根管治療が終わったのにまだ歯が痛いような違和感がありませんか。違和感程度の鈍痛や激しい痛みなどさまざまな症状に悩まされている方も少なくないのではないでしょうか。
なお、根管治療後の痛みの症状をフレアーアップといいます。
むし歯の痛みから解放されたいと根管治療を行ったのに、治療が済んだと思ったらまだ痛みが残るとは思いもよらないことですが、フレアーアップは誰にでも起こることです。
また、フレアーアップは痛みと同時に歯茎が腫れたり出血したりの症状がある場合もありますが、この症状はいったいなぜ起こるのでしょう。
今回は、根管治療後に起こるフレアーアップの痛みや腫れの原因・フレアーアップが起きた場合の対処法などを解説します。
フレアーアップで悩んでいるのなら本記事が参考になれば幸いです。
根管治療で起こるフレアーアップとは?
- フレアーアップとは何ですか?
- 根管治療後に歯根の周囲が痛んだり腫れたりする可能性がありますが、その状態がフレアーアップです。フレアーアップは根管治療の術後48~72時間で痛みが出始めますが1週間程で痛みは徐々に引いていきます。また、痛みは根管治療の刺激が原因と考えられます。
ただし、痛みが激しい場合やいつまでも痛みが続き鎮痛剤も効かないようなら、ほかの原因が隠れている場合もあるので担当の医師に診てもらいましょう。
- フレアーアップはどのくらいの確率で起こりますか?
- フレアーアップを発症する確率は10%程で、治療を受けた10人に1人は激しい痛みが伴うフレアーアップを経験するでしょう。なお、術前から痛みがあった患者さんは術後に痛みが長く続くことがあります。
さらに痛みが長期化して慢性疼痛になることがありますが、痛みが慢性化すると不眠症や不安など精神面での負担が大きくなってしまいます。担当の医師で改善がみられない場合はセカンドオピニオンを紹介してもらうことも1つの解決策です。
- フレアーアップの症状が出たら治療は失敗なのでしょうか?
- フレアーアップの症状が出ても一概に失敗とはいい切れません。フレアーアップの症状が出る原因はさまざまで治療時の刺激で痛みが残存している場合は、数日で痛みが消えていきます。痛みは歯根に付いた傷が原因で起こるもので噛むと痛いなどの症状です。
ほかには、根管に充填した殺菌薬の影響が考えられます。細菌が死滅していくときに痛みが出ることがあるのです。殺菌薬が原因の痛みは一時的な痛みにとどまりますが、フレアーアップの痛みには長期化するものもあります。長期化する痛みは根管治療の不備が原因のため失敗と考えられます。
その場合の痛みは、再根管治療で破壊された歯髄をすべて取り除くことや炎症箇所の治療で痛みはなくなるでしょう。再根管治療は初回よりもさらに技術が必要になるので、根管治療経験が豊富な専門の歯科医師が在籍する歯科医院の受診をおすすめします。
フレアーアップの痛みや腫れが出る原因
- 根管治療後にフレアーアップの痛みが出る原因やメカニズムを教えてください。
- 根管治療後にフレアーアップが出る原因は以下のものが考えられます。
- 歯髄の残存
- 根管治療時の細菌混入
- 被せ物が不適合のため細菌が侵入した
- 根管充填剤の圧や漏れ
- 亀裂や破折
- 歯根周辺の炎症
- 不正咬合
- 治療器具による刺激
治療時の機材による刺激が原因で歯根周辺の細菌が活発化して、治療前は痛みが無かったのに治療後に痛みが出る場合があります。また、上記のような症状はほとんどが再根管治療を行うことになります。再根管治療で完治するのが難しい場合は抜歯になる可能性があるでしょう。
- 治療による痛みとは別のものですか?
- 歯根の痛みは、むし歯が歯根の奥深くまで進み神経に炎症をもたらす痛みと、神経を抜いた後の歯根に生じる痛みです。前者のむし歯の進行による痛みは感染が原因の痛みで、ズキズキして熱いもので痛みが増幅する症状が出ます。
また、神経の炎症による痛みは痛み止めが効かない場合があります。一方、治療後に生じる痛みは歯根の先の炎症が原因の場合が多いですが、食べ物などを噛むときに痛みが出ることがほとんどです。ただし、急性炎症では顎骨の腫れや熱などの症状が痛みとともに出る場合があります。- 噛むときに生じる鋭い痛み
- 何もしていないのにズキズキする
- 脈打つ痛み
- 寝られない痛み
- 痛み止めが効かない
- 冷たいものを摂取すると5分以上刺激がある
上記の症状は歯根の先に炎症がある場合の症状です。上記のような症状がある場合は担当の医師に相談しましょう。
- 生活に支障が出る程強い痛みが出るケースもあるのでしょうか?
- 根管治療後の痛みが慢性化すると生活に支障が出ることがあります。慢性化した痛みには以下のものがあります。
- 打診痛(軽く歯をたたいても痛い)
- 灼熱感(肌が熱くなりひりひりする痛み)
- 自発痛(何もしなくてもズキズキ痛む)
- 歯肉接触刺激痛
- 温熱刺激痛
- 夜間痛
- 咬合痛
上記のような難治性疼痛が慢性化すると睡眠障害や不安・恐怖などの身体的および心理的な障害が起きます。なお、難治性疼痛は初回根管治療時で破壊した歯髄を取り切れなかったことが原因と考えられるため、残存した歯髄をすべて取る再根管治療で痛みが軽減します。
- 痛みだけではなく腫れが出るケースもあると聞いたのですが…。
- 根管治療後の痛みは歯根の炎症が主な原因であるため、痛みとともに腫れるなどの症状が出ることがあります。根管治療中に患部で食べ物を噛んだときに痛みが生じて腫れが起きることもあります。腫れは歯根が不安定だったなどの理由で起こるものです。
一方、治療後の腫れは、歯根の先に細菌が入り込み根尖性歯周炎を発症している場合があります。根尖性歯周炎の症状は以下のものがあります。- 噛んだときに痛みがある
- 歯茎から膿が出る
- ときどき激痛が走る
膿が歯茎に溜まっている場合は、膿を出す治療が必要になります。
フレアーアップの症状が出た場合の受診や対処法
- フレアーアップの症状が出たら必ず歯科医院を受診する必要がありますか?
- フレアーアップの症状によって歯科医院を受診する必要があります。噛んだときだけフレアーアップの症状が出る場合は、1週間程で症状が消えていくので様子をみるとよいでしょう。また、痛みが強くても痛み止めで症状が治まるようならあまり心配はいらないと考えられます。
ただし、痛み止めが効かない場合や腫れや出血を伴う症状は注意が必要です。前述でも解説した難治性疼痛は慢性化すると処置が難しくなります。症状が重複している場合や痛みが長く続く場合は担当の歯科医師に相談しましょう。
- 自分でできるフレアーアップの対処法を教えてください。
- 根管治療後の歯根の痛みは我慢できる程度の痛みと連続して痛みが起こる場合があります。歯科受診をするべきかどうか迷うところです。この項ではフレアーアップが起きたときの自宅でできる対処法を紹介します。
- 熱い物を避ける
- 患部を冷やす(冷水を口に含む・間接的に氷嚢などで冷やす)
- 痛み止めを服用する(ロキソニンなど)
- 口腔内の洗浄(歯磨き・うがいなど)
上記の対処法は応急処置です。痛みが治まらない場合や長期間続く場合は原因がほかにある場合もあるので担当の歯科医師に相談しましょう。また、痛いからといって患部をむやみに触ると細菌が侵入してさらに痛くなる場合があります。患部は触らないようにしましょう。
- フレアーアップを予防する方法はあるのですか?
- フレアーアップを予防する方法は根管治療中から実行する必要があります。なお、予防方法は以下になります。
- 患部で噛まない
- 刺激物の摂取を控える
- 飲酒を控える
- 喫煙を控える
- 熱い物を避ける
- 熱いお風呂や長湯をしない
フレアーアップの予防をしても100%痛みが起きない保証はありません。むし歯が深く治療前から歯肉に炎症がみられる場合や激しい痛みがあった場合は、治療後も痛みが継続する場合があります。
また、痛みが取れたからと治療を中断する行為もよくありません。根管治療は歯の内部の治療のため器具の接触痛が出る場合もありますが、大抵数日で痛みはなくなっていきます。
編集部まとめ
根管治療後はフレアーアップが起きる可能性があります。フレアーアップの定義は治療直後に救急処置が必要なケースです。
また、治療中の過度な緊張で顎骨に力が入るとフレアーアップが起こることがあります。
歯の治療で緊張しないのは難しいかもしれませんが、お医者さんに任せてなるべくリラックスして治療を受けましょう。
なお、フレアーアップの起きる確率は10%程ですが激しい痛みを伴う場合もあります。だからといってむし歯を放置するのは、やがては全身に影響する疾患につながる場合があります。
今回はフレアーアップの原因や対処法を解説しました。根管治療は難しい治療法で専門の知識や技術が必要になるケースも少なくありません。
根管治療を専門にしている歯科医院は、根管治療の成功率が高くなりフレアーアップが起きる確率も低くなります。
むし歯の範囲が大きい場合は根管治療の専門の歯科医師に相談しましょう。
参考文献