根管治療をしているにも関わらず、「歯茎がチクチクと痛い……」といった経験をした人もいるでしょう。
痛みがある=治療が不十分と決めつけそうになりますが、治療をしたから歯茎に痛みが出てくることもあります。なぜ痛みが出てくるのでしょうか。
本記事では、根管治療で歯茎が痛い原因を解説します。併せて痛みが出たときの対処法や注意点、受診の目安も解説しますので、不安を抱えている人の参考になれば幸いです。
根管治療で歯茎が痛い原因
- 根管治療で歯茎が痛くなる原因を教えてください。
- 根管治療とは、歯髄といわれる歯の神経や血管が細菌により炎症や感染を起こしたとき、傷んだ神経を取り除ききれいにする治療です。根管内は狭く細いので、根管内をきれいにするにはリーマーと呼ばれるステンレス製の針のような器具を使用します。その器具が歯の根元の神経に当たることで痛みが発生することがあります。歯の根元にはほかの神経が無数に通っているため、たとえ歯の神経を取っても痛みが出てしまうのです。また、治療をすると、根管内にいた細菌が一時的に体のなかに入っていきます。この細菌に対し排除しようと免疫反応を起こしますが、その際、痛みが発生します。これも根管治療で歯茎が痛くなる原因の一つです。治療を続ければ痛みはなくなっていきますが、痛みがあるから治療を続けても意味がないと自身で勝手に決め、治療を放棄することはやめましょう。放置すれば、細菌が根元の周りの組織に炎症を起こし歯茎が腫れたり熱が出たりなど、全身にも影響を与える可能性もあります。また、歯を残せる状態でなくなり失う場合もあります。
- 根管治療で歯茎が腫れて痛みがあるのは大丈夫ですか?
- 根管治療による細菌への免疫反応にて歯茎が腫れ、痛みが生じることはあります。軽度な症状であれば3〜4割程度の確率で現れることもあります。歯茎が腫れて痛みがある=悪いことが起きているわけではないので、そこまで不安になる必要はありません。通常であれば、1週間程度で自然と腫れや痛みは治まっていきます。しかし、稀に激しい痛みを伴う症状が現れる場合があります。その症状をフレアーアップといい、症状が現れる確率は数%です。フレアーアップが起こる原因は以下のとおりです。
- 根管内の汚れを取り除くリーマーによる刺激
- 根管内を洗浄する薬剤による刺激
- 根管治療により体内に入り込んだ細菌による刺激
フレアーアップが起きてしまった場合は処置が必要になりますので、速やかに歯科医院で受診してください。治療中に痛みが出ると、この治療では治らないと考えてしまう人もいるかもしれません。悪いものを排除しようとする生理的な反応です。根管治療の成功率とは関係ありませんので、治るまで適切な治療を続けてください。
- 根管治療で歯茎が痛いときに考えられる病気はありますか?
- 根管治療しているにも関わらず歯茎が痛いときに考えられる病気は、根尖性歯周炎が考えられるでしょう。根管内にいた細菌の感染により病巣が拡大し、歯の根元の先端部分に炎症が起き膿が溜まります。根元の周りの骨は溶け、激しい痛みとともに歯肉が腫れます。さらに症状が進行すると、膿が歯肉から出てくることもあるのです。
根管治療で歯茎が痛い場合の対処法
- 根管治療で歯茎が痛い場合の対処法を教えてください。
- 根管治療で歯茎が痛い場合は、どのようなことで歯茎が痛いのかで対処法が異なります。免疫反応による痛みの場合は、痛み止めで対応することも少なくないでしょう。激しい痛みを伴うフレアーアップの場合は根管内の洗浄や抗生物質・痛み止めなどで対応し、歯茎の痛みを和らげていきます。痛みがあるから冷やそうとする人もいるかもしれません。冷やすことにより血流を阻害し、免疫反応を悪くする可能性があるため、自身で判断して冷やすのはやめた方が無難です。腫れているところを冷やしてよいか判断に迷う場合は、一度歯科医院へ電話するなどするとよいでしょう。
- 根管治療で歯茎が痛いときに市販の痛み止めを飲んでも大丈夫ですか?
- 市販の痛み止めを飲まれても構いません。痛み止めについては、病院で処方された痛み止め薬・市販の痛み止めの指定はないので、常備している薬を飲んでいただければ大丈夫です。もし不安を覚えるようでしたら、一度歯科医師に薬を確認してもらうとよいでしょう。
- 歯茎の痛みがある場合に受診するべき目安を教えてください。
- 根管治療は歯の神経を取り除く処置を行う場合、麻酔を使うため治療中は痛みを感じることは少ないですが、麻酔が切れた後に痛みが出てきやすいでしょう。治療後に現れる痛みは治療による細菌への免疫反応によって生じた痛みですので、自然と痛みも治まっていきます。しかし、治療をしているにも関わらず、日に日に痛みが増す・1週間経ってもまったく痛みが引かない場合などは歯茎に別の問題が発生している可能性があります。その場合は速やかに歯科医院で受診し、適切な処置をしてもらいましょう。
根管治療で歯茎が痛い場合の注意点
- 食事や生活習慣で注意した方がよいことはありますか?
- 食事をする際、硬い食べ物は極力避けてください。治療中の歯で食べてしまうと痛みを助長するだけでなく、歯自体が割れてしまう可能性があります。根管治療を必要とする歯の多くは残っている歯の量が少ないうえ、歯の中を守ったり食べ物を噛み砕いたりできる被せ物が装着されていないからです。歯が割れてしまえば、歯を抜く可能性もあるので、避けるためにも硬い食べ物は食べるのはやめましょう。治療中の歯への負担を軽減するためにも、痛みがある場合はやわらかい食べ物を中心に選んでみてください。また、痛みを助長しやすい香辛料の入っている食べ物や熱すぎる食べ物なども控えた方がよいでしょう。なるべく治療している歯がある方で噛むのは避けてほしいですが、意識しなければ難しいため現実的ではありません。食べ物のカスが治療中の歯のすき間などに入らないよう、食事の後はやさしく歯磨きをしたりうがいをしたりするとよいでしょう。また、痛みがある間は痛みの影響によりQOLも低くなりがちになるでしょう。痛み止めを飲んで一時的に痛みを抑え無理をしても、薬の効果が切れれば無理した分、痛みが強く出てしまう場合も考えられます。痛みがあるときはあまり無理はせず、早めに寝るなど休息時間をいつも以上に多めに取ることをおすすめします。飲酒や喫煙の習慣がある人も歯茎が痛い間は控えましょう。お酒に含まれるアルコールは血流をよくする作用があるので、より痛みを強くさせる可能性があります。喫煙に関しては根尖病変および根管治療の有病率の高さの研究がされています。この研究によると、15件中10件がタバコと根尖病変および根管治療の有病率の高さとの関連性があると報告されているのです。根管治療に関わらず、喫煙は全身によい影響を与えることはほとんどないといえるので、これを機に禁煙することを検討してみてはいかがでしょうか。
- 歯茎が痛いときの入浴や運動で気をつけることはありますか?
- 血行がよくなる行動は控えた方がよいでしょう。血行がよくなる入浴や運動には気をつけてください。歯茎が痛いときはお風呂に浸かるのではなく、シャワーで済ませましょう。また、血行のよくなる激しい運動は痛みが治まるまでは控えてください。痛いと感じるのは炎症が起きているからです。血行がよくなれば、それが刺激となりさらに痛みを助長させてしまいます。痛みが治まるまでは安静に過ごすようにしましょう。
編集部まとめ
根管治療にも関わらず歯茎が痛くなる原因は、器具が歯の根元にある神経を刺激し痛みが出たり、細菌が一時的に入り込むことによる免疫反応にて起こる痛みです。
治療途中で起こる症状の一つであり、決して治療がうまくできていないからというわけではありませんので、治るまで治療を継続しましょう。
自身の判断で途中で治療をやめれば、状態によっては歯を失う可能性があります。
しかし、痛みが1週間以上も続く場合はほかの病気の可能性もあるので、早めに歯科医院で受診しましょう。
根管治療は大切な歯を温存できる歯科治療の一つですので、しっかり治療をし、歯を少しでも長く残せるようにしてください。
参考文献
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