保険診療と自由診療ともに治療が行える根管治療ですが、自由診療で根管治療を行う場合どのくらい費用がかかるのかご存じでしょうか。
自由診療は保険診療ではない治療法にて根管治療を行えるので、歯や精神的な部分などプラスになる面が多いのが特徴です。また、治療の成功率にも大きく関わってきます。
本記事では、根管治療の自由診療の費用をはじめ、保険診療との違いや成功率との関係を解説します。自由診療にて根管治療を検討している人や興味のある人など、ぜひ参考にしてください。
根管治療の保険診療と自由診療の費用
- 保険診療の場合の費用を教えてください。
- 保険診療の場合、検査〜被せ物の装着まで、合計4回通院すると6,000円程度が多いでしょう。歯の状態や治療する本数によってかかる費用も異なります。
どのくらい費用がかかるのか聞いたら教えてくれますので、気になる場合は確認してみてください。
- 自由診療の場合の費用を教えてください。
- 自由診療の場合、1歯あたり100,000円(税込)程度はかかります。治療本数によってはさらに高額になる場合もあります。
これまで高額なのは、高い技術力や経験が求められることや、高い成功率を目指す治療のためです。しかし、費用は歯科医院にて異なりますので、ホームページなどであらかじめ確認しておくとよいでしょう。
根管治療の保険診療と自由診療の違い
- 保険診療と自由診療では治療内容に違いがありますか?
- 保険診療であれ自由診療であれ、治療内容に違いはありません。
痛みの原因になる病巣を画像検査にて特定し歯を削り、ファイルと呼ばれるステンレス製の針のような器具で、細く狭い根管内の汚れ取り出しをきれいにします。きれいになったら、根管内に薬剤を入れて充填し最後は被せ物をして完了が根管治療の流れです。
ただ、根管治療を行うための設備や使用できる薬剤などが大きく違います。保険診療の場合、最低限の機能をもとに戻すことが目的ですので、細菌により傷んだ神経を取り除き根管内をきれいにすることが優先事項になります。そのため、限られた設備や薬剤などでしか治療ができません。
一方、自由診療は使える設備や薬剤などが限られていません。保険診療では使用するのが難しい歯科用CTやマイクロスコープ、ラバーダムにて、根管内の細菌を取り除きます。3種類の設備は根管治療の成功率にも関わる重要な設備です。
根管は細くて暗く狭く、歯によっては長いものや短いもの、曲がっているものなどさまざまあります。レントゲンだけで病巣を見つけ、歯を削り、見えない根管内を歯科医師の経験や感覚だけで汚れを取り除くのは難しいといえます。
そのため、立体的に根管の形を見れる歯科用CT・細くて狭く暗い根管内を拡大して見れるマイクロスコープ・細菌を含む唾液などの侵入を防ぐラバーダムが使えるのはよい治療が行える点で大きいでしょう。
- 保険診療のメリットとデメリットを教えてください。
- 保険診療のメリットは健康保険が使えるため、治療費を抑えられる・どこの歯科医院でも費用が変わらない点です。転勤や就職などで途中変わったとしても、以前通っていた歯科医院同様の費用で治療を続けられます。また、経済的負担の心配をする必要は少ないでしょう。
一方、保険診療のデメリットは治療できる範囲が決まっている点です。そのため、細菌がうまく取り除けず根管内に残り、再治療が必要になるケースもあります。
- 自由診療のメリットとデメリットを教えてください。
- 自由診療のメリットは治療の制限がないため、新しい治療法を取り入れて治療を行える・再治療になる確率が低くなる点です。自由診療は制限がないため、治療に対する設備や薬剤などにこだわることができます。再治療になる確率が低くなることと関係しますが、保険診療では行えないラバーダムを使用し治療を行います。
後程詳しく解説しますが、無菌状態に近い環境で治療を行うのとそうでない場合の再治療を必要とする確率が違うのです。また、細菌の増殖を防いでくれる薬剤や、細菌がすき間から入りにくいようにする精度の高い被せ物も使用できるなどもメリットといえます。
一方、自由診療のデメリットは治療にかかるすべての費用が全額負担になる点です。治療に対する設備や薬剤などを充実できる分、費用が高額になってしまうのはネックでしょう。
しかし、自由診療にて行った根管治療が100,000円を超えた場合は医療控除の対象となります。かかった分に対して控除されますので、トータルの費用は多少抑えられるでしょう。
- 保険診療と自由診療では通院回数が違いますか?
- 根管内の状態やむし歯の重症度により通院回数は異なりますが、保険診療と自由診療で極端に通院回数が違うことはありません。自由診療の方が正確に病巣を見つけ、よりしっかりした治療を目指せるため、保険診療より治療回数が少なくなる場合もあります。
検査〜被せ物の装着での通院回数で4回程度といわれています。ただ、あまりにも根管内が汚れていたり状態が悪かったりすれば、被せ物を装着するまでに数ヵ月時間を要す場合もあるでしょう。
根管治療の保険診療と自由診療の費用と成功率
- 保険診療と自費診療で成功率は変わりますか?
- 保険診療と自費診療で成功率は変わります。繰り返しになりますが、保険診療は歯科医師の経験や感覚といった手探りの状態で治療を行いますので、完全に根管内部に潜む細菌を取り除くことは不可能に近いといえます。
そのため、保険診療での根管治療の成功率は50%程度もしくはそれ以下です。保険診療で根管治療を行った2人に1人は再度根管治療を行っています。
その点、自由診療での根管治療は80〜90%と成功率が高いといえるでしょう。これ程の成功率の差が出たのは無菌処置を厳守したかどうかです。根管治療の成功率を上げるには、根管治療に対する専門的な知識の歯科医師による無菌状態での治療が欠かせません。無菌状態での治療に大きく関係するのが後程解説しますラバーダムと呼ばれるものです。
また、根管内の汚れを取り除き根管内に入れる薬剤もよいものを入れれば、成功率は高くなるでしょう。なるべく再処置がないようにするなら、自由診療にて根管治療を検討するのもよいでしょう。
- 保険診療と自由診療のマイクロスコープの違いを教えてください。
- 保険診療と自由診療でのマイクロスコープの違いは、治療できる範囲です。保険診療でのマイクロスコープを使用した根管治療の適用は2020年4月からで、適用される治療は現時点で歯根端切除術と大臼歯の根管治療のみとなります。
一方、自由診療はすべての根管治療に対し治療ができます。保険診療だと治療できる範囲が限られてしまう理由は、機材の費用と治療時間などです。マイクロスコープは細くて暗く狭い根管内を20倍まで拡大できる機材のため、とても費用が高額です。
また、治療時間も長くなる傾向にあります。保険診療は治療時間も決められているため、長時間の治療は保険診療では難しくなります。
そのため、保険診療でのマイクロスコープを使用した根管治療は限られているのです。根管治療にマイクロスコープを使用するメリットは、治療の向上・再発を繰り返さない・治療期間の短縮です。
根管治療は歯科医師・患者さんともに根気のいる治療となるので、マイクロスコープを使って治療できることはお互いにとってプラスになるでしょう。
- 自由診療のラバーダムとはなんですか?
- 根管治療で成功率を上げるために欠かせないラバーダムですが、ゴム製の薄いシートです。治療する歯のみ露出させ、ほかはすべてラバーダムで覆います。覆うことで細菌を含む唾液が治療している歯の内部に入るのを防いでくれるため、無菌に近い状態で治療を行えることが特徴です。
とはいえ、ラバーダムを使用して治療を行っても、100%細菌をなくすことは難しいといえます。しかし、なるべく無菌状態に近付けることはできるので、再治療となる確率はグンと減らせるでしょう。
ラバーダムは手間や費用の観点から保険診療から外されています。しかし、歯科医院によっては保険診療でも使用して治療を行っているところもあります。ホームページなどで検索してみるとよいでしょう。
編集部まとめ
保険診療の根管治療では治療費が抑えられる点はプラスですが、できることが限られてしまうためどうしても細菌をなくすことが難しく、残念ながら再治療になるケースもあります。
その点、自由診療による根管治療は費用が高額になるものの、保険診療ではできない方法で丁寧に治療ができる点は自身にとってプラスになるでしょう。
また、長い目でみたときに自由診療での根管治療は通院や治療での負担を減らし、自身の歯でおいしく食べ物を食べられる可能性があります。
少しでも長く大切な歯を残したいと思う人は、自由診療での根管治療を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献