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根管治療

根管治療とインプラントの違いとは?それぞれのメリット・デメリットやおすすめの人の特徴まで幅広く解説

根管治療とインプラントの違いとは?それぞれのメリット・デメリットやおすすめの人の特徴まで幅広く解説

根管治療とインプラントは、一見すると何ら関係のない歯科治療に思えます。なぜなら根管治療は歯を残すための治療であり、インプラントは失った歯を回復させるための治療だからです。けれども、この2つの治療で悩む場面というのは、臨床の現場でよくあるものです。ここではそんな根管治療とインプラントの違いについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較する形で解説します。それぞれどのような人におすすめであるかも説明します。

根管治療とインプラントの違い

根管治療とインプラントの違い はじめに、根管治療とインプラントの違いを明確にしておきましょう。それぞれの治療の特徴を知ることで、違いも自ずと見えてきます。

根管治療とは

根管治療とは、文字通り歯の根っこの中にある「根管」という空洞に対して、歯科的な処置を施す治療です。むし歯が進行して歯の神経まで感染が及んだり、外傷で歯髄が失活したりしたケースで必要となる処置で、冒頭でも述べた通り、天然歯が残っていることが前提となります。根管内が細菌に侵されると、自然に治ることはないため、根管治療を行う以外に歯を保存する術はなくなります。ですから、根管治療を行わない、あるいは根管治療をしても適切な効果が見られないと判断したケースでは、自ずと抜歯が選択されるのです。

インプラントとは

インプラントとは、失った歯を補う補綴治療の一種です。歯がなくなった部分にチタン製の人工歯根を埋め込んで、その上にアバットメントと呼ばれる土台を装着します。続いて、人工歯に相当する上部構造を装着すれば、失った歯の見た目はもちろんのこと、咀嚼機能まで忠実に再現することができるのです。従来は、失った歯の治療法として入れ歯やブリッジが適応されていましたが、人工歯根のあるインプラントの登場により、補綴治療に大きな変化が生じました。

根管治療とインプラント治療について

根管治療とインプラント治療について 次に、根管治療とインプラントを治療の流れと治療期間という観点で比較してみましょう。

根管治療の流れと治療期間

まずは、根管治療の流れと治療期間について解説します。

・根管治療の流れ
STEP1:カウンセリング・診断
まず初めに、者さんの痛みの原因を特定するために詳しい診断を行います。X線撮影を含む検査を通じて、根管治療が適切かどうかを判断します。治療の必要性、プロセス、期間、費用について詳しく説明し、患者さんの同意を得てから治療を開始します。

STEP2:局部麻酔と歯の防湿
患者さんが治療中の不快感が生じないよう、局部麻酔を施します。また、歯を清潔に保つためにラバーダム(ゴム製のシート)を使用し、治療する歯を隔離します。これにより、唾液による汚染を防ぎます。

STEP3:抜髄
歯冠部に小さな穴を開け、感染した歯髄を取り除きます。この過程は抜髄と呼ばれ、歯の痛みの原因となる感染源を除去することが目的です。

STEP4:根管の清掃と形成
歯髄が除去された後、根管内を特殊な器具を用いて丁寧に清掃し、感染物質を取り除きます。根管を適切な形に整え、根管充填材を受け入れやすくするために、内部を整えます。

STEP5:根管の消毒と一時的な充填
清掃後、根管内を消毒剤で洗浄して二次感染を防ぎます。その後、一時的な充填材を用いて根管を封鎖し、感染が再発しないようにします。この状態で一定期間を置き、症状の改善を確認します。

STEP6:根管充填
感染が完全に治まったことを確認した後、根管内を専用の充填材で恒久的に封鎖します。これにより、根管が再び感染するリスクを大幅に減少させます。

STEP7:土台の築造
根管治療を受けた歯は、しばしば脆弱になるため、被せ物を支えるための土台を築造します。これは、歯の強度と機能を回復させるために重要なステップです。

STEP8:被せ物の製作と装着
最後に、土台の上に製作したクラウン(被せ物)を装着します。これにより、歯の見た目と機能が完全に回復し、患者さんは再び自然な噛み合わせで食事や会話を楽しむことができます。

・根管治療に要する期間
根管治療は、前歯と奥歯とで要する期間に違いが見られます。根管の数が少なく、形態も比較的単純な前歯の根管治療は、2~3回の通院で根管内の清掃が終わり、根管充填へと進むことができます。根管の数が多く、形態も比較的複雑な奥歯の根管治療は、4~5回の通院で根管の清掃が終わり、根管充填へと移行するのが一般的です。ただし、これはあくまで目安の期間であり、ケースによってはより長い期間を要することも珍しくない点に注意が必要です。

インプラントの流れと治療期間

次にインプラントの流れと治療期間について解説します。
・インプラント治療の流れ

STEP1:初診・カウンセリング
インプラント治療を始める前に、患者さんの口腔内を詳しく検査し、健康状態やアレルギー歴などを詳細に確認します。患者さんのニーズや期待について話し合い、適切な治療計画を立案します。この段階で、治療の利点、リスク、費用についても透明に説明し、患者さんが納得した上で次のステップへ進めます。

STEP2:必要な事前治療
インプラント治療前には、口腔内の健康状態を最適化する必要があります。感染のリスクを避けるため、必要に応じて抜歯や歯周病の治療を行います。これにより、インプラントが成功する土台を整えます。

STEP3:インプラント埋入手術(1次手術)
局部麻酔を使用して、患者さんの顎骨にインプラント(人工歯根)を埋め込みます。この手術は比較的短時間で完了し、多くの場合、日帰りで行うことができます。手術後は、一定期間(通常は数ヶ月)骨とインプラントがしっかりと結合するのを待ちます。

STEP4:治癒期間
インプラントと顎骨がしっかりと結合するまでの間、定期的に診察を行い、治癒の進行を確認します。この期間は、患者さんにとって快適に過ごしていただけるよう、必要に応じて痛みや腫れを管理します。

STEP5:二次手術
骨とインプラントの結合が確認できた後、インプラントの上部にアバットメント(支台)を取り付ける小さな手術を行います。これにより、最終的な人工の歯を支える基盤が完成します。

STEP6:印象採得と人工歯の製作
アバットメントが装着したら、その上に固定する人工の歯を製作するための印象を採取します。この印象から、患者さんの噛み合わせに最適な人工歯が製作されます。

STEP7:人工歯の装着
製作した人工歯をアバットメントに装着します。このステップでは、見た目の自然さや噛み合わせの正確さを細かく調整し、患者さんが日常生活で快適に使用できるようにします。

STEP8:メンテナンス
治療後は定期的なフォローアップが必要です。インプラントや周囲の歯茎の健康状態を維持するために、適切なセルフケア指導とプロフェッショナルクリーニングを行います。これにより、インプラントの長期的な成功と患者さんの口腔健康が保たれます。

・インプラントの治療期間
インプラントには、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術を伴うため、全体で4~6ヵ月程度の期間を要するのが一般的です。下の顎は厚くてしっかりしていることから、比較的短い期間でインプラント治療を終えることが可能ですが、上の顎は顎の骨が薄かったり、高さが不十分であったりするため、やや長い期間を要します。骨造成を伴うケースでは、インプラント治療全体で1年程度かかることもあります。

根管治療のメリット・デメリット

根管治療のメリット・デメリット 根管治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

根管治療のメリット

根管治療のメリットには下記のようなものがあります。

・天然歯の保存
根管治療の最大のメリットは、感染したり損傷したりした歯を抜歯せずに保存できる点です。これにより、自分の歯をできるだけ長く保持し、その機能と美観を維持することが可能です。

・痛みの除去
感染した歯髄はしばしば激しい痛みを引き起こしますが、根管治療によって歯髄を除去し、根管を清潔にすることで、これらの痛みから解放されます。治療後は、患者さんが以前のように快適な日常生活を送ることができるようになります。

・感染の拡大防止
根管治療によって歯内の感染源を除去し、さらなる感染拡大を防ぐことができます。これにより、周囲の歯や顎の骨が感染による損傷を受けるリスクを低減でき、全体的な口腔健康を守ることができます。

・噛み合わせと咀嚼機能の改善
歯を失うと噛み合わせが悪くなり、咀嚼機能に影響を及ぼすことがあります。根管治療により歯を保存することで、自然な噛み合わせを保ち、効果的に食事を楽しむことができます。

・費用が安い
根管治療は、抜歯後のインプラントと比較して、初期費用が比較的安価です。特に長期的に見た場合、自分の歯を保存することで、将来的に必要となる補綴治療やメンテナンスのコストを節約することが可能になります。根管治療によって歯を維持することは、経済的にも利益がある選択と言えるでしょう。

・治療期間が比較的短い
根管治療には、インプラント治療と比較した場合に限り、治療期間が短くなるというメリットが得られます。難症例でない限り、根管治療が半年以上かかることはありません。

根管治療のデメリット

続いて、根管治療のデメリットについて説明します。

・治療に手間がかかる
根管治療は複数の診療日にわたって行われることが多く、一時的な充填や消毒を含めると、完了までにかなりの手間と時間がかかります。

・治療後の不快感
根管治療後、一時的に歯が敏感になったり、軽度の痛みや違和感が生じたりすることがあります。これは通常、数日から数週間で自然に解消されます。

・再感染のリスク
日本の保険診療における根管治療は、成功率が40%程度にとどまるといわれています。根管内の微細な隙間に残った細菌が原因で、治療後に再感染する可能性があり、これが再治療の必要性につながることがあります。

・歯が脆くなる
根管治療を行った歯は歯髄を失っているため、時間が経つにつれて脆くなることがあります。これにより、歯が折れやすくなるリスクが高まり、場合によってはさらなる補綴治療が必要になることがあります。

インプラントのメリット・デメリット

インプラントのメリット・デメリット インプラント治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

インプラントのメリット

インプラントのメリットには下記のようなものがあります。

・自然な見た目と噛み心地
インプラントは天然歯の見た目と噛み心地を再現しやすい治療法です。

・装置の寿命が長い
インプラントは耐久性が高く、適切なケアとメンテナンスを行うことで、10年以上使い続けることも難しくありません。

・隣接する歯を守れる
インプラントは独立して機能するため、他の歯に負担をかけることなく、失われた歯の機能を回復できます。

・顎骨の健康を維持しやすい
インプラントは顎骨に直接取り付けられ、自然な歯根のように機能します。これにより、歯を失った後に起こりがちな顎骨の吸収を防ぎます。インプラントを介して顎骨を刺激し続けることで、顎の健康と構造を維持するのに役立ちます。

インプラントのデメリット

続いて、インプラントのデメリットについて説明します。

・治療費が高い
インプラント治療は技術的に複雑で、高品質の材料を使用するため、他の歯科治療に比べて費用が高くなります。

・手術によるリスク
インプラントは外科手術を必要とし、それには感染、出血、神経損傷などのリスクが伴います。

・治療期間が長い
インプラントの手術から最終的な被せ物の装着までには、数ヶ月におよぶ治療期間を要することが多いです。

・適応できないケースもある
インプラント治療は、十分な顎骨の量と質を必要とします。骨量が不足している場合は骨移植が必要になることがあり、治療がより複雑かつ高額になる可能性があります。また、一部の全身疾患を持つ患者さんや喫煙者は、インプラントの成功率が低下するリスクが高まります。

根管治療とインプラントどちらを選ぶべきか

根管治療とインプラントどちらを選ぶべきか ここまでの解説で、根管治療とインプラントの違いについては理解できたかと思います。最後に、それぞれの治療法がどんな人に向いているのかを説明します。

根管治療がおすすめの人の特徴

歯を残せる可能性がある人は、原則としてインプラントではなく根管治療を選択した方が良いといえます。また、数ヵ月に及ぶ治療期間は許容できない、保険診療内で治療を受けたい、外科手術は避けたい、という人も基本的には根管治療が推奨されます。

インプラントがおすすめの人の特徴

根管治療では失敗する可能性が高い、ボロボロになった歯を抜いてきれいな人工歯に交換したい、根管治療で痛い思いをしたくないという人には、インプラントがおすすめといえます。

編集部まとめ

編集部まとめ 今回は、根管治療とインプラントの違いについて解説しました。根管治療は、むし歯や外傷によって歯の神経が死んだり、感染したりした際に必要となる処置で、歯を残す事が主な目的です。インプラントは、失った歯を歯根から回復させるための治療で、補綴治療に分類されます。それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあることから、どちらか迷っている場合は歯科医師に相談するようにしましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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