットを伴います。

メタルコア

メタルコア ここでは、メタルコアの特徴とメリット・デメリットについて説明します。

メタルコアの特徴

メタルコアは、保険診療で作ることができる歯の土台です。文字通り金属製の土台で、強度が極めて高いです。原材料費も比較的安いことから、一般的に広く使用されているコアといえます。コアは、口腔には露出しない部分に使用するパーツであるため、金属を使うことで大きなメリットが得られそうなものですが、意外にデメリットも多い点に注意が必要です。

メタルコアのメリット

メタルコアのメリットとしては、次の3点が挙げられます。

メリット1:金属製なので強度が高く、壊れにくい
メタルコアの特長として第一に挙げられるのは、強度の高さです。金属で作られているため、強い力がかかっても壊れることはまずありません。この点は、他のコアに優っている特性であり、ケースによっては大きなメリットが得られます。コアの破折の回避を最優先に考える場合は、メタルコアが適しているといえます。

メリット2:治療プロセスがシンプル
メタルコアを作製するプロセスは至ってシンプルです。歯型を採って模型を作り、その上でワックスを用いたコアの原型を作ります。それを鋳造することで、メタルコアが完成します。メタルコアの完成度は、歯科医師や歯科技工士の技術・知識・経験に大きく左右されないという点において、他の治療法よりやや優れているといえるでしょう。

メリット3:保険が適用されるため費用が安い
上述したように、メタルコアには保険が適用されます。原材料も比較的安価であることから、治療費を安く抑えられるというメリットがあります。

メタルコアのデメリット

デメリット1:コアが歯よりも硬いため、歯根破折のリスクが高くなる
メタルコアの強度が高く、壊れにくいという点は、メリットであると同時にデメリットでもあります。なぜならメタルコアは歯よりも硬いことから、歯根破折のリスクが高くなるからです。これは噛んだ時にコアがくさび状の力を発揮して、歯根を割くような作用を引き起こすことが原因となります。実際、臨床の現場では、メタルコアがくさびを打ち込むような形で歯根破折を招いたケースが散見されます。被せ物の土台に関しては、強度が高すぎることで歯に悪影響を及ぼす場合もあるのです。

デメリット2:歯を大きく削らなければならない
メタルコアを装着するためには、レジンコアやファイバーコアよりも多くの歯質を削らなければなりません。それはメタルコアが歯型を採って、ワックスアップした原型を鋳造しなければ作れない装置だからです。歯質を大きく削るということは、それだけ歯にたくさんの負担がかかることを意味します。具体的には歯質が薄くなることで、破折が起こりやすくなります。

デメリット3:歯質との適合性が比較的低い
メタルコアは、鋳造によって製作することから、歯質との適合性はあまり高くありません。銀歯と同様、歯質との間にすき間が生じやすく、再感染のリスクが比較的高いといえるでしょう。また、精度の低さは、コアの脱落の原因ともなる点に注意が必要です。

デメリット4:再治療の時の除去が難しい
メタルコアはその性質上、撤去する際に苦労することが多いです。むし歯の再発などで再根管治療が必要となった場合は、必ずメタルコアを外さなければならないのですが、その際、歯質にダメージが及ぶことも珍しくありません。

デメリット5:金属イオンが溶け出すリスクがある
メタルコアも銀歯と同じように歯科用合金で作られています。その一部が金属イオンとして溶出すれば、金属アレルギーのリスクが生じます。歯茎が黒ずむメタルタトゥーの原因になることもあります。つまり、メタルコアは安全面や健康面におけるデメリットも大きい土台といえるのです。

レジンコア

レジンコア 次に、レジンコアの特徴とメリット・デメリットについて説明します。

レジンコアの特徴

レジンコアとは、歯科用プラスチックであるコンポジットレジンで作られた土台です。コンポジットレジンは白色を呈しているため、メタルコアよりも審美性に優れています。取り扱いが容易で保険も適用されますが、すべてがプラスチックで構成されているわけではないため、その点は注意が必要です。保険診療のレジンコアには、金属のピンを使用することから、メタルコアと同様のデメリットもいくつか伴います。

レジンコアのメリット

メリット1:メタルコアよりも歯を削る量が少ない
レジンコアは、コンポジットレジン修復と同じような流れで装着することができます。メタルコアのような鋳造というプロセスは踏まないことから、残った歯質に合わせる形で装着できるのです。その結果、歯を削る量も少なくなります

メリット2:メタルコアよりも歯根破折のリスクが少ない
メタルコアは強度の高さゆえに、くさび状の力を発揮して歯根を破折する可能性が高くなりますが、レジンコアではそのリスクを抑えられます。そもそもレジンコアは歯質よりやわらかいので、歯根を割るような力が生じることもないのです。また、歯質との適合性がメタルコアよりも高いことから、不要なすき間も生じにくくなります

メリット3:金属イオンの溶出が起こりにくい
上述したように、保険診療のレジンコアでは一部に金属材料が用いられます。そのため金属アレルギーやメタルタトゥーが起こる可能性もあるのですが、そのリスクは極めて低いといえます。なぜならレジンコアで用いる金属材料は、ピンと呼ばれる細い棒だからです。それをレジンコアの中心部に設置して軸としていることから、唾液などの刺激に晒されることもほとんどないのです。

メリット4:保険が適用されるため費用が安い
レジンコアには、保険が適用されます。メタルコアと同様、1〜3負担で治療が受けられるので、医療費を抑制できます。とくにレジンは材料費が安く、治療費が高くなることはまずありません。

レジンコアのデメリット

デメリット1:強度はそれほど高くない
レジンは、取り扱いが容易で、審美性にも優れた材料ですが、強度の面でメタルコアに劣ります。歯に対して極端に強い力が加わると、土台であるレジンコアが壊れてしまうこともあるでしょう。ケースによっては、歯根まで破折することもあります。

デメリット2:ファイバーコアよりも柔軟性や耐久性が低い
ファイバーコアは、柔軟性と耐久性に優れた土台です。それと比較するとレジンコアは、圧力に対して柔軟に対応できず、経年的な劣化も起こりやすいといえます。ですから、歯に大きな負担がかからず、長期間使い続けることができるコアを希望する場合は、ファイバーコアの方が適しているといえます。

デメリット3:治療結果が術者の技術や経験に左右されやすい
レジンコアは、患者さんの口の中で製作する土台です。ラボサイドでワックスアップから鋳造までを行うメタルコアよりも術者に高い技術や豊富な経験が求められます。経験の浅い歯科医師が行えば、土台の精度も自ずと下がってしまうのです。

デメリット4:ファイバーコアよりも審美性に劣る
レジンコアで用いる金属製のピンはとても小さいものですが、金属材料を一切使わないファイバーコアよりは審美性に劣ります。金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクもゼロではない点に注意が必要です。

ファイバーコア

ファイバーコア ファイバーコアには、下記のような特徴とメリット・デメリットがあります。

ファイバーコアの特徴

ファイバーコアとは、グラスファイバー製のピンを軸とした土台です。その周囲はコンポジットレジンで構成されているため、メタルコアよりはレジンコアに近い土台といえるでしょう。ファイバーには高い柔軟性が備わっていることから、歯の土台としてさまざまなメリットが期待できます。

ファイバーコアのメリット

メリット1:柔軟性が高いため、破折リスクが低い
ファイバーコアは、柔軟性が高いため、外からの圧力を柔軟に受け止めることができます。メタルコアだったら、噛んだ時の圧力をそのまま歯根へと伝えてしまうところをファイバーコアならしなることによって、受け流せるのです。その結果、ファイバーコア自体はもちろん、歯根破折のリスクも低く抑えられます

メリット2:強度や耐久性が高い
グラスファイバーは、経年的な劣化が起こりにくい材料です。強度も比較的高く、長く使い続けるのに適した材料といえるでしょう。メタルコアのように“硬すぎない”点も特長のひとつに挙げられます。

メリット3:金属イオンの溶出が起こらない
ファイバーコアでは、軸の部分も非金属の材料を用いることから、金属イオンが溶出するリスクがありません。金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクも自ずとゼロになります。土台の中では最も安全性の高い材料といえます。治療後のアレルギーの発症が怖いという人は、メタルフリー治療を実現できるファイバーコアを積極的に選びましょう。

メリット4:審美性に優れている
ファイバーコアは、審美治療において必須の土台となっています。金属材料を一切使用しないので目立ちにくく、セラミッククラウンの美しさを最大限、引き出せるからです。ファイバーコアは光を透過する性質があり、自然で透明感のある歯を再現しやすいことでしょう。その点においてセラミッククラウンとの相性が極めて高くなっています。

メリット5:歯を削る量が他の土台よりも少ない
ファイバーコアは、歯質を削る量が最も少ない土台です。かけがえのない歯質を多く残せることは、患者さんにとって大きなメリットとなることでしょう。

メリット6:再治療の際の撤去がしやすい
ファイバーコアも再治療の際に取り外す必要がありますが、メタルコアやレジンコアよりも撤去しやすいです。撤去する時に歯質を傷つけるリスクも少ないでしょう。

ファイバーコアのデメリット

デメリット1:保険が適用されないため治療費が高くなる
ファイバーコアによる治療は、原則として自費診療となります。そのためメタルコアやレジンコアよりも治療にかかる費用が高くなるので、経済性を最優先に考えている人には推奨できない土台といえます。

デメリット2:治療結果が術者の技術や経験に左右されやすい
ファイバーコアは、患者さんの口の中で築造する方法とラボサイドで製作する方法の2種類があります。前者の場合はレジンコアと同様、術者に高い技術や豊富な経験が求められます。後者の場合は、術者によって治療結果が大きく変わることはほとんどありません。

まとめ

まとめ このように、根管治療では終盤に土台を築造することになります。専門的にはコアと呼ばれるもので、被せ物の土台となるものなので、その重要性は極めて高いといえるでしょう。土台には、メタルコア、レジンコア、ファイバーコアの3種類があり、それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあることから、自分に合ったものを選択する必要があります。コアの種類によって予後も大きく変わってくるため、材料は慎重に選択することをおすすめします。いずれにせよコアの選択に迷ったら専門家である歯科医師に相談することが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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